第17話「埋め込まれた悪意」【Hパート 三度目の喪失】
【8】
「まどっち、華世はどうなったんや!?」
手術中の文字が消灯した扉から出てきたドクター・マッドへ、内宮は詰め寄った。
あの時……帰り道の途中で百年祭の会場へ立ち寄った瞬間、空で爆発が起こった。
その爆炎の中からこぼれ落ちた影、その姿は魔法少女姿の華世。
まるで爆弾が爆発した後のような壮絶な状況の展望台で倒れていた華世を、内宮が救急車を呼んで病院に担ぎ入れたのが一時間前。
ホノカとミイナが心配そうに後ろに立つなか、ドクター・マッドは重々しく口を開いた。
「先に言うと、命に別条はない。しかし……」
「はぁー……よかったぁ……しかし?」
「しかしだ。直撃を受けたのか顔の右半分が大きく焼けただれている」
「焼け……大丈夫なんか!?」
「髪や肌は再生医療できれいに戻すことはできる。しかし、戻せないものがひとつだけある……眼球だ」
ドクターはゆっくりと綴った。
華世の身に起きたことを。
「恐らく至近距離で高熱のエネルギーを受けたのだろう。とっさに回避しようとしたのか、当たったのが顔の右側だけだったのが不幸中の幸いだったが……」
「まさか、目が……」
「ああ。華世の右目は熱傷により眼球が変容……完全に失明した」
内宮の目の前が真っ白になる。
華世の可愛らしい顔で輝いていた、サファイアのような青い瞳。
そのひとつが……光を失った。
「そんな……華世。右腕、左脚に続いて右目まで……なんであの子ばかり、こんな目に遭うんや……!!」
「私が言えるのはここまでだ。あとは……本人次第だな」
「本人次第て……?」
「手術の最中、ずっと華世は結衣という名を呟き続けていた。おそらくはあの場にいた友人なのだろうが、姿はない。恐らく何者かの手に落ちたと見て間違いないだろう」
「結衣……あんないい子まで」
「私もお前も華世の性格は知っているだろう。たとえどれだけ身体を喪ったとしても、必ず立ち上がる。そして……」
「目的を、果たすっちゅうことか」
「ああ」
その言葉を最後に、ドクターはその場を立ち去った。
これ以上ここにいても、華世と顔を合わせられるわけではない。
わかっていても、しばらく内宮はその場から動けなかった。
保護者としての責任が果たせない情けなさを呪って。
肝心な時に何もできなかった無力さに呆れて。
そして再び立ち上がるであろう、華世の強い心を信じて……。
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登場戦士・マシン紹介No.17
【マジカル・ユイ(支配下状態)】
身長:1.5メートル
体重:40キログラム
ツクモロズの手によって強制的に魔法少女化させられた結衣。
血管を伝って体内を巡るナノマシンがツクモロズ化した結果、脳を含め全身がツクモロズに支配されている。
発現した炎の魔法能力を使ってステッキから火球を放つ攻撃を行う。
杏同様に高い魔法適性を持ち、輝く翼で飛行する「天使の翼」が発動している。
しかしツクモロズに身体が支配されている影響か、その光は黒ずみ堕天使の翼のようになっている。
【次回予告】
ツクモロズの手に堕ちた結衣に敗れ、敗北の代償として右目を失った華世。
けれどもその内に秘めた闘志は折れず、戦いへの強い意欲を示す。
自分を友達と呼んでくれる存在を助ける……その目的の為に。
次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第18話「冷たい力 熱い感情」
────引き裂かれた絆は、また繋ぎ止めればいい。




