第14話:転生王子、スパイを助ける
「あ、頭を上げとくれ……! 何もあんたが謝る必要はないだろ!」
「いえ、そういうわけにはいきません。ルイザさんが苦しんだのも、全ては僕の責任なんです」
慌てて話すルイザに対して、ネオンは頭を下げ続ける。
――僕のスキルで領民を苦しめてしまうなんて……!
状況を考えると、ネオンに非はない。
だが、事前にもっと詳しく説明しておけばよかった……と、ネオンは悔やむばかりだった。 ブリジットは主が硬く拳を震わせ俯くのを見て、ルイザに問う。
「……なぜ、ネオン様の言いつけを破り、神器を勝手に持ち出したのですか? あれだけ気をつけなさいと仰っていたのに……」
射殺すほどの鋭い瞳で見られ、ルイザは心中で思案する。
(くっ……正直に言うか……? ……いや、ダメだ。まだスパイだと明かすわけにはいかない。任務が……)
腰の剣に手が伸びるのを見たとき、大慌てで弁明した。
「こ、この辺りの土を耕そうと思ったんだ。ネオンはいつもあたしたちのために頑張ってくれているから、少しでも恩を返したいというか、負担を減らしたかったんだよ」
たどたどしい答えを聞いた瞬間、ブリジットの視線は一段と厳しくなった。
「こんな深夜にこんな場所を一人で……? ……怪しい」
「まぁまぁ、それだけやる気を持ってくれていたってことだから」
ギクリ……と微妙に動いたルイザに気づかず、ネオンはブリジットを宥める。
「まったく、ネオン様は優しすぎます」
「そうかなぁ……あの、ルイザさん」
「な、なんだ……?」
ネオンは真剣な表情に変わると、ルイザに伝えた。
「お気持ちは嬉しいですが、無茶だけはしないでくださいね。開拓を手伝ってほしいとは言いましたが、休むときはしっかり休んでほしいんです。もし、プレッシャーを与えてしまっていたらすみませんでした」
「……いや、あたしの方こそすまなかった」
雲間から月明かりが差し込み、微笑み合う二人を照らす。
「じゃあ、そろそろお家に帰りましょうか。夜はまだ冷えます。ずっとこんなところにいては風邪をひいてしまいますから」
「ああ、そうだな、帰ろう」
「ネオン様の優しさに心から感謝してくださいね」
ネオンは鍬を持ったブリジットと歩き出すが、ルイザは一歩を踏み出せなかった。
月明かりに照らされたその小さな背中を見ながら、彼女は表情が曇る。
先ほどの弁明は半分嘘で、もう半分は本心だった。
謝るべきは自分であり、この場で追放されてもおかしくなかっただろう。
それなのに、逆に謝られてしまった。
ネオンの優しくて大きな器を持った人柄は、ルイザの心に確かな気持ちを芽生えさせた。
(……あたし、ネオンが好きだ)
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