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第12話:スパイのお茶会1

 ある日の昼過ぎ。

 領地の一角で、お茶会を開いている人物がいた。

 ルイザ、ベネロープ、キアラの三人だ。

 出会ってすぐ意気投合した彼女たちは、親睦をより深めるためお茶会を開いたのだ。

 ルイザがティーポットとカップを片手持ちで運んできた。


「お~い、茶が湧いたぞ~」

「ありがとう、ルイザ君。ちょうどお菓子が焼けたところさ」

「わたくしがナイフで切り分けますわ」


 テーブルに並ぶは、畑で採れた茶葉を湧かしたネオン茶(ブリジット命名)と、野菜や果物で作った菓子だ。

 お茶会を始めるにあたって自然と役割分担し、とても豪華なアフタヌーン・ティーとなっていた。

 今回はルイザが代表してカップを掲げる。


「それじゃあ、あたしらの親睦を祈願して……ティータイムといこう!」

「「仲良くしましょう!」」


 一緒にネオン茶を飲むと、思わずはぁぁ~とため息をついた。

 紅茶より渋みが少なく、まろやかな口当たりがおいしい。

 ベネロープの作ったお菓子を食べると、ルイザもキアラも目を見開いた。

 

「うまい! 生地がめっちゃサクサクだ!」

「控えめな甘さが上品ですね! お料理がお上手で羨ましいです!」

「ありがとう。お菓子作りはボクの数少ない趣味なのさ」


 笑顔の三人は話しながら思う。


(なんか、こいつらとは妙に気が合うんだよなぁ)

(この二人とは仲良くなれそうな気がする)

(親近感を覚えるのはなぜでしょうか)


 スパイ同士なのだから、当然と言えば当然である。

 茶を飲みながら話していたら、自然とネオンの話題に移り変わった。

 ルイザはカップを置くと、やや得意げな表情で話す。


「それにしても、ネオンは立派な領主だな。最近、二人っきりで話すことが多いんだが、話せば話すほど人徳あふれた人間だとわかるぜ」


 鋤の一件以来、話す機会が増えたのは事実である。

 ネオンの隣にはブリジットが常にいるので、二人っきりというのには語弊があったが……。 ルイザの話を聞き、ベネロープとキアラはピクリと顔が険しくなった。


「……ふ~ん、よかったじゃないか。まぁ、ボクもネオン君と話す機会が増えているけどね。ついさっきも領地開拓について意見を交わしたところさ」

「それを言うなら、わたくしだって今朝ネオンさんと挨拶いたしましたわ。おはようって言ってくださいました」


 三人はネオンとの関係について、さりげなくも歴とした牽制を始める。


(あたしが一番……)

(ボクが一番……)

(わたくしが一番……)


((仲良くなる!))


 本国のために、そして自分のために……。

 論争が白熱し始めたとき、渦中のネオンがブリジットと一緒にやってきた。

 自分たちに気づくと、お~いと手を振ってこちらに来る。

 

「皆さん、仲がよろしいんですね~。うわぁ、おいしそうなお菓子~」

「ネオン!」

「ネオン君!」

「ネオンさん!」


 我先にと駆け寄るが、ずいっ……と何者かに阻まれた。

 ……ブリジットだ。


「こらっ、休憩時間はもう終わりですよ。さっさと働きなさい。働かない者に住む場所はありませんからね」

「「……ぐぎぎ」」

「まぁまぁ、領地もだいぶ発展してきたんだし、のんびり楽しく暮らそうよ」

「まったく、ネオン様は優しすぎます。甘やかすともっとティータイムしかねません」

 

 ブリジットからネオンの近くに寄りすぎないよう追加の注意をもらい、午後のお茶会はお開きとなった。

 時間としてもちょうどいい。

 ルイザ、ベネロープ、キアラは席を立ち、仕事の準備を進める。


「さて、今日も頑張ろうぜ」

「そうだね。一日一日を大切に過ごそう」

「領地の発展はやりがいのある仕事です」


 簡単な挨拶を交わし、それぞれの領民(部下)の元へと向かう。


((難民だなんて……大変だなぁ~))


 三人は互いにスパイ同士だと気づかぬまま、今日も領地開拓に精を出す。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


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