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第53話:グランフィードの心情

 グランフィードは数日も経たぬうちに、すっかりネオンの領地に溶け込んだ。

 幻橙龍という珍しい魔物が来たことにみなはたいそう喜び、グランフィードもまた毎日が嬉しい。


『……妾はなぁ、今まで幻橙龍に九回も会ったことがあるんじゃぞ。此奴で記念すべき十回目じゃ。どうじゃ、すごいじゃろう。長命な地底エルフの中でも、妾ほど幻橙龍に会った者はいないじゃろうなぁ、ぐわははは』

『これで三十四回同じ話しているウニ。聞き過ぎて耳にウニができそうウニよ』


 ジャンヌは大昔に他の幻橙龍と出会ったことがあり、事ある毎に他の領民にマウントを取っては呆れられていた。


『……どうしても、逆鱗売ってくれないラビか?』

『剥がしたら死んでしまうのでな』


 ティアナはグランフィードの逆鱗が欲しいとしつこく交渉を重ねたが、生え替わりの鱗を渡すことで話がまとまった。

 幻橙龍の鱗は世界的にも極めて貴重な素材であり、大儲け間違いなしだとほくそ笑む日々だ。


(地下に閉じ込められている頃からは、とても考えられぬ毎日だ……)


 およそ数千年もの間を一人で過ごすのは、たしかに辛かった。

 この龍生で最も辛く、そして悲しい時間だったことは間違いない。

 だが、それもネオンに会うためだったと考えれば、途端に苦しみが和らいだ。

 出会いに感謝していると、当のネオンとブリジットがこちらに来た。


「……あの。グランフィードさん、ジャンヌさんやティアナさんが失礼なことを言っていませんか?」

「ご希望とあらばきつく叱っておきますが」

『別に失礼などではない。むしろ……楽しいな』


 グランフィードは活気溢れる領地を見ながら、温かい気持ちで胸が満たされる。

 ここには自分の居場所があって、一瞬一秒がとても楽しい。


(我はネオン・アルバティスの仲間になれて、本当に幸せだ)

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