40 穴が開きそう
「まだ終わらないの? 」
クリクが退屈そうにぶうたれている。俺が精霊の泉で執拗に聖剣を磨いているからだ。アーネスは文句一つ言わずずっと俺の作業を見ている。あんまりジッと見られてこっちは穴が開きそう……。
サイホーンほどではないが(あれは異常だが)俺も職人気質で一度造り始めると手が止まらないし、納得するまで寝食を忘れがちだ。
魔星の谷からググランデ達が精霊の泉に戻ると、フェンリルの群れが彼らをエルフの村まで送り届けた……と言うか、邪魔だからゴミのように置き捨てに行ったと言うべきか。
城まで戻るまでもそこそこ日数がかかるだろうな……結局、彼らは手ぶらで帰って行った。
俺たちは、竜王が城に送り届けてくれると言う。竜王の牙、本体ごと持ち帰って『既成事実』でも作れば良いだろう? と竜王が言った。
とんでもないような気がするが、身体が千年ぶりに再生されて下らない人間どもを相手にでも自慢したいらしい……竜王の牙を取りに行かせようとした人間たちに竜王の威厳を見せつけたいんだとか。サイホーンと気が合うだけあるなと思った。
「いや、物見遊山だろ? 」と言ったら図星だったらしい。老体で長く寝てばかりで退屈だったからだ。クリクもしばらく城に遊びに行くと観光気分だ。
そんなわけで、俺たちはググランデ達に遅れて数日後の帰還になった。多分、俺たちの方が先に城に着くだろう。






