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第42話 オズウィン砦(5)

「衛生兵は至急、負傷者を治療室へ。まだ戦える者は白兵戦の準備をせよ。急げ、敵軍はもう防壁の下のすぐ近くまで来ているぞ!」


 レウニグスの矢継ぎ早の指揮に従って、防壁の上の守備隊は慌ただしく動き回る。ボクとレンも武器を弓矢から剣に持ち替えると、梯子を使って防壁を登ってくる敵兵を待ち構えた。待ち構えている間にも互いの矢が互いの命を奪い合う時間がしばらく続いた。


 そして遂に、数体のゴブリン兵が防壁の上に姿を現し、ゴブリン兵達の突撃によって白兵戦の火蓋が切って落とされた。ボクに対しても二体の槍で武装したゴブリン兵が、左右から同時に襲いかかってきた。


「させるかよ、おらあ!」


 突風か稲妻のように素早く、片方のゴブリン兵の背後に回り込んだレンは、反応することすら許さずにその背中を切り捨てた。


 もう片方のゴブリン兵がそれに驚いて動きが固まったのを見たボクは、突き出されている槍を引っ張って前のめりに体勢を崩させると、そのまま首を剣で突き刺して、返り血を浴びながらすぐに引き抜いた。


 血腥さとべっとりとした気持ち悪い感触に吐き気を催したが、そこは自分を『制御』して堪え、表情に少しでも出ないようにしながらレンと背中合わせの状態になった。


「レン、お互いの死角をカバーしながら、連携して一体ずつ倒していこう!」「了解!」


 ボクとレンの周囲は既に両軍が入り乱れての戦いになっていて、あらゆる場所からあらゆる情報が全身に伝わってくる。


 武器と武器がぶつかり合う音、怒号と悲鳴と断末魔、流れ出た血の匂い、身を切るような冬の寒さ、自らも剣を手に奮戦しながらのレウニグスの指揮、足元から感じる破城槌と門の衝突による震動。北の広場の守備隊も投石機による攻撃を中断し、クロミアが指揮する『鋼鉄の盾』を中心とした白兵戦に突入しつつあるようだった。


 荒れ狂う情報の嵐の中で必死に警戒していると、新手のゴブリン兵が今度は単独で剣を振り上げながら突進してきた。


 ボクは自分の剣で振り下ろされたゴブリン兵の剣を受け止め、そのまま力一杯押し返そうとすると、相手のゴブリン兵も力で対抗してきて、その場で膠着状態に陥った。両者一歩も譲らずにいると、ボクとゴブリン兵が鍔迫り合いをしている横を、レンが一陣の風の如く一気に駆け抜け、僅かに遅れてゴブリン兵の首に真っ赤な花が一輪咲いた。


 それから同じような連携で二体目、三体目、四体目と倒していき、五体目のゴブリン兵の胸を突き刺した時に戦場に異変が起きた。


「おい見ろよ、敵が逃げ始めているぞ!」


 近くの誰かがそう叫んだのを耳にしたボクは、砦の西側と北の広場に目をやった。すると、戦意と勢いを失った敵兵が、我先にと、セルモンド山岳の麓の森林へと向かって逃げ始めていた。逃げ遅れた敵兵が散発的ながらも追撃を受けているせいで、敵軍の損害はより大きくなりつつあった。


 そして、生き残った全ての敵兵が森林の中に姿を消した。敵兵が全ていなくなったのを見届けた後、防壁の上から、北の広場から、さらには砦内部からも勝鬨が上がった。


 オズウィン砦の防衛に成功したのは、誰が見ても疑いようがなかった。――少なくとも、この時点では。


次回は1月9日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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