煌めく栄光
ちょっとした致命的なミスがあったので修正しました、申し訳ないです
「あ! ソフィア……それは別に言わなくても良かったんですよ……」
「あら、そう? でも……」
「ダイヤモンドランク……ダイヤモンドって……え?」
ソフィアさんもセレナさんが何か言ってるけど、全然耳にも頭にも入ってこない。『元』『ダイヤモンドランク』このふたつの言葉の意味をわたしは理解できない。そもそも、元ってなに……って話だし、仮に引退とか、何かしらの理由で冒険者を続けられなくなった場合だったとして……ダイヤモンドランクって……だって、ゴールドランクより上のプラチナよりも上でその上はカリスマ……そしてそれを超えたらもう幻とも言える『ゴッドランク』……このふたりが? どういうことなの……。
「えっ、ちょっ……その……ダイヤモンドランクってそもそも、結構いるもんなんですか? わたしの知り合いの中だとエルザのゴールドが最高で、それより上って見たことないし……」
ランクのことなら受付の人……セレナさんが詳しいだろうと思ったのに、わたしの疑問にはセレナさんではなく何故かソフィアが答える。
「ゴッドランクはあってない様なもの……だから、ダイヤモンドランクは事実上、上から2番目のランクよね……当然その数は少ないわ。ライズヴェル領全体でみたってそうそういない……この街にも数人はいたはずだけれど……特殊な依頼で長期間いなかったり、特例的に現地で依頼を受けることもあったりで、実際に会う機会なんて少ないのよね。それに、普通ならゴールドだってなかなか行けないのよ。エルザみたいに、若いのにゴールドランクなんて、ほんのひと握り……シルバー止まりで怪我や年齢的な限界で冒険者を辞めてしまう人だってかなり多いわ。」
長くしゃべり、それが終わるとソフィアさんは近くの椅子に座った。それに続いて、セレナさんも近くに座る。
「そ、そうだったんだ…」
(そう考えると、すぐにでもゴッドランクになってやる! なんて言ってるわたしとかイブって世間的には相当なアホ……に見えるんだろうね。それに……)
一人だけ立つのも馬鹿らしいから、ソフィアさんの隣に座る。
(それに、たとえ常識外れの力があっても、それだけで本当にダイヤモンド、カリスマ、ゴッドになんてなれるのかな? ぽっと出の、世間的に見れば子供な2人が、いくら強くても国がそれを許さない……十分に有り得る。勇者ってことになってるイブはまだしも、わたしはわからない。もちろん、表立ってそんな空気はないけどさ。)
「ユイさんはいまブロンズですけど、当然ランクが上がるほど次のランクまであげるのが大変になります。はっきり言うと、事実上のトップのカリスマランクなんて、何十年と冒険者を続けた上で、歴史に残る災害を起こしかねないモンスターを何体も討伐したり、伝説級の宝石を発見したり、狂獣を生きたまま捕まえてきてその生態解明をする……とかでもない限り、まず無理ですよ。じゃあその上のゴッドランクは?……言うまでもないわけですよ。」
「うぅ……」
セレナさんだって内心わかってたんだ。わたしがどれだけ馬鹿なこと言ってるか。でも、あくまでもギルドの職員という立場ではそれは言えない。でも今はどちらかと言わずともプライベートな感じ……だから、ハッキリと言ってくれた。表情は優しげで、悪意とかじゃなくて単純に善意で言ってくれてるんだ。そんなことより、早く金返せ……もあるだろうけど。
「じゃ、じゃあさ!? 2人はなんなの!? 2人揃って元ダイヤモンド……もう引退はしてるんだろうけど、何者?」
ソフィアさんは『エルザの若さでゴールドはかなり凄い』なんて言うけど、ソフィアさんとセレナさんだって同じくらいの歳でしょ。それなのにダイヤモンド、しかも今はその地位を捨ててる。何があったの? ありえない、考えられない。
「私、こう見えてもすごい強かったんですよ! 弓を使うのが得意で、魔法は氷と、光も使えました!こう……弓と矢に少し細工をして、魔法の力を上乗せして放てるようにしたり、光の矢を放ったり……どんなモンスターにだって負けない気がしてました! 『光穹のセレナ』なんて、ちょっと恥ずかしい呼び方もあったりで……」
軽くジェスチャーをしながら楽しげにはなすセレナさん……その姿を見て、今度はソフィアさんが口を開く。
「ふふ、そうね。セレナの操る矢は本当にすごかったわね。ドラゴンの鱗も貫いて、リヴァイアサンの牙も砕く……なんて言われていたりして、有名だったもの。もちろん、私も負けてないのよ。私はシンプルに片手用の剣。魔法は……恥ずかしいことに、全然使えなかったわ。そんな私は誰が呼んだのか『虹の剣士ソフィア』……多分髪の色のせいなのでしょうけど……。」
(……みんな過去形じゃん)
そんなに凄いなら、普通引退するわけない。歳でもないし、怪我してる様子もない。ていうか、そんなに凄いなら噂のひとつでもあっていい。なのに、誰もそのことを言わない。不自然……でも、それはこれに限ったことじゃない。
(なんか……この世界は……前も思った。なんか変。そりゃあわたしのいた世界だって偉い人や企業がなにか誤魔化してたり、歴史に勘違いがあったりで何か変な矛盾が起きたり、オーパーツがあったとか言われたり、宇宙人の痕跡がとか、真面目なことからトンデモなことまで違和感のある事なんで日常茶飯事だったよ。でも、そうじゃなくて……なんだろ、この感じ……)
この国ではこの冒険者システムが一般的で、誰でも知ってて、ランクが高い人は『すごい人』って認識もある。それに、この2人は大層な通り名まであるし、ソフィアさんは鍛冶屋な上に特徴的な髪の色、セレナさんは色んな人が、冒険者が絶対に見かける所にいる……それなら、誰も気が付かないなんてありえない。現にソフィアさんも『有名だって』って言ってた。なのに、その2人が当然のように街にいて、ギルドにいて……なのに誰も何も言わない。いくら田舎に住んでたとしても、そんなに有名ならマリアやリズだって知らないはずないのに。
(だったら、臆することはない……その答えの、核心をただここできけばいいだけの事……)
少し息を吐き、隣のソフィアさん、正面のセレナさんを交互に見て、ゆっくりと言う。
「教えて欲しいです……そんなに強かった……ダイヤモンドランクの2人がどうして冒険者を辞めたのか……どうして、誰も2人の話をしないのか……」




