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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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資金源

「俺は、外から来たんだ」


チョコが陵墓の森にポツンと立っている獣人に答えると、チェコより小柄な、猫の顔の獣人は鼻を鳴らして、


「俺さー、あっちから枝を伝って来てたんだよ」


どうやらハイロン準爵の屋敷の方向から、木の枝を伝ってここまで来たらしい。


普通の人間には、絶対不可能な行程だが、この猫の獣人ならば、確かに、ずっと崖にも、木というか、草というか、蔦というか、植物はポツポツと生えており、また岩場も、足場には不自由しなさそうなので、辿れそうだった。


「大変だったね…」


チェコは内心、興奮していた。

獣人と会うのは初めてだったからだ。

可能ならトレースしたい。


「えーと、向こうの、なんとか言う貴族のところの子?」


あえてハイロンの名は知らない風に、チェコは聞いた。


「俺はパックってんだ。

この森にゴブリンがいると聞いて、見に来たのさ!」


ヘヘン、とパックは勝ち気に笑った。


ではドリアンが雇ったとか言うスペルランカーか!


思ったが、それにしてはパックはあまりにも幼い。

他人から見れば、チェコも、同じようにみられている、とは気がつかずに、チェコはスペルランカーの弟、と言ったところか?

と考えた。


だが、ベルトを見ると、パックの腰には、一周回るほどスペルボックスが付けられている。


当のスペルランカーか、その仲間かは判らないが、パック当人もかなりのスペルの使い手であるのは、間違いなさそうだった。


警戒すべき相手だが、しかし獣人でありスペルランカーだと言う興味の方が先に立った。


「スペルボックスがたくさんあるね?」


つい、聞いてしまった。


「そうだろ!

ジモンやガニオンにもらったんだぜ!」


躊躇なく中身を見せた。


軍事スペルが充実していた。

ロープ、ナイフ、携帯食などや、地雷、火山弾など禁止カードも豊富に入っている。


赤と緑のスペルランカーらしく、その色のカードも多かった。

が。

それ以上に、石化や石のゴーレムが満載だった。


「凄い量だね?」


と聞くと、


「へへへ。

人でも動物でも、相手の武器でも石にできるんだぜ。

そして、石のゴーレムでこっちの召喚獣に変えられるんだ。

スゲー、便利なんだぜ!」


確かに便利だよなー、とチェコの心も動いていく。


ただし、ゴーレムデッキ同士の戦いになると、いかに相手にダメージを与えるのか、ダメージソースに苦慮することになる。


チェコが、遊びでデュエルをやってる子供を装ってそう語ると、パックはムフフン、と鼻の穴を広げて、


「緑なら、このイカロス。

五/五飛行で、アンチスペル。

つまり、これは敵も味方も、どんなスペルもかからないのさ」


これはチェコは初見のカードだった。


「スゲー、どこで買ったの?」


んー、とパックは考えて、


「アンテルタンだったかな?」


パウリー候国の隣国の小さな国、とチェコも判った。




チェコはさっさと春風亭へ急いだ。

ここなら、世界のカードも手に入る。

なにしろ名門カード卸し問屋なので、しばらく待たされたが、木の箱に入ってイカロスが運ばれてきた。


「高いよなー、五百リンだって…」


ブルー弟の脱色代がパーになってしまった。


この際、錬金術師の看板でも出せればいいのだが、名門ラクサク家がそのような商売を始めるわけにもいかない。


ブルー弟の方は、チェコの施術のかいもあり、あのゴリラの寵愛を得たものらしく、すっかりチェコに心を許してはいたが、しかし、誰も彼もが同じ髪を手に入れてしまったら、それも台無しだ。

なので評判を流してはくれなかった。


「なんか、パッとお金が稼げないかなー」


「ああ、チェコ様!」


僧侶姿の少年が声をかけてきた。

コクライノ大聖堂で神学を学んでいる少年牧師の一人だ。


「今、ちょうどあなたを探しているところだったのです」


へ?


少年牧師とは、挨拶しか交わした事はなかった。

至極真面目な性格の少年のように見えた。


「実は、大聖堂のパイプオルガンが壊れてしまいまして、その修理ができるのは、なんでもリコ村のダリア様だけだ、という話なのですが、チェコ様はダリア様とお知り合いとかお聞きしまして…」


「俺が直すよ!」


どのみち、チェコとパトスがいなければ、ダリアにも修理は無理だった。

狭いオルガンの中には入れるのはパトスだけなのだ。






「あー、芯が折れてるねぇ…」


チェコとパトスはオルガンの中に入って、調べた。


「なんか、あまり手入れが良くないけど?

パイプにも幾つも亀裂があるし、錆びてる部分も多いし…」


「なんとかならんかの?」


チェコたちに講義をしてくれた司祭も、心配そうだ。


「全部いっぺんに、六百で直せますよ」


サービス価格だったので、二つ返事でチェコは仕事を得た。


「教会で口を聞いてくれないかなー」


チェコはホクホクと屋敷に帰りながら、財布を叩いた。

定期的に錬金術の仕事でもあれば、ランカーとして満足いくデッキも作れそうだが、そうでもないとスペルを買うのは、なかなか難しい。


まあ、そう言いつつも、まだ自分のデッキも固まっていないチェコだったが…。

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