第30話 魔の寄生植物(2)
植物の魔法生物が成長してレウニグスの命を奪うまで、残り約二十四時間。それまでに解決できなかった場合、レウニグスは植物の魔法生物に支配され、人々を襲って寄生先を増やす存在となってしまう。魔法生物『パラサイト・リーフ』との戦いの火ぶたが密かに切って落とされた。
そして、この日は別の場所で別の悪い知らせが、ボク達を待ち受けていた。
「『君の足は、完全に元通りにはならない』、か……」
花野が予約していた診察を受け終え、ボクと一緒に病院を出て少し歩いたところで立ち止まり、俯いて右足を見ながらそう呟いた。
「まあ、なんとなく分かってたんだけどさ。お医者さんの言う通り、私の足はもう元通りにはならないんだろうなって」
後ろを振り向いてボクに見せた笑顔は、ただの強がりだ。直感ですぐに分かってしまったが、ボクは唇を噛みしめるしかなかった。強く噛んだせいで、少し血の味がした。
花野は前を向いて何かを振り切ろうとするかのように再び歩き出し、ボクもその背中を慌てて追っていった。
しばらくの間、重苦しい沈黙を保ったまま大通りを歩いていると、軽装備の兵士達が行き交う人々に紛れ込んで、周囲にくまなく目を光らせていた。レウニグスの指示通りに、ポンペオを秘密裏に捕縛する為だろう。――変わらぬ賑やかさの中に、不穏な気配を感じずにはいられなかった。
ボクも『青い鳥』に戻ったら、花野に安全のために留守番をするように言って、待機してくれていたレンと共にポンペオを捜索しなければならない。ローザも事件が発覚してから症状の進行を少しでも遅らせようと、今でも必死になっているはずだ。
――思考を巡らしている内にボクは自然と早足になっていて、気がつけば花野を追い抜きそうになっていた。
徐々にボクが歩くペースを元に戻し始めると、花野があるものを見て再び足を止めた。昨日、ボクと村を観光していた花野が心惹かれた、『ブルーフェアリー』が植えられている中央広場の花壇だった。
「ねえ、なんであそこだけ花が咲いているんだろ。変じゃない?」
確かに花野が見ている先の部分だけ、美しい青い花が咲き誇っている。それ以外の部分はまだ殆ど咲いておらず、一面の緑の中に青い点があるような状態になっていて、明らかにその部分だけが花壇の中で目立っていた。
(あれ。そういえばあの場所は昨日、花野さんが……)
頭の中の片隅に引っかかるものを感じたボクは、脳内の違和感を探し出し、なけなしの知識を総動員させた。そして、この事件を解決できるかもしれない可能性に辿りついた。
「花野さん、今からボクの言うことを試してほしいんだ。聞いてくれるかい?」
花野はボクの必死な言動に最初は戸惑いを見せたが、やがてその戸惑いを強い決意に変えて頷いた。
ボクは辿りついた可能性と、それを実現できるかもしれない方法を伝えると、花野はすぐさま実行に移した。――その結果は、ボクの想像を遥かに超えるものだった。ボクはさらに脳の神経回路の動きを加速させた。
(――いける。花野さんの『加護』に対する、ボクの考えが間違っていなければ、この事件は解決できる!)
事件解決の鍵は今まさに手に入れた。ここからは時間との勝負だ。ボクと花野は急いで『青い鳥』に戻っていった。
次回は7月18日に公開する予定です。
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