第39話 オズウィン砦(2)
大野大河との再会を果たしたボクはその後、『青い翼』のメンバー達のところに戻って身体検査を無事に終えた。身体検査中は武器を構えた衛兵に囲まれていたため、生きた心地が全くしなかった。
そしてようやく、砦の中での自由行動が許可された。オズウィン砦の内部は無駄な装飾が存在しない、極めて殺風景な内装だった。だからだろうか、砦の内部のあらゆる場所から殺伐とした雰囲気が漂い、不穏な会話が聞こえてきていた。今、ボク達がいる食堂も例外ではなかった。
「飯はまだなのかよ。全然こねえじゃねえか!」「おいお前、そっちからぶつかってきておいてその態度はどういうこった!」「こんな所、来なければ良かった。死にたくない、死にたくない……」「兵も物資も予定より足りない、どうなっているんだ!」「邪魔だ、どけ、どけ!」「本当に、俺達は勝てるのか……?」
湧き上がり渦巻く負の感情が、ボクの感情を逆なでしていき、やがて――殺意まで抱かせるようになった。
(邪魔になったら、『消す』か――)
ボクはあらゆる感情を一つ一つ『制御』していき、心を冷徹で無機質なものへと変換しようとして――、花野が心配そうな表情で横からボクの顔を覗き込んできた。
「ねえ村上くん、すごく怖い顔になってるよ。貴方が元々『そういう人間』なのも知ってるし、この世界で『そういう力』を手に入れたっていうのもローザから聞いてるけどさ、やっぱり私、クラスメートが良くない方向に変わるの、辛いよ」
彼女はそう言うと悲しそうに俯いてしまった。何を考えているのか可能な限り表情には出さないようにしていたのだが、これからはさらに上手く隠す必要があるようだ。――彼女には悪いが、こんな考えが浮かぶ時点で、ボクもこの世界に来る前より相当歪んできているようだった。
花野のそんな言葉を聞いてからしばらくして、衛兵達に砦の外へ集合するように指示されたので、他の冒険者達や兵士達と共に、砦の北側の、外に出てすぐ近くにある開けた場所に移動した。セルモンド山岳が見下ろしてくるオズウィン砦の西側には、深い堀や木の柵などの障害物が何重にも行く手を阻んでいた。
騒々しい集団の中でじっと辛抱強く状況の変化を待っていると、今回の防衛戦の最高責任者らしき人物が姿を現した。その姿を見てボクは驚いた。
どう見ても身長がボクの腰の高さより少し上くらいまでしかなく、見た目の年齢もまるで小学生のようだった。可愛らしい顔立ちが気の強そうな目つきで台無しになってしまっていた。ただ、重厚な鎧と巨大なハンマーを装備しているのに、歩き方に不自然さがないことから、彼女がかなりの実力者であるのは理解できた。
(あの若さであれだけの高い地位、きっと飛び抜けた才能の持ち主か、もっと幼い頃から厳しい訓練を受けていたんだろうな……!)
ボクがそんなことを考えていると、背後から「ふふっ」と、ローザの小さな笑い声が聞こえた。なんとなく馬鹿にされたような気がしたが、最高責任者の少女が集団の前で演説を始めたので、そちらの方に意識を向けることにした。
次回は11月28日に公開予定です。
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