第12話「結成! 魔法少女隊 後編」【Iパート 団らんの笑顔】
【9】
「セキバク、お前が仕損じるとは。よっぽど手強いようだな、力を結集した奴らは」
ザナミ不在のツクモロズ拠点・玉座の間。
外套を失い金属質の身体をむき出しにして帰ってきたセキバクを見て、黒いマントに身を包んだアッシュが鼻で笑う。
「……今宵の戦いで得たものは多い。損失も最小限ゆえに恐るることはない」
「その言葉が強がりじゃないことを願うよ」
そう言って立ち去るアッシュ。
仲間内でも最も素性の知れぬ幹部にして、鉤爪の女・華世の周辺を観察する偵察員。
その底知れぬオーラに、セキバクはひとつ鼻を鳴らした。
※ ※ ※
「ツクモロズが運用してたキャリーフレームの出どころがわからなかった?」
ミイナ救出戦から一夜明け、またやってきた夜。
点検を終えて無事が確認されたミイナの帰還祝いの席で、華世は内宮から聞いた話に耳を疑った。
「キャリーフレームはその運用性質上、とくに軍用に関しては細かく管理する規則があるはずよね?」
「せや。これまでは現場近くの持ち主がおる機体が暴走させられとったわけやけども、今回のあの〈ビーライン〉は残骸から使用記録が全く出なかったんや」
「ってことは……あれはまっさらな新品? ツクモロズが購入したとは思えないし……」
「そこに関しては今後、アーミィの方で製造会社と合同で調べを進めるようや。けどな……」
「もう! せっかくのミイナお姉ちゃんおかえりパーティなんだから、華世お姉さまも千秋お姉ちゃんもお仕事の話やめてよ!」
フカヒレスープの入ったマグカップに口をつけながら、杏がプンスカと怒る。
怒られた内宮は眉をハの字にして「悪かったなぁ」と言いながら、華世が作ったチンジャオロースへと箸を伸ばした。
いっぽう、華世の正面に座るホノカは一口料理を口に運ぶ度に目を見開いていた。
「……何よ。口に合わないなら食べなくていいわよ」
「い、いや……ちょっと今まで食べたことないくらい美味しくて。人って、見かけによらないなって……」
「失礼しちゃうわね」
「せやでぇホノカ。華世の料理はナァ、天下一品なんや。なぁ、ウィル」
「え、うん。俺も華世の料理すごい好きだよ」
「お嬢様の料理が食べられるだけで、毎日三ツ星レストランで食事をするみたいですよ!」
「杏は三ツ星さんを食べたことないからわかりませんが、お姉さまのご飯は最高です!」
「褒めても何も出ないわよ。……そうだ、気になってたんだけど」
華世に突然目線を向けられ、キョトンとした顔で首を傾げる杏。
「ミイナも秋姉もお姉ちゃん呼びなのに、なんであたしだけお姉さまなの?」
「それは……杏にとって、お姉さまがお姉さまだからです!」
「……聞いたあたしが馬鹿だったわ」
杏の意味不明な回答に呆れ果て、黙って料理に箸をつける華世。
けれども、増えた家族みんなで和やかに食事ができる平和に、華世はほくそ笑んでいた。
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登場戦士・マシン紹介No.12
【セキバク】
身長:2.0メートル
体重:不明
三度笠を被り外套で身体を覆い隠した、ツクモロズの刺客。
そのコートの下には金属質の身体を隠し、両腕には前腕から伸びるように付いた鋭い刃を持つ。
戦闘においては空中でも軌道が変えられる身体能力を生かして、腕の刃物による斬撃を放つことで攻撃をする。
また人間を超えた動体視力や反射神経を持っているのか、至近距離から放たれた弾丸を刃で弾き防ぐことが可能。
【次回予告】
クレッセント社の要人警護へと駆り出された華世。
暗殺を狙う集団からの凶弾に、魔法少女の力が炸裂する。
しかしこの時の出会いが新たな戦いの火蓋になるとは、華世は思ってもみなかった。
次回、鉄腕魔法少女マジ・カヨ 第13話「人間の敵」
────人の欲望に、果ては無いのか。




