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第37話 『青い翼』

「ボク達を直接指名の依頼、しかもレウニグスさんから?」


 昼食を済ませて一段落していたところに、先月の暗殺未遂事件の時に、不幸にもポンペオの遺体の第一発見者となってしまった兵士が、今回も顔色を真っ青にして村長の家に一通の手紙を届けに来た。


 手紙にはレウニグスの名前が書かれていた。さらに、手紙のふうに用いられている封蝋の紋章は、議員の身分を証明するものであった。それらをボクと花野、レン、ローザ、ローグマンの全員が確認したところで、ボク達の冒険者チームのリーダーであるローザが、手紙の封を丁寧に切った。手紙には要約するとこのような内容が書かれていた。


『ノースブルク村の南にあるオズウィン砦に、魔物の大軍が攻めてくる予兆がオズウィン砦の付近で見つかった。急ぎオズウィン砦に向かい、防衛に協力してほしい。参加の強制はしないが、北部全域が存亡の危機に直面していることは理解していただきたい』


「魔物の大軍か。しかも予兆を発見したのがオズウィン砦の付近ってことは、セルモンド山岳を根城にしている奴らだろうな」


「ええ、今度こそオズウィン砦を奪取するつもりなんでしょうね」


 レンとローザは手紙の内容に対して表情を硬くした。ローグマンも眉間にしわを寄せて黙り込んでしまった。しかし、ボクと花野は『魔物の大軍』ならなんとかその脅威を理解できたが、『オズウィン砦』と『セルモンド山岳』がどうしてそこまで重要な単語なのか、この世界の知識がまだまだ不足している現状ではいまいち分からなかった。


「ローザ、『オズウィン砦』と『セルモンド山岳』って、そこまで重要な場所なの?」


 ボクがローザに恐る恐る小声でそう聞くと、ローザは部屋の棚の引き出しから紙と羽ペンを取り出し、簡単な地図を描きながら説明し始めた。


「ムラカミくんとハナノさんは、イチノセ村とノースブルク村以外に足を運んだことがないでしょうから、そこから説明するわね。まずノースブルク村は、手紙にも書かれているオズウィン砦、さらに港町ノース・ジブラツィヒと南へ向かう街道で結ばれているの」


「さらにオズウィン砦の東には加工した魔素を使用した穀倉地帯が広がっていて、問題のセルモンド山岳は砦の西に存在する。つまり――」


「オズウィン砦が陥落すれば、港町であるノース・ジブラツィヒを除いた北部全域が孤立してしまう。そう言いたいんですね?」


 北部全域が孤立する。その言葉は、暖かい部屋から冷たい北風が吹き荒れる家の外へ放り出されたかのような衝撃を与えたのだろう。隣に座っている花野は言葉を失っている様子だった。


「――今回の依頼に限っては、チーム全員が参加する必要はないわ。自分には無理だと思ったら、イチノセ村で帰りを待っていてちょうだい」


 ローザはそう言って、同封されていた書類に署名して参加の意思を示すと、書類をテーブルの中央に戻した。しばらくの間、部屋の中を重苦しい沈黙が支配したが、それを破ったのはレンだった。書類を手に取った彼はローザを見てニッと笑った。


「俺も一緒に行くぜ。なんていってもよ、イチノセ村だけじゃなくて北部全域の一大事だからな。俺一人だけ留守番なんてごめんだぜ!」


 レンは走り書きで書類に署名した。ボクもレンが署名し終えたのを確認してから、彼から書類を受け取って署名した。


「レンとローザが行くなら、ボクも一人だけ行かないというわけにはいかないね。ただ、花野さん。君はやっと足がほぼ完治したばかりだから――」


 突然、花野はボクから書類を強引に奪い取って、そのまま書類に羽ペンを走らせた。


「『来ない方が良い』って、言うつもりだったんならそうはいかないわよ。私だって、もう覚悟はできてる」


 彼女の瞳と笑みに迷いはなかった。


 そして、チーム全員の名前が書類に書かれた。――余談ではあるが、手紙は次の言葉で締めくくられていた。


――依頼の内容は以上である。願わくば、良い返事があらんことを。親愛なるイチノセ村の冒険者チーム『青い翼』へ。


次回は10月24日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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― 新着の感想 ―
[良い点] 花野さんが前向きになってくれて良かった!(*´ω`*)
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