第55話 スノウリング村(7)
「体調のすぐれない友人のために代わりに自分が、遥々東の国境近くの村から薬を買いに来た、と。なるほど、それは大変ですね」
「よりにもよって薬がなくなりかけてきた頃に、自宅から出られないほど体調が悪くなってしまったようでの、全く困った奴じゃ。じゃが、フランヌにとっては良い旅になりそうで良かったわい」
フランヌが栗色のツインテールをぴょんぴょん弾ませ、他のみんなに笑顔を振りまきながら遊んでいるのを、ボクはタッドリーと共に静かに見守っていた。フランヌがボク達と馴染めるか心配ではあったが、そこはレンと花野が上手く対応してくれた。
それにしても、元の世界にあるような本格的なスキー用品が、この場所に来てから、この世界にも存在するのを知った時には驚かされた。
地元の住人によれば、かつてスノウリング村を訪れた雪国出身の『迷い人』から、自国の文化として教えられたのが現在まで伝わった結果、スキー文化がスノウリング村の文化として定着したらしい。
「ふむ、そろそろ神父様が村の教会にいらっしゃる時間じゃな。ほれ、フランヌや。教会に行くぞい!」
タッドリーがフランヌにそう大声で呼びかけると、フランヌは元気よく返事をしてこちらに駆け寄ってきた。タッドリーが抱きついてきたフランヌの頭を優しく撫でているのを見ながら、ボクは神父の薬について考え始めていた。
(花野さんの足、少しでもその薬で良くなるだろうか――)
この世界に召還された最初の日、ヒトクイカズラという魔物に襲われた時の怪我が原因で、花野の片足に後遺症が残ってしまった。
花野本人は後遺症のことをそれほど気にしていないかのように、普段は明るくふるまっているが、時々不自由なく歩く同年代の女子の姿を、複雑そうな表情で見ているのをボクは知っていた。
もし、花野の足の後遺症が少しでも良くなるのならば。あらゆる怪我や病気をあっという間に治すという神父の薬に、そんな一縷の望みを抱かずにはいられなかった。
「お願いがあります。その神父様にボク達も会わせてはくれませんか。どうしてもその薬の可能性に賭けてみたい事情があるんです!」
タッドリーは唐突なボクの懇願に驚いた様子だったが、事情を詳しく聞いた後に快く承諾してくれた。
そして、雪遊びから戻ってきたレンとローザ、花野にも神父の薬について説明し、昼過ぎにタッドリーとフランヌを含めた全員で、奇跡の万能薬と名高い神父の薬を求めて村の教会に足を運ぶこととなった。
次回は8月28日に公開予定です。
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