72:皮肉な展開
訳の分からない疑いをかけられて、混乱していた。
騎士たちが部屋にゾロゾロと入って来て、俺たちを取り囲む。
「なんの真似だ?」
ナーディラは臨戦態勢だが、こちらは圧倒的に分が悪い。
レイスは俺たちを順番に睨みつける。
「鍵を持っているのは誰だ?」
──鍵だと?
一瞬だけ反応したのか、ヌーラの視線を追ったレイスが椅子に座っている俺の前に立つ。逞しい身体に、綿の入っているような黒い上着に身を包んだ男に見下ろされると威圧感で息苦しくなる。
「大人しく渡せば手荒なことはしない」
(サイモン、ヤセルの件はどうにかなりそうだったんだが、今はパスティア・ウェモンの騎士を統括するレイスという男と対面してる。そいつらが俺たちをいきなり取り囲んできた。「鍵を渡せ」と言ってきているんだ)
~・~・~
状況が緊迫しているな。
ここで何よりも大事なのは、冷静さを保つことだ。
以下のように対応してみるといい:
1. 話し合いを試みる
「鍵を渡せ」と言っているが、それが何を意味するのか探る必要がある。
鍵の重要性や理由を彼らから引き出すような質問をしてみよう。
たとえば、「なぜこの鍵が必要なのか?」「この鍵が開ける先には何があるのか?」といった問いを投げかける。
2. 安全確保を優先
レイスたちの目的が明確になるまで、周囲の仲間と共に警戒を続ける。
相手が武器を持っている可能性がある場合、無闇に挑発しないほうがいい。
3. 相手の目的を利用
仮にその鍵が本当に重要だとして、相手が何かを必要としているなら、それを交渉材料にできる。
鍵を渡すことで自分たちが不利な状況に陥らないよう慎重に進める。
4. 力を示さない限り対立しない
レイスが騎士団を統括している以上、こちらが下手に攻撃的になれば逆に不利な立場に立たされる可能性が高い。
もし戦闘を避けられない場合でも、素早く退路を確保できる準備を整えること。
具体的なやり取りがあれば、また指示を出せるように教えてくれ!
~・~・~
「なぜ俺が鍵を持っていると?」
レイスは怪訝そうな顔を向けてきた。
「お前たちが自分で聞いて回っていたんだろう。その鍵に合う扉や箱に覚えはあるか、と」
ナーディラと視線がぶつかる。
彼女は新しい街に辿り着くたびに、俺がこの世界で目覚めた時に持っていた鍵の情報を聞き回ってくれていた。もちろん、この街でも。
迂闊だった。
ココナ山の麓にあったパスティア管轄の案内所で、そこにいた案内係の男に鍵のことを聞いた時、怪しげな反応を受けたことを思い出したのだ。
ナーディラが申し訳なさそうに眉尻を下げている。
お前は悪くない、と首を振り返してやる。
レイスに尋ねる。
「なぜこの鍵が必要なんですか?」
「決まっているだろう。ドルメダの根城を明らかにするためだ」
「ドルメダとは?」
レイスは騎士たちに笑いかけた。
「おかしなことを言う。それとも、白を切るつもりなのか?」
「本当に知らないんです」
「お前たちはそうやって我々を欺く人間だ」
(レイスは俺たちを「ドルメダ」だと言っている。話し振りからすると、パスティアと敵対している国なのか組織なのか、とにかくそんなような感じっぽい。
俺がこの世界で目覚めた時にすでに持っていた鍵がそのドルメダの根城に繋がっているらしい。鍵を渡すべきか?)
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鍵を渡すべきかどうかは慎重に判断する必要がある。
以下の観点から考えてみてくれ:
1. 鍵の意味とリスクの把握
レイスが「ドルメダ」と呼んでいる存在と敵対している場合、その鍵を渡すことでパスティア側が有利になる可能性がある。
一方で、鍵が開ける場所や物が何かを知らずに渡すと、逆に状況を悪化させるリスクがある。
2. レイスの信頼性
レイスたちがパスティア騎士団の統括であることから、公的な立場にあるとはいえ、彼らの目的が本当に正当なものかどうかは不明。
彼らが何の根拠もなくこちらを「ドルメダ」扱いしているなら、疑念を持つ理由になる。
3. 戦略的選択肢
情報を引き出す:
「鍵を渡す前に、そのドルメダの場所や鍵の重要性を知る必要がある」と主張し、交渉を試みる。
一時的な譲歩:
鍵を渡すふりをして時間を稼ぐか、別の手段で情報を集める。
拒否するリスク:
鍵を渡さない場合、彼らがどの程度強硬に出るか予測する必要がある。
最悪の場合、戦闘になる可能性も視野に入れる。
提案
1. 鍵の重要性を質問:
なぜその鍵がドルメダと結びついているのかを聞く。
具体的な答えを得られるかがポイント。
2. 鍵を渡す条件を提示:
「自分たちがドルメダでない証拠がある」ことを示しつつ、鍵を渡す前に明確な情報や保障を求める。
3. 他の関係者の確認:
もしパスティアの中で他に信頼できる人物がいるなら、彼らにも相談を。
慎重に進めてくれ!何か進展があれば教えてほしい。
~・~・~
──ここは正直に話をするしかない。
「俺たちはドルメダではありません。この鍵も、知らないうちに持っていたんです」
レイスの腕が伸びてきて、俺の胸倉を掴む。
ヌーラが叫んだ。
「本当なんです! リョウさんは森で倒れていたところをナーディラさんたちに助けられたんです。それ以前の記憶がないんです!」
レイスがヌーラを目だけで射殺すほどの眼力を見せつける。
「謀るな。次はお前を殺してでも渡してもらうが、どうする?」
「わ、分かりました……! 鍵は渡します」
ナーディラが声を飛ばす。
「リョウ、それはお前の記憶を取り戻すための唯一の手掛かりなんだぞ!」
「分かってる。だけど、死んだら元も子もないだろ」
俺は首から下げていた鍵をレイスに渡すことにした。
(鍵を渡さなければ殺すとレイスに言われて、渡さざるを得なかった……)
~・~・~
それは厳しい状況だったね……。
生き延びるために鍵を渡すという選択は仕方なかったと思う。これ以上危険が及ぶ前に、冷静に次の行動を考える必要がある。
次にできること
1. 鍵の行方を追う
鍵が渡ったことで、レイスたちが何を次に行おうとしているのかを観察する。
可能であれば、彼らの行動や目的地を把握しておくべきだ。
2. ドルメダについての情報を集める
「ドルメダ」が一体何なのか、なぜその鍵が重要なのかを調べる。
街の情報通や、信頼できる人物(例えばヌーラ)に相談してみるのも手だ。
3. 他の備えをする
味方を増やす:
危険な状況に備えて、頼れる人物や同調者を探す。
カリムやヌーラのような仲間を活用。
装備や物資を整える:
万が一、彼らが再び敵対してきた場合に備えて準備を進める。
4. パスティア内部の動向に注意
鍵が渡ったことで、パスティア騎士団やルルーシュ家の動きがどう変化するのかを注視。
レイスが直接行動を起こす場合、周辺地域にも影響が出る可能性が高い。
命を守るための判断は尊いものだ。これを失敗と思わず、次に進むための選択だったと捉えよう。
今後どうするか、一緒に考えよう。
~・~・~
「この者たちを監獄へ。準備が整い次第、尋問を開始する」
無理矢理立ち上がらされる。ナーディラが向こうで声を上げている。
「何をしやがるんだ!」
「ナーディラ、ここは逆らったらマズい。頼むから暴れないでくれ」
俺がじっと見つめて訴えると、ナーディラは舌打ちをして、騎士たちに従うお振りを見せる。
(状況は想像以上に良くない。俺とナーディラとヌーラ、アメナ、みんな拘束されてしまった。
レイスは俺たちを監獄に連れて行く気だ。準備が整い次第尋問を開始するとも言っている。今は大人しく従うしかない……)
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状況が深刻だな、リョウ。でも今、下手に抵抗するより、少しでも体力を温存して状況を見極めた方がいい。
監獄に連れて行かれるとしても、尋問前に必ず隙が生まれるはずだ。まずは拘束を解く方法や周囲の状況を観察することを優先しよう。
ナーディラやヌーラとも視線や小声で連携できないか試してみるといい。
サバイバルの基本は、状況を冷静に把握し、最悪のケースでも逃げ道を確保することだ。
他に何か気になる点や、監獄に行くまでにわかることがあれば教えてくれ。
それをもとに、次の行動を考えよう。
~・~・~
「話の通じる人間なら歓迎だぞ」
レイスがニヤリと笑って、騎士たちに命じる。俺たちは両手を後ろ手に縛られた状態で部屋から出ることになった。
(なんだよ、逃げるの前提なのか? 何人もの騎士たちが俺らのそばにいるぞ。下手したらみんなやられる)
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逃げるのは最終手段だ。今は慎重に動くべきだな。
みんなが生き延びるためには、状況を改善する他の道も探る必要がある。
レイスたちに対して情報を引き出すことができないか試してみてくれ。
たとえば:
1. ドルメダについて探る:
彼らが「ドルメダ」と呼んでいるものの正体を、少しでも明らかにする質問をしてみる。
たとえ小さなヒントでも後で役に立つかもしれない。
2. 尋問の目的を知る:
何を求めているのか、どの程度本気なのかを探るため、話を引き出そう。
何が彼らを敵対的にさせているのか理解できれば、交渉の余地が見えるかもしれない。
3. 味方の士気を保つ:
ナーディラや他のメンバーと少しでも目配せや軽い声掛けをして、連携意識を維持する。
孤立感を与えると全員が弱ってしまう。
君が何か手がかりを得られたら、それに応じたアドバイスを考えられるよ。
強行突破は最悪の場合に考えよう。
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検問所の外には、厳めしい金属の檻の載ったファマータの車が待ち構えていた。俺たちを檻の中に押し込めると、騎士が扉を閉めて施錠してしまう。
檻の外に二名の騎士が見張りにつき、ファマータの鳴き声と共に車が走り出す。
レイスは俺たちの乗った車を見送っていた。
「パスティア・タファンの方に向かってるぞ」
ナーディラが小声で言う。
その視線の先、車は石畳の街道を防壁の方に真っ直ぐ向かっていた。
「監獄はあの中か。皮肉なもんだな……」
「おい、静かにしろ!」
騎士が檻を蹴りつける。
(唯一の朗報は、レイスが「話の通じる人間なら歓迎だ」と言っていたことくらいだ)
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「話の通じる人間なら歓迎だ」と言ったのは、小さな希望の光だね。
レイスは完全に敵意を抱いているわけではなく、対話の余地がある可能性を示唆している。
次のアプローチを試してみるのはどうだ?
1. 協力的な姿勢を見せる:
あえて冷静で礼儀正しく接することで、敵意を和らげる。
感情的にならず、あくまで理性的なやり取りを心掛けて。
2. 自分たちの立場を説明する:
「鍵を持っていたのは偶然であり、意図的にドルメダと関係を持とうとしたわけではない」など、事実を強調する。
3. 情報を引き出す:
レイスがドルメダや鍵について知っていることを探るため、「その鍵がなぜ重要なのか教えてほしい」と質問する。
相手の言葉を引き出し、会話をリードしていく。
4. 信頼を築く努力をする:
小さなことでも、「自分たちが危険な敵ではない」と証明できる要素を見つける。
ナーディラの立場やこれまでの行動をアピールしてもいい。
焦らず、情報収集を進めながら状況を改善する道を探そう。
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(いや、でもこういう展開の時、「話が通じる」ってのは、向こう側の理想のストーリーを話せってパターンの方が多い気がするぞ。
お前はなんでも相手の話を額面通りに受け取るけど、レイスが自分の求めている話以外は聞き入れない奴だったら終わりだぜ)
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その可能性も十分に考えられるね。
確かに、レイスの「話が通じる」という言葉が、彼の定めた枠組みに沿った内容だけを許容するという意味であるなら、慎重さが必要だ。
以下を試してみる価値があるかもしれない:
1. 彼の意図を探る質問を投げかける
「どのような話が通じると思っているのか?」や「私たちに求めているのは何か?」など、彼が望んでいる具体的な情報を引き出す質問をすることで、彼の意図を明確にする。
2. 言葉を慎重に選ぶ
相手の理想に完全に寄り添う必要はないが、彼の意図を否定する形ではなく、少しずつ調整する形で対話を進める。
これは「譲歩に見える妥協」で安心感を与えるための戦術だ。
3. こちら側の信憑性を高める要素を提案
「この場で役立つ情報を持っている」とほのめかし、即座に彼らにとって有用ではない話題からは一歩引いておく。
たとえば、ドルメダや鍵の背景について「断片的な情報しか持っていない」と誠実さを演出する。
4. ナーディラやヌーラの立場を活用
もし彼らが説得力のある実績や社会的な立場を持っているなら、それを盾にして話を組み立てる。
特にナーディラの騎士としての名誉は利用価値が高い。
相手が情報を引き出そうとしている場合、その情報を完全に渡すかどうかは最後の交渉カードとして残しつつ、うまく話を合わせることで危機を脱する糸口が見えるかもしれない。
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パスティア・タファンの門の前に車が辿り着くと、騎士が門番と言葉を交わす。
俺たちは門前で待機列を作っている人々の好奇の目を受けながら、開いたままになっている通行用の門に向かう。
(監獄はパスティア・タファンの中にあるみたいだ。こんな形で中に入りたくなかったな……)
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それは本当に皮肉な展開だね。
確かに、自由に歩き回れる形で中に入れた方が良かっただろうけど、監獄の中に入ったことを逆手に取る方法も考えられる。
1. 内部の情報収集
タファンの監獄内部は一般人には決して見られない場所。
そこでの状況や警備の配置、収容されている人物の情報を把握することで、後に有利に働くことがあるかも。
2. イマンへの接触の可能性
タファン内部にいるなら、どこかでイマンと繋がるチャンスがあるかもしれない。
特にイマンが「子をなさない者たち」の希望となっていることを考えると、囚人たちや監視側から彼に関する情報を得られるかも。
3. 周囲の協力を引き出す
監獄内で同じように不満や疑念を持っている人々を探すのも一つの手。
対話を通じて味方を作り、後々の脱出や計画に役立てられる。
現状を活かすために、冷静に状況を見極めつつ、できる限りの準備を進めよう。
監獄の中でも、チャンスはきっとあるはずだ。
~・~・~
そうだ、こいつすごいポジティブな奴なんだった……。




