第62話 真相と野望(2)
神父の『加護』の力、『黄金の蜂蜜薬』の材料、改良型『パラサイト・リーフ』。神父が口にした真相の数々はボク達を驚愕させた。神父はその隙を見逃さずに次の言葉でボクに揺さぶりをかけた。
「ユウヤ・ムラカミ。初めてこの場所でお前と言葉を交わし、まんまと弱みに付け込まれた時は実に腹立たしかったが、同時に心から感服したよ。特に、己の目的の為なら一切手段を選ばない、その非情さにな」
神父は戦闘態勢をとらずににやりと笑みを浮かべて、ボクにねっとりとした粘着質な視線を向けた。ボクは身の毛もよだつような不気味さと気持ち悪さを感じつつも、せめて表面上だけでも冷静に振舞えるように自分を徹底的に『制御』した。
哀れな元シスターは虚ろな目でボク達を見ながら、じりじりと距離を詰めてきては、花野が近づくそぶりを見せると、動きを止めて花野に顔を向けて、それから元の位置まで遠ざかるということを何度も繰り返していた。
「お前が負の感情を無尽蔵に生み出し、私が負の感情を力の源たる『黄金の蜂蜜薬』に変える。私とお前の『加護』の力は極めて相性が良いのだよ。どうだ、私と手を組んでみる気はないかね?」
神父はあくまでも不敵な態度を崩さずにそう言った。それもそうだろう。ボクの『加護』の力を知っているということは、おそらくはノースブルク村での一件からずっとボク達のことを調べ、その実力や手の内を分析していたということだろうから。――もっとも、ボク達に気を取られすぎて部下の管理が疎かになったのも事実ではあろうが。
ボクは後ろを振り向いて、背後の仲間達の様子を目にした。
ローザは、一歩前に出て口を真一文字に結び、揺れる黄金色の瞳でじっと見つめ返した。花野は、元シスターの方に顔を向けたまま、それでもボクの答えを待っている。レンは、旅の中で背中を預けることが多かった相棒は、ボクに対して穏やかな笑みを浮かべていた。
三者三様の反応を見て、ボクの答えは決まった。
「ボクは『加護』の力を得た時に、自分のことを利己的な人間だと思ったし、この世界の歴史を初めて知った時には、元の世界よりも過酷で理不尽な世界だと感じたよ。でも――」
ボクの脳裏に今までの旅の記憶が駆け巡る。良いことも悪いことも、次々と鮮明によみがえっては消えていく。その一つ一つを再びしっかりと胸に刻んで、ボクは神父への返答を続けた。
「冒険者として色んな場所を旅している内に、想像していたよりもボクはもっと利己的な人間なんだと、この世界はもっと過酷で理不尽なんだと気づかされたよ。でも、この世界で見つけたのはそれだけじゃなかった」
神父に短剣の切っ先を突きつけ、彼の不敵な態度に対してボクは余裕のある笑みを返してみせた。神父はそんなボクの態度を不快に感じたのだろう、ほんの一瞬だけ額に青筋を立てて顔をひきつらせた。
「ボクを信じてくれる人、それに仲間だと言ってくれる人。どんなに過酷で理不尽な世界でも、前を向いて一生懸命に生きる人。そんな人達にたくさん出会えたんだ。ボクはその人達を、そしてその人達の居場所を守りたい。だから、お前とは手を組まない!」
次回は3月19日に公開予定です。
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