第48話 白き戦場の跡地にて(2)
早朝から始まったオズウィン砦からの帰還ラッシュも、昼前になってようやく終わりが近づいてきていた。
ボクの目の前で停車している『青い翼』のメンバー全員を乗せて出発すれば、『勇者』大野大河を除いた全ての冒険者達がオズウィン砦から去ったことになる。
「忘れ物がないか、もう一度ちゃんとチェックしましょう。依頼先からの馬車代の補助金は往復一回分だけだから、消耗品の補充や装備品の修理のことも考えると、これ以上お金を使うわけにはいかないの」
ローザのそんな言葉をきっかけに、ボク達は最後の荷物確認を始めた。初めは全員黙々と自分の分の荷物を確認していたが、次第に今回の戦いを通して得た気づきを、ぽつりぽつりとそれぞれ話し出した。
「私、砦の中で『加護』の力を使って、足りなくなりそうになった薬草を増やしたりとかしていたんだ。あれはあれで大事な役割なのは分かってる」
花野は手を止めてそう言うと顔を上げて、真剣な表情でボク達一人一人を順番に見つめていき、最後にローザの瞳で視線を止めた。
「けど、やっぱり私も戦う力が欲しい。チーム全員で戦わないといけない時、足手まといになりたくないから」
ローザは花野の瞳を見つめ返しながら、花野の言葉を咀嚼するように聞くと、穏やかな微笑みを浮かべてこう口にした。
「私ももっと戦闘用の魔法を習得する必要があると感じたわ。今回のような大規模な戦いだと、『強化魔法』による味方の援護しかできないから。だからハナノさん、一緒に探しましょう。新しい力を」
明るい雰囲気が徐々に広がっていくのを感じられるようになっていくと、ローザの言葉の後に続いて、レンも陽気な声と話し方で話し始める。
「俺もムラカミとの連携のバリエーションをもっと増やさないとな。弓矢と片手用の短めの剣じゃ、どうしたって瞬間的な攻撃力に限界があるからな」
会話の内容はそれから次第に、過去から未来へ、戦いから日常へと移っていった。そうした数分間の会話の後、ボク達は次々と自分の荷物を手に馬車に乗り込んだ。馬車はボク達全員を乗せるとすぐに出発した。
ボクは揺れる馬車の中から遠ざかっていくオズウィン砦を目にしながら、ボクが帰りの馬車に足を向けた時に、大野が口にした最後の言葉を思い出していた。
「励ますつもりが、逆に暗い雰囲気にしちまったな。悪かったよ。なあ、お前が言ったように、強くなるしかないのならさ、次に会う時までにお互いもっと強くなっていような。約束だぜ!」
冬はまだ終わらない。しかし、いつか必ず春は訪れる。ボク達を乗せた馬車は轍を刻みながら、イチノセ村への帰り道をただひたすら進んでいく――。
次回は4月10日に公開予定です。
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