第27話 ノースブルク村(5)
レウニグスとの面会の翌朝、メアリーに勧められた『青い鳥』という宿で一夜を過ごしたボク達に、レウニグスから一通の手紙が届いた。
「次の面会は明日の昼過ぎみたいね。それまでは各自、自由に過ごしましょう」
『青い鳥』の食堂に集まっていたボク達は、花野の診察が明後日であるというのもあり、全員がローザの意見に賛成した。ローザは明日の面会の為に、自分の考えや資料を整理しておきたいと言ったので、ボクとレン、そして花野の三人で、ノースブルク村の観光をすることにした。
東西南北の四本の大通りには多種多様な店が軒を連ね、中央広場の花壇にはこの村の特産品である、『ブルーフェアリー』という花が蕾をつけている。
「本当に、綺麗な花ね……」
花野は中央広場の花壇の前に座ると、早めに開花した数輪の内の一輪をじっと見つめ、ふうと白い息を漏らした。
「そういえば、花野さんの実家は花の栽培と卸売りをしていたんだっけ」
「ええ、そうよ。他にも、音楽教室とか学習塾の経営もしていたわ」
ローザのミステリアスな銀髪のショートヘアとは対照的な、茶色がかった派手なロングウェーブの髪が、俯いた花野の顔を隠した。
「私ね、小さい頃から花が好きなの。我が儘や気まぐれに困らされることもあるけど、最後は必ず愛情に応えてくれるから。……人間なんかとは違ってね」
独白のような花野の呟きを聞いて、静かに近寄って側に座ってみたが、それでも花野の表情は、やや傷んだ髪に隠れてしまう。
「ごめんごめん。さすがに暗すぎだよね、こんな話。今のはナシ、忘れて忘れて!」
花野は作り笑いを浮かべながら急いで立ち上がろうとして、途中でバランスを崩して後ろ向きに倒れそうになった。
「きゃっ!?」「おっとっと、危ない!」
地面に後頭部を強く打つ寸前で、ボクは花野を抱きかかえた。怪我をしなくて済んでお互いにほっとしたのも束の間、背後から口笛が聞こえてきた。
ボクはすぐさま後ろを振り向くと、どうやら、口笛の主は大量の買い物袋を持ったレンのようだった。ボクは何故、レンがニヤニヤしているのかを理解できずにいると、花野が熟したトマトのように顔を真っ赤にして癇癪を起こした。レンと一緒に宥めるのに四苦八苦したのは言うまでもない。
しばらくして、花野が落ち着きを取り戻したのを見てから、ボクはレンが持っていた買い物袋の中身を確認した。買い物袋の中身は携帯食や医療品などといった、これから冒険者として活動するのに必要不可欠な物ばかりであった。
次回は6月20日に公開する予定です。
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