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真なる女神

「!?」


 突然、舞台が……というより、この空間その物が揺れるような感覚に襲われた。客席の方を見ると、イブ達を困惑している。ってことは気のせいじゃない。


「……カレン……!」


 気がつくと、少し浮遊していたカレンの体は()()が入っていた。そして、それはパキパキ……と不快な音を鳴らし、砕け散る。……まるで、殻を破るように。そして、カレンという人間の殻を破って()()が姿を表す。


「………う」


 それは最早人間でも、女神とも思えないように異形。カレンの体の内側から現れたのは、巨大な軟体生物のような、赤黒い色の気持ちの悪い生き物。イカとタコを足して2で割ったような……そして、やたらと長い職種が4本あり、巨大な蝶の羽で浮遊している。目も口もどこにあるかわからない。


「ふふ……これがワタシの本当の姿……美しいでしょう……」


(どっから声出てんだこれ……)


 どこをどうよく見ても、発声できるような器官なんて無さそうだし、声に合わせて動いている部位もない。


「美しくなんてない……キモすぎるっ!! グチョグチョヌメヌメでうねうねして……!」


「この美を理解できないのも仕方の無いこと……ふふ、でもそれも関係ないわ。貴女はワタシとひとつになるのだから……」


「………ていうか、それが本体って……いつの間にか一体化してたってこと?」


(なんか、聞いてた話だと別の場所に本体があるってことだったんだけど……)


 会話の途中も、カレン(?)は空中で触手をうねうねと動かしていてとても気持ち悪い。


「ふふふ、そうよ……99%の力となったワタシには可能……仮初の体に本体を隠し、それだけで貴女を取り込めればそれで良かったけれど……ふふ、さあ終わりにしましょう……!」


 もう話す気はない…と言った具合に無理やり話を切り上げ、カレンは触手をわたしに向けて伸ばしてきた。かなりの速さで、わたしじゃなかったら死んでたかも。でも、わたしは余裕。ジャンプでそれをかわし、舞台の床に刺さったカレンの触手を落下の勢いを乗せて切り落とす。


「……うわっ!」


 ヌルッとした感覚が手につたわり、触手は綺麗に切れた。切り口からはあの気持ちの悪い血液が吹き出し、わたしにかかる。気にしてる場合じゃないとはいえ、これは精神的にちょっと嫌……。


「痛くない……今のワタシにとってはあらゆる刺激が新世界へと繋がる導……ふふ………」


「あー……もう!!」


 もうカレンはダメだ。ひとりで勝手に高次元の世界に足を……というより、脳みそを浸しちゃってる。こうなったならもうわたしがなにを叫ぼうが聞こえないし、挑発や煽り、気を引くような行動も無意味。だったら短期決着……この剣とわたしの魔法で一気にケリをつけるだけ!!


「その無駄に長い触手……全部切り落とす!!」


 幸いなことに、うねうねと動くそれは長すぎるが故に地上にいても攻撃が届く。わたしが剣を向けると、カレンは残った三本の触手を激しく動かし、わたしを貫こうとしたり、捉えようとしてくる。その触手から滴る謎の粘液で床が滑り安くはなるものの、動きは見切りやすく、走ってしゃがんでジャンプして……ですべてかわせる。


(なんだ……見掛け倒し)


 かわすついでに三本とも軽く切り落とす。吹き出す血液が舞台の上を汚すと同時に、カレンが喋り出す。


「……ふふ、神は不滅よ………」


「……へぇ、なるほど」


 今切り落としたはずの触手の切り口から、新たな触手が生えてきてまた4本に復活した。早速元気に動き回るそれは、わたし目掛けて伸びてくる。でも


「……別に、何も変わってないし……!」


 身を捩りながら交わすのと同時に、今度は4本同時に切り落とす。とめどなく溢れる血液で足場が気持ち悪い色で染まりきる。


「……カレン……女神といえどもこんなもんなんだね。じゃあ……終わりにしよ! 相反する力を纏いし炎よ……邪神を滅せ……!! 混沌(Chaos)炎獄(Inferno)!! ……あれ?」


(でない?)


 いつもと同じように、魔法を放ったつもりなのに、わたしの指先からはなにも出てこない。何度試してもそれは変わらなくて、それなら……と、剣を構えて走り出そうとした所でようやくわたしの見に起きてる異変に気がつく。


「なぬ!?」


 走り出そうとして、足を動かそうとして……動かなかった。足元を見ると、そんな感覚ないはずなのに触手が絡みついて締め付けられていた。……しかも、その触手はカレンから伸びていない……切り落としたやつだ。


「ふふ……ようやく気がついたのね……そうよ、貴女はもうワタシの囲まれ囚われの身……さあ、その身をワタシに委ねなさい……!」


(……力を吸ったりしてる?)


「いたい……!」


 思考をめぐらす暇もなく、急に触手の感覚が足につたわり、ものすごく強く締め付けてくる。ゆっくりと、でも確実に強くなってる……このままじゃあ骨まで……!


(なに……痛すぎる………)


 いまのわたしの力でもこんなに痛い……普通の人ならすぐにでも死ぬかもしれない。………どうすれば………。


 チラッと客席の方に視線を向けると、声を出さずにスティアとメルがなにかしている。カレンに気が付かれないように、目線だけそちらに向けてよく観察する。………


(2人とも同じ動き……わたしに何かを気が付かせようとしてる………何?)



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