最悪最凶タッグチーム
「………なあ」
ガルグイユを討伐し、一応話もついたところで、ゲートに向かって歩いていると……イブが立ち止まり、少し先にあるゲートを見ながら言う。
「………うん」
「誰かいるよな?」
それだけ言うと、イブはまた歩き出す。でもわたしは立ち止まったまま、考える。
(誰かっていうか……)
遠くからでもわかる。あれはマリアだ。あの服装に、髪型……今日はソフィアさんに渡してるから傘は持ってないけど、マリアに間違いない。でもどうして………
(………約束破ったからか)
忘れてた。元々はマリアと出かける予定だった。まだ日が暮れたりはしてないけど、今日これからお出かけってのも無理だろうし、文句言いにわざわざゲート通ってきたのかな……。
「おい、なに立ち止まってんだよ。あいつ知り合い?」
少し先に行っていたイブが振り返り、面倒くさそうに言う。
「ま、まあ……うん。今行くよ。」
「………やっぱりおまえのことよくわかんないなー。」
走ってイブに追いつくと、イブは黙って少し早足でゲートの方へ歩き出す。怒ってる?
「おー……なんかおじょーさまみたいな格好してるぜ。」
マリアの姿がハッキリと見えるくらいの距離まで来ると、マリアは大きい声でこちらに叫んだ。
「ユイ様!!お待ちしておりましたわ!」
「あー……」
(めんどくさいなこれ……)
予想通りというかなんというか、『ユイ様』をきいたイブはわたしの方二振り向き、ニヤニヤしながら言う。
「ユイ様だってさ〜?」
「な、なんか文句ある……?」
「別に〜? ただ、そんなふうに呼ばれるなんて、おまえは……いやいや、ユイ様はさぞかし凄い人なんじゃないかなって思ってさー。」
「絶対思ってないじゃん……。 」
「いやいや、ほんとに思ってるぜ〜。だって勇者のボクより強いんだしさ。そりゃあ人から『様』なんて呼ばれて当然だろうな。」
イブはわたしの横に来て肩に手を置いて言う。
「………」
(ムカつく……)
イブ……この子……人を馬鹿にする才能が溢れてる。
「ユイ様、その方が勇者でして?」
なんだかんだ言いながらもマリアの方に行くと、イブの方を見ながらすぐにそうきかれた。
「そうだよ。ノーザンライト王国から来た勇者のイブ。」
「そうそ、ボクが勇者。色々あって仕方なくユイと組んでやることにしたんだぜ。」
得意げに、平気で嘘を言うイブ。でも何故かマリアはそれを見破っているようで、怪しむような顔でいう。
「本当にそうなのでして?ギルドで聞いてきた話と、お相手がユイ様のような方であることを考えると……本当はあなたの方が仕方なく組んでもらったのでは無くて?」
「おいおい、ボクは勇者だぜ?誰よりも強くて誰よりも頼りになって、世界を救う存在だ。そんなボクが、誰かに情けをかけられるとかまずないってば。」
「……勇者様ともあろう方が嘘をつくとは思いたくありませんので、とりあえず信じることにしますわ。……ところでユイ様」
「あ、はい……」
マリアのわたしを見る目は、どうみても怒ってそうな感じ。やっぱりか……。
「理由はたしかにわかりますわ。勇者様と一緒に依頼を受けた……ですが、先に約束をしていたのはわたくし……せめて一言でもかけてくれれば良かったものの……」
「……喧嘩だかなんだか知らないけど、後にしろ。ユイ、あっち。」
突然イブが話をさえぎり、空をゆびさす。その方向を見ると……
「な、なにあれ……」
空には翼の生えた馬のような形のものが飛行していて、こちらに向かってきている。あのシルエットは……。
「ボクも知らない。なあおじょーさま、おまえは知ってるか?」
イブにつられてマリアの方に目を向けると、マリアは少し震えながら言う。
「あれは……『ペガサス』……ですわ。」
(やっぱり……)
翼の生えた天を翔ける馬といえばペガサスだよね。ところでなんで異世界なのにあっちの世界の空想上の生き物がいるんでしょうね。
「ペガサス……ノーザンライトにはいない種類だな。危険なのかあれ?」
「ええ……危険なんてものじゃありませんわ。ペガサスを含む一部のモンスターは『狂獣』と呼ばれていて、この種族だけは人間を初めとしたほとんどの生物にとって完全に害しかないため、遭遇してしまった場合は特別に討伐することが許されています。……ただし、そんなことが出来る強さの方などまずいません。……こんな話をしてる場合ではなく、今はまず逃げた方がよろしいですわ!」
少しずつ迫ってくるペガサスから背を向け、マリアはゲートに向かう。……横をチラッとみると、イブは既に剣をもってペガサスの方を睨んでいた。……とても楽しそうな顔で。
「おいユイ。わかってんだろ?」
「『討伐が許可されてる』なんて言われたら、わたし達がぶつかり合う必要もないもんね。」
「ああ!だったら今すぐボクに力をかせ!あのふざけた馬をぶっ殺してやるぞ!」
イブは剣をペガサスに向けてそう叫んだ。わたしもそれに応える。
「まかせて!マリアもそこで見てて……!わたしがペガサス倒しちゃうところ!」
チラッと後ろを見ると、マリアはゲートのすぐ近くで不安そうにこっちを見ている。……こんなことしたら、またアレが悪化しそうだけど……仕方ないね。
「よしいくぞ!勇者のボクがペガサスを倒す姿、刮目してろ!」




