第21話 冬山にて(2)
夕方遅くになってようやくボク達は、雪や氷で包んだ今日の狩猟の成果を荷車に乗せて、イチノセ村への帰り道を意気揚々と歩いていた。
イチノセ村を東の方角を除いて、すっぽりと囲むように広がる森林地帯は、魔素が薄く、獲物となる動物も多いことから、狩猟にはうってつけとされている。その証拠に、今日の狩猟でも一度も魔物と遭遇していない。
(魔素の濃度の違いでこんなにも差があるのか……。イチノセの森とは大違いだな……)
「おーい、ムラカミ。村に着いたぞ」
この世界における魔素の存在の大きさを再認識していたボクは、レンの声ではっと我に返ってみると、既に森を抜けていて、イチノセ村を守る木の柵が十数メートル先にあるところまで来ていた。
イチノセ村は防衛力を高めるために、あえて村の東の一つしか門を作っていない。そのせいでかなり出入りが不便だった。……それにしては、魔物の侵入が多い気がしたので、村長のローグマンにそのことを指摘したが、
「村の予算が足りない。今ある設備を維持するだけで精一杯なんだよ」
と、頭を抱えてしまったので、それ以上は何も言えなかった。
「村の防衛力の件だけど、ゴブリンの群れのこともあったし、早く何とかしないといけないね。……ボクの場合は、その前に『証明書』が先だけどさ」
「ああ、そうだな。まぁ、まだまだ手が回りそうにないだろーけどな。あははは……」
そんなことを苦笑交じりで話しつつ、少しの間、木の柵を見ながら一息ついた後、村の東にある門まで荷車を走らせた。
狩猟の成果は魔法で加工され、干し肉として大量の木箱に入れられた後、倉庫の中に貯蔵された。
「お疲れ様、ムラカミくん。これだけあれば十分ね。干し肉の貯蔵はもっと時間がかかると思っていたから、本当に驚いたわ」
ローザは倉庫の中で山積みになった木箱を眺めながら、驚きつつも上機嫌でボクを称賛した。
「加護のおかげだよ。加護がなかったら、何も出来なかっただろうしね」
事実としてボクは、一週間前から狩猟を始めているというのに、狩猟から解体作業まで出来るようになったのは今日が初めてだからだ。
それまでは、嫌悪感と罪悪感で解体作業などとても出来なかった。少しばかり狩猟に慣れてきたのもあって、今日になってようやく、『完全感情制御』を使えばなんとか出来るようになったばかりなのだ。
ローザがボクに何か言いたげに口を開きかけたが、すぐに視線を彷徨わせながら閉じてしまった。
その様子を見て、未だ埋まり切っていない、心の溝のようなものをどうしても感じてしまうのだった。
次回は4月18日に公開する予定です。
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