表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/76

第56話:転生王子、帝国に向かう

 アルバティス王国でニコラスがようやく衝撃から立ち直れた頃、ネオンの元に帝国の夢幻鳥が訪れた。

 初めて見たときは驚きでいっぱいだったが、今はもう落ち着いたものである。

 むしろ、幻橙龍であるグランフィードを見た夢幻鳥の方が驚いたと言える。


『ほぅ、夢幻鳥とは珍しいではないか。我も久し振りに会ったな。いやはや、美しい羽羨ましい限りだ』

『コァッ!?(幻橙龍大先生!?)』


 二匹に面識はないものの、夢幻鳥にとっても幻橙龍は珍しい存在なのだ。

 彼の震える脚から文書を受け取ったネオンは、ブリジットと一緒に封を開く。

 獅子を模した特徴的な封蝋と首輪から、差出人はエルストメルガ帝国の皇帝だとわかった。


「グリゴリーさんから僕に手紙かぁ、今度は何だろう」

「あの娘のラブレターだったら燃やしますからね」

「ブリジット!」


 手紙の内容は「大量繁殖している呪念花の駆除を頼みたい」という内容だった。

 呪いを振りまく花の存在はネオンやブリジットたちも知っており、アルバティス王国でも時たま問題となっていた。

 文書を読む限り、相当大きな規模で繁殖しているらしい。


「……なるほど、帝国は大変な状態なのか。呪念花なんて久しぶりに聞いたよ」

「地域性の強い花ですから、アルバティス王国とはまた違った植生かもしれませんね」

「急いで助けに行こう」


 満場一致で支援に向かうことが決まり、ネオンとブリジットは同行するメンバーを考える。

「何人で行こうかな、あまり大人数で行っても迷惑だろうし……」

「私は絶対に同行いたします。あの娘がネオン様にちょっかいを出さないとも限らないので」

『ぼくは小さいから迷惑にならないウニよ』

「そうだね、オモチは一緒に行こうか。もちろん、ブリジットもね」


 二人決まり、オモチを撫でているとルイザがこちらに進み出た。


「帝国なら、あたしもついていくよ。土地勘もあるしな」

「ルイザさんがいるならより安心できます。ついでに、難民の件も相談できますしね」

「……難民? 何のことだ?」


 ルイザの疑問そうな表情に、ネオンもまた不思議そうな顔となる。


「え……? いや、ルイザさんたちはエルストメルガ帝国の難民じゃないですか。グリゴリーさんに改めて色々と相談した方が……」

「あ、ああ! そうだった! あたしは難民団の代表として、皇帝陛下に直談判したかったんだよ! この前お会いしたときも話したけど、もっと詳しい話をな! あははっ!」


 飛び地での生活がのんびりし過ぎて、ルイザはすっかり自分がスパイなことを忘れており、仲間の領民から激しい咳払いの洗礼を受けた。

 ブリジットが「まるで、本当は難民じゃないみたいですね……怪しい」と怪しむ中、何はともあれメンバーが決まる。

 遠い帝国までどのような経路で行くべきか相談すると、グランフィードが連れて行くと話してくれた。


『それならば、我が乗せて行こう。もうずいぶんと空を飛んでいないから、そろそろ飛びたいところだったのだ。……さて、夢幻鳥よ。お主は帝国からどのくらい時間がかかったかな?』

『コ、コアアッ!(じ、自分は一日半で参りましたです!)』

『ふむ、だったら小一時間も飛べば着きそうだ』

『コルゥ……(さすがです、幻橙龍大先生……)』


 ネオンがしばらく領地を留守にするとみなに伝えると、ジャンヌが警備を願い出た。


『留守番は妾に任せておけ。留守番大好きじゃ』

「この人がぐうたらしないよう、どうぞ皆様目を光らせていてくださいませ。私とネオン様がいないとき、何をしでかすかわかりませんからね」

『こ、こらー、妾は地底エルフの長じゃぞ! もっと丁重に扱うんじゃ!』


 ブリジットが釘を刺すと、地団駄を踏んで怒るジャンヌに対して周りの領民たちは深く頷く。

 実際のところ、ジャンヌが一番ぐうたらしているのだった。

 神器は現地で生成することになり、ネオンたちは旅支度を整える。

 といっても、グランフィードは一時間程度で着けるとのことなので、それほど大きな荷物にはならなかった。

 ネオンは遠征メンバーの前で号令をかける。


「……じゃあ、みんな、忘れ物はないですか?」

「ええ、ネオン様のグッズは各種揃えております」

「あたしも自分の分は用意してある」

『ぼくもちゃんとおやつ持ったウニ』


 ――全然遠征って感じがしないね……。

 

 少々拍子抜けしたものの、領地らしいとも思うネオンだった。


「それじゃあ、グランフィードさん、お願いします」

『任せておけ、ネオン・アルバティス。お主らは責任を持って無事に届ける』


 わずかひと羽ばたきで、数十mも高く飛び上がる。

 眼下では、ベネロープとキアラたちも手を振ってくれていた。


「気をつけて行っておいでー! 留守はボクたちに任せてくれたまえー!」

「あまり無理はしないようにお願いしますねー!」

『お土産に呪念花の種ゲットしてきてくれラビー!』

『余裕があったら、帝国の水源を全て飛び地と同じ水質に変えてきてくださいー!』


 グランフィードは夢幻鳥を頭に乗せ、颯爽と飛ぶ。


『では、夢幻鳥よ、道案内を頼む』

『コルル!(全力で案内いたします! 幻橙龍大先生の頭に乗れるなんて光栄でございます!)』


 ネオン一行は風を切り、エルストメルガ帝国の宮殿へとひた向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ