第49話 スノウリング村(1)
リヒテンブルクの冬は終わり頃が一番寒い。ノースブルク村から南東方面への街道を進んでいったところにある、温泉と雪遊びが名物のスノウリング村が一番活気づく時期でもある。
オズウィン砦防衛戦から約二ヶ月の時間が過ぎ去っていた。あれから防衛戦で生き残った魔物の残党の討伐依頼を十件以上はこなし、ようやくまとまったお金が集まったので、ボク達『青い翼』は初めてその翼を休める時間を得た。
今、ボク達はスノウリング村の温泉宿の受付で宿泊の手続きをしている。書類に必要な記入をしているのはもちろんローザだ。
「はい、必要な手続きは以上です。それでは、部屋までご案内しますので、私の後ろについてきてください」
受付の女性にそう言われて、築三十年以上と年季の入った木造でありながら、手入れの行き届いた温泉宿の廊下を女性の後ろについて渡っていくと、五分もしない内に空き部屋についた。用意された部屋は二つ、部屋番号は『115号室』と『116号室』だった。
ボクとレンは『115号室』、花野とローザは『116号室』に自分の荷物を置くと、そのまますぐに温泉宿の外、他の温泉宿や土産物店が立ち並び、多くの観光客で賑わう大通りをあちらこちらと歩き回り始めた。
「わあ、やっぱり有名な観光名所なだけあるわね。ねえねえローザ、あそこのあのケーキとかすごく美味しそうじゃない!?」
「あれは『スノウリングロール』ね。スノウリング産の小麦粉や果物を使った有名なロールケーキよ。ねえハナノさん、良かったら私と一緒に買って食べましょう!」
ローザは久しぶりに年頃の少女らしい一面を見せながら、花野と共にケーキ屋の前の列に並んだ。ボクはその様子を見て内心で安堵しつつ、列の長さから、二人が戻ってくるまで十分以上かかるだろうと予測し、近くのベンチに座って待つことにした。
積もった雪を払ってベンチに腰かけると、後ろからずしんずしんと、重々しい物音が聞こえ、振動で木の枝から雪がぼろぼろと頭上に崩れ落ちてきた。慌てて体についた雪を払い落としてすぐに後ろを振り向くと、老人とその孫娘らしき二人組が巨大な木製の人形を連れて、大勢の人々の耳目を集めながら大通りを歩いていた。
木製の人形の背丈は間違いなく三メートル以上はある。切り倒した丸太をそのまま使ったような荒々しくも素朴な外見も特徴的だ。ボクはその巨大な人形の正体を知っている。いや、そもそもこの世界で知らない人間の方が少ないだろう。
そして、オズウィン砦防衛戦が終わってから、ボク達が探し求めていた『戦力』を目の前にして、ボクは胸の高鳴りを抑えきれないでいた。
次回は4月29日に公開予定です。
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