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第18話「冷たい力 熱い感情」【Hパート 少女たちの凱旋】

 【9】


「ふぁ……あっ!」

「やっと起きたわね、結衣」


 帰り道の〈エルフィスニルファ〉のコックピット内。

 眠っていた結衣が目を覚まし、魔法少女姿のまま辺りを見回す。


「ここは……」

「ウィルの機体のコックピットよ。ちょっと狭いけど我慢しなさい」


「狭いって言いますけれどもぉぉぉ……!」


 パイロットシートを挟んで反対側の空間。

 一人でも狭い空間に三人詰め込まれたぎゅうぎゅう詰めの中から、リンが抗議の声を上げた。


「このままあと何分いればいいんですのぉぉ!」

「さすがに狭い……狭すぎる」

「お姉さまぁぁぁ痛いですぅぅぅ!」

「ちょっと、どこ触っていますの!?」

「私じゃないですよぉぉぉ!」

「しかもうるさい……」


 阿鼻叫喚のホノカ達を見て、思わずププっと笑ってしまう華世と結衣。

 そんな中、ももの服のポケットからミュウが飛び出し、結衣の目の前で静止した。


「あ、戦いについてきたくせに何もしなかった役立たず」

「ひどいミュよ、華世! えっと、変身解除の呪文……わかるミュか?」

「うん! ドリーム・エンド!」


 魔法の言葉を唱え、元の姿に戻る結衣。

 その手には、短く小さくなったステッキが赤い宝石を輝かせながら握られている。


「さすがミュね~! どうなるかと思ったけど、強い味方がまた増えたミュ!」

「強い味方ねぇ……」


 華世は依然として続く激しい頭痛に頭を押さえながら、結衣の戦いを思い出す。

 炎の魔法をパッケージングしたミサイルを放ち、斧状のステッキで相手を殴り飛ばす。

 白い羽根による飛行といい、結衣は最初から全力全開だった。

 それまでの操られた状態での戦いが、無かったように。


「ミュウ。どうして結衣は翼が壊れるほど魔力を失ってたはずなのに、変身してすぐに戦えたのかしら?」

「ミュ! それは華世がキスをしたからだミュ!」

「キスぅ!?」


 操縦レバーを握りながら、うろたえ始めるウィル。

 自分でもまだなのに……といった羨む視線が、ウィルから横目で華世に注がれる。


「いざというときは口を通して、魔法少女どうしで魔力が贈りあえるんだミュ!」

「なによその、特定の層に刺さりそうなシステムは……」

「じゃ、じゃあ……また私がピンチになったら華世ちゃんにまたチュってしてもらえ……!」

「それは……たぶん無理だミュね」

「どうして?」

「華世は魔力が膨大すぎるんだミュ。さっきみたいに、倒れかけくらいの状態だったらちょうどいいんだミュけど……」

「普通の時にそんなことをすれば、大きすぎて破裂しちゃうとか?」

「そうだミュね。だから、これっきりだと思うんだミュ」


 ミュウの説明にホッとするような顔をして、正面に視線を戻すウィル。

 一方向かい側のホノカ達が、まさか自分たちがと言った感じに顔を歪ませていた。


「あっ、誰でもいいというわけじゃなくて……愛の心が通じ合ってなきゃいけないんだミュ」

「そっか。じゃあ安心かな……」

「お姉さまとだったら、私はやってみたいかなぁ~」

「ふざけたこと言わないの、もも。あたしの唇は安くないのよ」

「あははっ! でも良かった~」


 華世の隣で、笑いながら胸をなでおろす結衣。

 彼女の言葉の意味がわからず首を傾げていると、結衣が笑顔で説明をした。


「私の華世ちゃんへの想いは、たぶん今だけな気がするから。それに華世ちゃんとウィルくんのカップルって、私の推しだもん!」

「推しって……」

「ねえ、聞いた華世! 俺たちカップルって!」

「あんたはまだ魅力が足りてないわよ。好感度もっと稼ぎなさい」

「ひどい~……」


 泣きそうな顔でペダルを踏むウィル。

 その横顔を見てから、結衣の方へと視線を戻す。


「でも……嬉しかった。華世ちゃんが、助けに来てくれて」

「あたしは、あんたに助けられたからね……それに」

「それに?」

「親友でしょ、あたしたち。助け合うくらい、当たり前よ」


 華世の言葉にすこし驚いたような表情をして、固まる結衣。

 数秒してから、その顔が満面の笑顔へと変わって、大きく頷いた。


「うんっ! 私達は親友! ずっと、ずぅ~っと……親友でいようね、華世ちゃん!」


 太陽のような明るい笑みの向こうで、ディスプレイ越しの空が優しく青い光を放っていた。



──────────────────────────────────────


登場戦士・マシン紹介No.18


【マジカル・カヨ 第三形態】

身長:1.56メートル

体重:86キログラム


 右目を失った華世が、最新型の軍用義眼を身に付けた姿。

 華世の本来の瞳は青色であるが、華世が望んだ型の同色義眼がすぐに手に入らなかったため、在庫のあった赤い瞳の義眼を入れることになった。

 そのためオッドアイになっており、義眼である右目が赤、肉眼の左目が青色の組み合わせとなっている。


 軍用義眼は脳神経だけでなく義手・義足ともリンクしている。

 そのため義手および握った銃器と連携し、精密狙撃を可能にするほどの照準補佐機能を使うことが可能。

 また、視界補強の機能としてズーム・サーモグラフィー・赤外線暗視・光量増幅暗視・視覚録画・ネットワークアクセス・生体センサー・動体探知機能などがプログラムのインストールによって追加可能。

 これらの機能は脳内に使いたいシステムを思い浮かべながら、こめかみを数回指で叩くと切り替えられる。


 動力は生体電流を蓄電するバッテリー経由で賄っており、これらは最新技術の塊で超小型ながらもかなりの高効率となっている。

 また、低出力ながらレーザー照射機能もあるため細い鎖や鉄柵程度なら長時間の照射で焼き切ることも可能。

 長時間の照射が必要という点でこの機能は戦闘ではせいぜい目くらましにしか使えないのが難点。


 義眼の機能のひとつとして脳内に直接映像を送信することでのインターネットを介した動画の視聴、映像データを壁に映し出すプロジェクター機能が存在している。

 これは長時間の任務で義眼を使用する兵士とその仲間が娯楽に困らないためにつけられた機能であり、人間動画再生機として装備者はチヤホヤされる。



【マジカル・ユイ】

身長:1.48メートル

体重:39キログラム

挿絵(By みてみん)


 結衣が自らの意思で魔法少女へと変身した姿。

 手に持つステッキの先端が大きく肥大化し、ミサイル射出口を側面に備えた両刃の斧のような形状をしている。


 魔法の能力として発現したのは「炎」。

 ステッキ内で生成した魔法の火炎をパッケージングし、ミサイルとして発射することができる。

 火炎放射のように炎を噴射しないのは、あくまでも広範囲に被害を広げず、敵だけを倒したいという結衣の想いから。

 ステッキは鈍器としての運用も可能であり、回転しながら溜まった勢いで相手を殴り飛ばす「マジカル・ホームラン」を初変身にして編み出した。


 とはいえ、初陣の活躍は華世からうけとった魔力頼みであり、独力での魔法力はこれからの成長しだいとなっている。

 しかし、高い魔法適性がないと発現できない「天使の翼」を使うことができるため、将来は極めて有望と言える。




 【次回予告】


 レッド・ジャケット率いるヴィーナス・オリジニティ、通称V.O.(ブイオー)軍の蜂起によって混沌とする金星圏。

 一族が統治するコロニー・クーロンを守りたい一心で、リン・クーロンは一つの決断をする。

 それは、金星中を股にかけた大冒険の始まりでもあった。


 次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第19話「決意と旅立ち」


 ────無垢な想いは、神をも動かす。

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― 新着の感想 ―
百合展開激熱でしたが、それを結衣ちゃんが自称『一時的なもの』と表現しているのが熱かったです。 でも、なんだか華世とウィルの関係を邪魔したくないための強がりにも思えてすごくいいです。 次回予告的にリンち…
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