第8話 初めての村(3)
周囲との違和感を初めて覚えたのは、小学生の頃だったと思う。
確か、クラスメートとの集団下校の時だった。道の途中に、車にひかれたらしい野良犬の死骸が放置されていた。暑さ厳しい真夏の時期だったからだろう、既に腐敗が始まっていた。
当然ながら他のクラスメートは、死骸を避けるように歩いていったのだが、ボクはどうしようもなくその死骸に惹かれるものがあった。
飛び散った内臓はどうなっているのか、虚ろな両目は何を見ているのか、『観察』したい。――その欲求のままに近づき、じっと死骸を見ていると、近くの大人に肩をつかまれ、無理矢理集団下校の列に戻された。
後日のクラスメートのボクに対する反応は、一様にして『無視』だった。
子供心ながらに彼らの行動は理解できた。自分とは違う感性や思想を排除したがるのは、人間が持って生まれる悲しい性だからだ。
同じ状況は中学校に進学しても続いた。多少は忘れられてきてはいたものの、やはり全体としては距離を置かれている感は否めなかった。
大野大河と出会ったのは、そんな周囲と孤立している時期だった。
出会ってから初めてボクの異質性を知った時は、彼も驚きを隠せない様子だった。だが、大野は決して距離を置くようなことはしなかった。
ある時、彼はこんなことを言った気がする。
「確かにお前は変わっている奴だと思うぜ? でもよ、何か悪さをしているわけでもねーし、『変わっている奴』ってだけでのけものにするのはよ、俺、頭良くねーから上手く言えないけど、『違う』んだよな」
それからボクと大野はゲームやマンガなどの他愛のない雑談から、大野の初恋の手助け(結局、告白した時にフラれたらしいが)まで、実に様々なやりとりをした。
気がつけばボクと大野は、友人と呼んで差し支えない仲になっていた――。
「ムラカミ、どうしたんだ急に、ボーっとして?」
はっと現実世界に意識を戻したボクの顔を、レンは横から覗き込んでいた。曖昧な笑みで誤魔化し、それからボクとレンは、先程までの重い雰囲気を振り払うように、妙にあわただしく別れた。
村長の家に戻る道すがら、頼りない月光の下、聴覚を研ぎ澄ませて周囲を警戒しつつ、これからのことを考え始めた。
村人たちとの顔合わせはある程度まで済んでいる。少なくとも、あからさまに拒絶されるということはなさそうだ。ならば、次の一手は――。
村長の家のベッドに横たわり、完全に眠りに落ちるまで、ボクは思考し続けた。
次回は8月31日の予定です。
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