行き着く果の分かれ道
(理由……普通なら怪我や病気、年齢……でもこの2人に限ってそれはない。)
わたしが質問をすると、2人はチラッと目を合わせて少しな悩む様子を見せる。むしろ、何を悩むのかわたしには分からない。普通、ここまで話したら理由も言うでしょ? 聞いてもないのに自分から元ダイヤモンドランクだなんて言っておいて、いざ理由を尋ねたら『それは言えない』なんて、そんなこと……
「理由ですか〜……」
「はい! 理由です! 気になります!」
「とは言われてもね……これといって特にないのよ。見てのとおり、怪我なんてしてないし、体も自由に動くわ、私もセレナも。」
「いや、だから……だからこそ、どうしてなかなって……理由がないのに辞める理由……それが気になって……」
なんだか、2人ともちょっと冷めてる感じがする。まるで、興味をそそられてるわたしを見て呆れてるような……。
「だから、特にないんですよね。一緒にかつどうして、ダイヤモンドランクになって、お金もそこそこ稼げて……人間、そこまでで良くないですか?」
「は?」
「ユイちゃんはまだ冒険者になって……というより、この国に来て日が浅いのよね。でも、国とか仕組みの問題じゃなくて……確かに、そのまま冒険者を続けていればもっとお金も稼げたし、何かの間違いでさらに上にカリスマになれたかもしれない……でも、そうじゃないのよ。それはただ待っていれば訪れるものじゃなくて……相応のリスクが……要するに、ダイヤモンドに匹敵する依頼っていうのは冗談じゃなくて常に死と隣り合わせなの。」
「そうですよ、ほんとに一瞬油断すればその身は焦がされるかもしれないし、貫かれるかも……そんな世界だったんです。だから、話し合って決めました。そこそこ稼いだし、もうやめようって。後は普通に働いて、ちょっと贅沢しながら生きて行ければそれでいいって。50とか60になるまで死と隣り合わせの生活なんてする意味もないんです。まあ、ユイさんやイブさんはそうもいかない、ほかの事情もあるかもですけど、普通の人はこんなもんなんです。」
「もちろん、辞める時は引き止められたわ。私達みたいな強いひとなんてそうそういないから、国やギルドとしてもその人材は手離したくない……とは言っても、そんな権限もないわ。結局、私達はすんなりと冒険者をやめて、セレナはそれでもギルドにはいて欲しいなんて頼まれたから受付、私は色んな冒険者の人と話してみたいから鍛冶の勉強をして、今の店を始めたのよ。これだけのこと……残念だけれどユイちゃんが求めてるような、すごい事情なんてものはないのよ、ごめんなさいね。」
それだけ話すと、ソフィアさんはセレナさんになにか一言だけ行ってギルドの外に行ってしまった。少し待ったけど、戻ってくる様子もない。
(は……え?)
それだけ? 要するに、なんとなく? そんなこと……いやいや、おかしい。仮に、そうだったとしても……辞める意味なんてない。冒険者としての地位を捨てるなんて、その必要は無いはずだよ。若くして数億円稼げる、絶頂期のスポーツ選手がある日突然『怪我したくないので引退します』なんて言う? ありえない。 それにそれに、だとしても『2人の噂もなにも聞かない』ことに関してはわからないし……
「あの……セレナさん……」
幸い、セレナさんはまだ椅子に座っていた……けど、わたしが話しかけるとすぐに立ち上がって言う。
「そろそろまたお客さんが来そうですよ、プライベートなお話はまた今度……ほかの受付の人は何故か今日みんな休みなので、私また忙しくなりそうで……」
「ちょっと……!」
慌ててわたしもたちあがり、セレナさんの腕を掴む。でも、すぐにその手は払われてしまった。
「ユイさん……違うんですよ。違うんです……そんなことはどうでも良くて……見失わないでください。いま、ユイさんがするべきこと、必要なことは……こんな、探偵ごっこじゃないはずですよ。」
そう言うセレナさんの瞳はなんだか少し怖い。こんな表情も初めて見た。
「するべきこと……」
(………そっか。そうだよ。気になるけど、今は違うんだ。わたしがするべきとはこんな詮索じゃなくて、カレ)
「お金、ちゃんと返してくださいよ? 私の立場で言うのも変ですけど……その、ちょっと最近何もしてないような気がして……平気かなって、思ったり……いや、余計なお世話ならいいんですけど!」
「あ、はい」
(そっちね〜)
至極真っ当なことを言い、セレナさんはカウンターの方に戻って行った。それとほぼ同時に、お客さん……冒険者も戻ってきた。
(お金は当然返す……返すけど、今はまだ待ってください……それより先に、やらないと行けないことがあるんです……!)
ごめんなさい、でもわたしは……世界を救うんです!!
(……でも、あの二人がそんなに強いとは思えない……とはいえ、嘘ついてる訳でもないだろうし………)
やっぱり色々気になる、けど………それは今は我慢かな。




