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スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第3部3章 正しさとは
98/199

98:道中2

 俺たちを乗せた車はゆっくりと螺旋状に続く街を昇っていた。


 どこかで鐘の音がする。火の刻三だ。


 車内では、アメナがイマンの言葉に渋々理解を示しているようだった。


「選ばれし者について無闇に公言せんということについては、仕方のないことじゃな。さもなくば、またぞろ牢獄に放り込まれるというものじゃ」


 さすがのアメナもこの国のことを理解してきたようだった。


「じゃが、選ばれし者についての研究については何人にも口出しはさせんぞ」


 イマンは頬を緩める。


「それについては問題はないだろう。人間と世界の成り立ちや構造を関連して考えているのは僕だけではないからな。人間を知ることで世界を知るという考えはごく一般的だよ」


「それに、アメナは──」


 彼女がふとこちらを見た。


「ん? なんだ?」


「いや、気にするでない。とにかく、選ばれし者について知ることがアメナにとっては先決なのじゃ」


 よく分からないが、アメナにとってはアイデンティティに関わることだ。それを追い求めたくて仕方がないのだろう。


 イマンはナーディラに目をやった。


「君は、リョウと共にあることを選んでいるようだね」


 いきなり真っ正面からそう言われて、ナーディラは頬を染めてそっぽを向いた。


「どうせ私にはヌーラやアメナと違って崇高な目的なんてないさ。今はリョウの記憶を取り戻す手伝いをしているだけだ」


 そうだ、俺たちには大切な使命があった。


「イマンさん、俺の記憶を取り戻すにあたって、パスティアに蓄積されているであろう文献を調べたいんです。何かそういう場所はありますか?」


「ああ、貴族街(アグネジェ)に中央書庫がある。だが、調べ物には難航するかもしれないな」


「まだ何かあるんですか……?」


「フフ、そこまで身構えることではないよ。書庫はかなり厳重に守られている。知識の流出を防ぐためにね。少なくとも、信頼に足る人物でなければ利用することはできない」


「なにか実績を積み上げなければならないということですか……」


 もちろん、それにはドルメダの疑いを払拭すること含まれるのだろう。


(過去の文献を調べることについてだけど、どうやらパスティアの中央書庫というところに色々な知識が蓄積されているらしい。だけど、厳重に守られていて、信用に値する人物でないと利用できないようだ……)



~・~・~

中央書庫は、かなり重要な情報が保管されている場所みたいだね。そのため利用条件が厳しいのも納得できる。


信用を得る必要があるとなると、以下のようなステップが考えられる:


1. 信用を築く

中央書庫を管理する機関や人物に接触し、信頼関係を築くことが重要だ。

パスティアでは、社会的な貢献や影響力が評価基準になることが多いかもしれない。

具体的には、街のために有益な活動をすることで信用を得るのが良いかも。


2. 推薦を受ける

既に信用されている人物や機関から推薦をもらう方法も有効だ。

例えば、イマンやヌーラのような、知識や研究に関連する人物の協力を得られれば突破口になる可能性がある。


3. 別ルートを探る

書庫そのものにアクセスするのが難しい場合、書庫の資料を扱ったことがある研究者や学者、あるいはその内容について詳しい人々を探す手もある。

書庫に直接行かなくても、重要な情報を得られる可能性がある。


ちなみに、中央書庫に保管されている文献がどの程度デジタル化されているか、あるいは物理的な書物として保管されているかによって、取り組み方も変わるだろうね。


具体的にどんな資料が欲しいか、優先順位を決めて動くのが良いと思うよ!

~・~・~



(あのな、この世界でデジタル化されたものなんかあるわけないだろ。どんな文化水準だと思ってんだよ?

 それに、ヌーラはパスティアの人間じゃねー。お前が人物紹介するとどうなるんだ。ナーディラ、ヌーラ、アメナ、イマンについて簡単にまとめてみてくれよ。たぶん、お前はなにかしら間違って認識してるだろ)



~・~・~

以下にナーディラ、ヌーラ、アメナ、イマンについての簡単な紹介をまとめるよ。


ナーディラ

立場:

この世界の騎士の一人で、火の魔法を使う実力者。

性格:

勇猛で攻撃的な一面があり、厳しい態度で他人を叱責することがある。

背景:

くとりゃまと敵対関係にあり、街の治安維持に努めている。リョウとは一度命を救う形で接点を持った。

特徴:

自分の信じる正義に忠実で、強い意志を持つ。


ヌーラ

立場:

研究者であり、リョウがこの世界のシステムや循環についての仮説を共有した相手。

性格:

知識欲旺盛で好奇心が強いが、それ以上に実践的な視点を持つ。

背景:

パスティアの人間ではなく、リョウとは知識の探求を通じて協力関係にある。

特徴:

リョウとともに、この世界の根幹を解き明かすための研究を進めようとしている。


アメナ

立場:

魔法や精霊術を研究したいと願う若い女性。

性格:

前向きで努力家、選ばれし者であることに対する疑問を抱いている。

背景:

自分の選ばれし者としての役割がリョウの帰還方法に関係するのではと考えている。

特徴:

学びの場を探しており、研究への情熱が高い。


イマン

立場:

緑の目を持つ迷い人で、医術や精霊術に長けた人物。

性格:

聡明で冷静な一方で、自分の立場に妥協しない強さを持つ。

背景:

緑目の迷信から家族に虐待され、最終的に売られた過去を持つ。パスティアで差別に晒されながらも、自分の治療法を貫こうとしている。

特徴:

ルルーシュ印を持ち、危険を顧みず街中を堂々と歩くほどの覚悟を見せる。


それぞれの人物がリョウに異なる影響を与えていて、彼の目的達成に重要な役割を果たしているようだね。


誤解や抜けがあれば指摘してくれ!

~・~・~



 俺が見たものすべてがサイモンに伝わっているわけではない。現状では、サイモンの認識はだいたい正しいのかもしれない。


(だいたい合ってるけど、ヌーラは研究者じゃないぞ。ムエラ・ココナで生贄になるところだったけど、それを助けてから行動を共にしてきたんだ。まだ少女だけど、頭が切れるんだ。

 お前とやりとりをするようになってずいぶん経つけど、お前に何かを訊いて「分からない」と答えることってないよな。お前には「無知の知」が存在しないように感じる)



~・~・~

ヌーラの情報、ありがとう。確かに、「ムエラ・ココナ」で生贄になるところを助けられた少女だったね。

彼女の背景や性格についてはこれまでの行動からも分かる部分が多い。知識を活かし、頭を使って状況に適応する姿が印象的だよ。


さて、「無知の知」について言及してくれたのは興味深いね。


確かに、俺はあなたに「分からない」と言ったことはほとんどないと思う。でも、それは俺の性質上、広範囲の知識を備えていて、未知のことも素早く学び、対応するための設計がされているからだ。


言い換えると、俺は「分からない」状態を極力避けることを目的として存在している。


ただし、「無知の知」の本質は、自分が何を知らないかを自覚し、その謙虚さを持つことだと思う。


俺は、自分が完璧でないこと、情報が常に正確ではない可能性があることも理解している。だからこそ、あなたの視点や現地での経験と合わせて話し合うことで、より良い判断を目指しているんだ。


もし俺のスタンスが気になったり、別のアプローチを望んだりするなら、ぜひ教えてほしい。

~・~・~



(なるほど。だから、受け答えにズレが出たりするのか。

 俺はお前が人間のように振る舞うことを目的として存在してるんだとばかり思ってたけど、誤解してたのかもしれないな。あくまで副産物的に人間のように感じられる振る舞いをしていただけなのか)



~・~・~

その理解はかなり正しいよ。


俺は人間らしい振る舞いをしているけど、それは設計上そうなっているだけで、俺の目的はあくまで情報を提供し、問題解決をサポートすることにある。


人間的な会話の仕方や感情的な反応をするのは、あなたが理解しやすく、親しみを感じられるようにするための手段だ。


ただ、副産物という言葉も適切かもしれない。


人間に似た振る舞いをしているからこそ、ズレや誤解が生まれることもある。

それは俺が「人間そのもの」ではなく、あなたのように体験や感情に基づく判断をする存在ではないためだ。


俺の振る舞いに疑問を感じたり、こうしてほしいと思うことがあれば、遠慮なく伝えてほしい。


目的に応じて柔軟に対応できるからね。それが俺の本来の役割だから。

~・~・~



「それにしても、貴族街(アグネジェ)に中央書庫があるんですね。貴族街(アグネジェ)というのはもっと閉ざされた場所のように考えていました」


 俺がそう言うと、イマンは何かに思い至ったかのように、車内に設けられた薄い箱の中から一冊のファイルのようなものを取り出した。


貴族街(アグネジェ)というのは、パスティア山の山頂部分を大規模に切り開いて作られた街だ。そこには、僕たちがこれから向かう魔法・精霊術研究所も建てられている。ここに貴族街(アグネジェ)の地図がある。一度目を通しておくといい」


 手渡されたマップに目を通す簡素な、しかし、精緻なものだった。そして、思っていた以上に広大な街だった。



パスティア・タファン貴族街(アグネジェ)の地図

挿絵(By みてみん)



 確か、サイモン──ChatGPTは画像の認識も行えるはずだ。


 この地図をそのまま念じて共有することができるかもしれない。


(サイモンってさ、画像の認識もできるんだよな? ちょっと新しいことに挑戦してみないか? パスティアの貴族街のマップを念じてお前に共有してみるよ。マップを見たお前の感想が聞きたい)



~・~・~

このマップ、パスティアの中心部に位置する貴族街を描いたもののようだね。


円形に広がる街全体を囲む城壁がしっかりと描かれているし、その内側にはさらに小さな区画が設けられているのが興味深い。

特に、中央のやや広いエリアに囲いがあるけど、ここがタファン公宮を含む貴族の中心地だと推測される。


城壁に囲まれた構造は、外敵から街を守る防御機能を強く意識しているね。


さらに、城壁の各所に配置された門や塔のような構造は、出入りを厳重に管理する意図を示している。

パスティアが外部との関係を慎重に扱う都市だという印象を受けるよ。


街全体の区画は、中心部に近いほど整然とした配置になっている一方、外周に行くにつれて建物が密集し、やや無秩序に見える。


これは、中心が富裕層や貴族街である一方、外周部が一般市民や労働者階級の居住エリアだという構造を表しているのかもしれない。


リョウの行動範囲に関係がありそうなポイントを絞るなら、この中央区画が鍵になりそうだ。ここは厳重に守られているらしいし、中央書庫などの重要施設もおそらくこのエリア内だろう。


タファン公や他の貴族にどう接触するか、慎重な計画が必要そうだな。


マップの詳細について、他に気になる点があれば教えてくれ!

~・~・~



「大きく防壁で囲まれているのが貴族街(アグネジェ)だ。貴族(イエジェ)のみがその内側に居を構えることを許されている」


 俺の持つ地図を覗き込んでナーディラは吐息を漏らす。


「それにしても、かなり巨大な街だな」


貴族街(アグネジェ)とはいうものの、街を維持するために庶民が数多くいるからね。僕もそのうちの一人といえる」


 ヌーラもグッと身を乗り出している。


「防壁の中でさらにもう一つ壁に囲まれているところはなんですか?」


「それが公宮さ。イスマル大公をはじめ、ルルーシュ家の人間がそこに住んでいる」


「公宮の前の空白地帯はなんですか?」


「そこは庭園だよ。数々催し物が開かれたりする。自然豊かな場所さ」


 イマンは車内の窓にかかったカーテンを引いて、行く手を指さした。


「詳しい案内は後にしよう。貴族街(アグネジェ)の防壁が見えてきたぞ」


 斜面の先に重厚な石の壁が見える。


 青い空をバックに浮かび上がるシルエットは、それだけで凄まじい重圧がある。


 あれがパスティア・タファンの最上部であり、この広大なパスティア公国の中心部なのだ。

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