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第28話:リロイの心情

『……というわけで、"捨てられ飛び地"のネオン殿ちゃんさん君様が、私たちウンディーネの移住を認めてくださいました! もうアルバティス王からの不当な圧力に苦しむこともないのです!』

『『ネオン殿ちゃんさん君様ー、ばんざーい!』』


 リロイがウンディーネたちにネオンとの一件を話すと、集落は大歓声に包まれた。

 みな、顔も知らぬネオンに感謝の声を上げる。


 アルバティス王から王国に住む対価として要求されたのは、聖水の大量生産。

 先代からは居住の対価など要求されなかったし、王国とも良好な関係が築けていると思っていた。


(ネオン殿ちゃんさん君様に出会えなかったら、今頃私たちはどうなっていたかわかりません)


 清純な水源地は限られているし、王国内で居場所を変えても対価は求められる。

 そこで、リロイは王国外に安寧の地を求めた。

 ウンディーネという立場では奴隷狩りなどの危険もあったが、それ以上に一族が優先だった。

 方々を探すも定住地となり得る土地は見つからない。

 行き詰まったリロイは、最後の希望をかけて"捨てられ飛び地"に入った。

 土が瘴気に汚染されていても、川が無事なら最悪どうにかなると……。

 

 ところが、飛び地の瘴気は予想以上に質が悪かった。

 放浪するうちにダメージが蓄積し、リロイは死を覚悟した。

 もうダメだと思ったとき、ネオンが敷設した巨大な水路を見つけたのだ。

 中に入った瞬間、全身があっという間に回復した。


(飛び地のお水は本当に素晴らしかった。あの、神域の水よりも……)

 

 大陸全土で普及している"メサイア聖教"の、超上級以上の聖職者しか入れないとされる神の土地。

 その土地で採れた水を、リロイは幼少期に一度だけ飲んだことがある。


(飛び地の……ネオン殿ちゃんさん君様が浄化したお水は、それよりも遥か上だった)


 あれだけの水と触れ合えるなど、まさしくウンディーネ冥利に尽きる。

 これから毎日でも飲んだり浸かったりできると思うと、嬉しくてしょうがなかった。

 現実に戻ったリロイは、一族に宣言する。


『……それでは、みなさん。我らが新天地、"捨てられ飛び地"に行きましょう! 私たちが住むべきは、ネオン殿ちゃんさん君様の隣なのです!』

『『おおおー!』』


(ネオン殿ちゃんさん君様……あなたにまた会える日が待ち遠しいです)


 リロイはウンディーネとともに、新たな安寧の地たる"捨てられ飛び地"を目指す。

 彼女たちの心にあるのは、明るい未来への期待、ただそれだけだった。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


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