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スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第2部1章 再スタート
26/199

26:昔からパソコンのトラブルシューティングは信用してなかったんだ。

 ナーディラがザラを俺に託して飛び出していく。イハブとアレムの間に身を滑り込ませて、戦闘態勢を取った。


「いけ好かないマネするなよ、仲介人」


「お、おい、ナーディラ……」


 戸惑うイハブを背にして、ナーディラが睨みを利かせると。俺の背後ではザラが俺の腰を掴んで震え始めた。


 アレムは驚いた様子だったが、仁王立ちの姿勢は崩さなかった。


「君がウチの連中を打ち負かしたという女性か」


「お前もそうなりたいならご自由に」


 アレムは小さく笑った。


「君のような用心棒がいれば安心だろうな、イハブ」


「喧嘩っ早いのが玉に瑕なんだがねぇ」


 そう言って二人は笑みを交わした。間で取り残されたナーディラは顔を赤くしながらイハブとアレムの真ん中でクルクルと回った。


「どういうことだ?」


「アレムの旦那はこの街にちょくちょくやって来て仕事をしてるんだよ。俺も何度か世話になってる。言ってみれば、顔馴染みだな」


 サッと身を引いてナーディラがかしこまる。アレムの部下たちをぶっ倒したという事実に早々と気づいたらしい。


「いや、今回は謝罪をしにきたんだ。ウチの連中が迷惑をかけた。連中を絞り上げたら白状したよ。勝手に人を攫ってきて売り飛ばすというのを陰で何度もやっていた、とな」


 アレムはその場でしゃがんで、俺の背後にいるザラと目線の高さを同じにした。


「怖い思いをさせてすまなかった。連中は砂漠に捨ててきた」


 ザラは飛び上がってまた俺の背後に隠れてしまった。イハブが笑う。


「そんなこと言ったらますますこの子が怖がるだけだよ」


「そ、そうか、すまない……。日頃、血の気の多い連中を相手にしていて普通が分からない」


 俺はザラの頭を撫でた。


「ザラ、もう大丈夫だよ」


「う、うん……」


 アレムは立ち上がってナーディラに目をやった。


「それにしても、君のような美しい女性があの男どもを簡単に組み伏せてしまうとは……」


「フン、あんな雑魚ども、いくらいてもいないのと同然だ」


「ナーディラ、言いすぎだぞ」


 俺がたしなめると、彼女はしかめっ面を返してきた。アレムはため息をついた。


「それにしても、今回のことはワシの管理不行き届きによるものだ。お前の店とやり合おうというわけじゃなかったことは分かってくれ」


 イハブは顎に手をやって考えを巡らせているようだ。


「いや、どうだかな……」


「おい、謝罪はしたはずだぞ!」


「だが、アレムの旦那は俺に借りができたって顔をしてる」


「それはそうだが……」


「その借りをすぐに返せる話があるんだが、聞いてくれるかい?」



***



「ファマータと車を?」


 店の商談室にアレムの声が響く。


 イハブは俺たちがザラの街に向かいたい旨を話した。


「アレムの旦那のところには、人間を運ぶためのファマータも車も揃っているだろう? それを貸してくれるだけでいいんだ。()きの分だけでも」


「それで今回の件がチャラになるのであれば、こちらとしては応じないわけにはいかない」


「じゃあ、交渉成立ということで」


 手のひらを上にしてイハブが腕を伸ばすと、アレムが自分の手を上から重ねる。この世界の握手みたいなものだ。


「それにしても、“悪い精霊”か……」


 アレムがボソリを呟く。その表情は何かを知っているようだったので、尋ねてみた。


「何か思い当たる節でも?」


「いや、大したことじゃないが、ウチの商品もたびたびその病にやられてる。他の同業者も問題にしているんだよ」


 俺はナーディラと目を合わせた。


「そんなに多発してるんですか?」


「多発しているというよりは、そんな謎の病に直面すれば記憶には強く残る。誰もが自分の直面した出来事を声高に吹聴しているだけだろう。数自体はそこまで多いわけじゃない」


(サイモン、ホッサムがかかったあの症状、どうやら各地で起こっているみたいだ。


 仲介人のアレムの話では、商品になっている人たちが同じ症状でやられたことがあるらしいし、ザラの街でも、農作業していた男の人や遊んでいた子供たち、生まれたばかりの赤ちゃんが犠牲になったという)



~・~・~

それはかなり広範囲に影響が出ている状況だな。


病気や伝染病のようなものか、あるいは何か別の要因があるのかもしれない。


この情報があれば、ホッサムの症状についても何か手がかりが見つかるかもしれない。


ザラの街で起きた症状の詳細や共通点を調べられると、もう少し原因に近づけるかもしれないな。

~・~・~



(こんな広範囲に同じ症状が現れた事例って地球の歴史上には見られるの? この世界だけの現象なのかな?)



~・~・~

地球の歴史上、広範囲に同じような症状が現れた例としては、伝染病のパンデミックがよく知られている。


たとえば、14世紀の「黒死病」や20世紀の「スペイン風邪」は、広範囲で急速に拡大し、多くの人々に同様の症状をもたらした。


また、他には環境要因や中毒による事例もあり、たとえば、飲料水が汚染されたことによる病気の集団発生や、食物に含まれる有毒物質が原因となることもある。


ホッサムやザラの街で起きた症状が、地球で見られた伝染病や中毒に似ているとすると、共通する汚染源や伝染ルートが考えられる。


しかし、この世界には魔法や未知の要素も存在するため、単純に地球の事例と同じように考えられない可能性もあるな。


これまでに観察してきた症状の広がり方や、魔法の影響についても合わせて考える必要がありそうだ。

~・~・~



「その病にかかったまわりの人たちは無事だったんですか?」


「ああ、なんともなかった」


(アレムの話では、同じ症状になった人の数はそんなに多いわけじゃないらしい。それにその症状になったまわりの人に伝染した様子はないみたいだ)



~・~・~

それだと、伝染病のような広がり方をする病気というよりは、環境要因や個別の事情が影響している可能性が高そうだな。


たとえば、特定の場所や状況でだけ発生する中毒、呪いのようなもの、あるいは魔法による影響かもしれない。


もし発症した人が限られた人数で、さらにその周囲に伝染しないのであれば、共通する要因を持った人たちが影響を受けたのかも。


例えば、同じ地域で採れた食べ物や水を摂取していたとか、特定の場所に立ち入ったとか、何かに触れたとか……。


それから、アレムが仲介人として商品を扱う人々の話をしているということは、特定の「集団」や「環境」に共通する問題かもしれないね。


何かしらの繋がりやパターンが見つかれば、症状の原因に近づけるかもしれない。

~・~・~



(思ったんだけどさ、もしこの症状が魔法とか呪いによるものだったら、ホッサムもそれを受けたってことになるよな。ホッサムに恨みを持つ人なんていないように感じられたけどな。


 ゴブリンとの接触だとしたら、俺も同じ症状になっていなければおかしい。


 俺とホッサムを分けたものは何だったんだろう?)



~・~・~

そうだな、もし魔法や呪いのようなものであれば、なぜホッサムだけがその影響を受けて、君が無事だったのかという疑問が生まれる。


君とホッサムの違いに何かヒントがあるのかもしれない。


例えば、以下のような可能性が考えられるかもしれない:


1. 体質の違い:

君とホッサムの体が何かしら違う要因で反応したかもしれない。

君が異世界から来たことと関係がある可能性も。


2. 防御の魔力やアイテム:

君が無意識に持っているものや、何か特別な力があったために守られていた可能性もある。

ホッサムはそうした防御手段を持っていなかったかも。


3. ゴブリン以外の要因:

ゴブリンとの接触が原因ではなく、その後の出来事が原因だった場合。

例えば、ホッサムが何か特定の物に触れたり、特定の場所に行ったりしたことが引き金になったかもしれない。


4. 心や感情の影響:

この世界には、感情や信念が力を持つことがあるかもしれない。

もしホッサムが何か深い不安や恐怖を抱えていたとすれば、それが影響を受ける原因となったのかも。


君の身に起きていないこととホッサムに起きたことの間にどんな違いがあったかを一つずつ洗い出せれば、手がかりが見えてくるかもしれないね。

~・~・~



***



 ザラの街までの旅程を考えると、出発は早い方がいい。


 ザラとナーディラと俺はイハブと別れてアレムと一緒に出ることになった。


「俺はここを離れるわけにはいかないからさ」


 イハブが手を振る。ナーディラは心配そうだ。


「用心棒がいなくても大丈夫か?」


「それなんだよね、不安な点は」


「それなら、ウチの人間をしばらく貸そう。少しは役に立つはずだ」


 アレムが太っ腹なところを見せて、イハブのセキュリティ問題は解決した。



 アレムと共に彼の店に向かう。


 アレムの店は巨大で、周囲には客と思しき人々が集まっていた。


「大盛況だな」


 ナーディラが嘆息する。


「この店は部下に任せているが、それでも業績は右肩上がりだ。人手ほしさに客が絶えないんだよ」


 広い中庭に野ざらしの鉄格子があり、そこに泥だらけになって集まっている人たちが見えた。彼らが商品なのだろう。

 あまり見たくない光景ではあった。


 ──とはいっても、現代日本だって野ざらしの檻がないだけで似たようなものだけどな……。


 しかし、店の中を進むにしたがって、店内の部屋で過ごしている“商品”もいることが分かった。

 色っぽい女性、屈強な男、魔法使いらしい老人……様々な種類の人間がこの店には集まっていた。


「商品は等級ごとに扱いが違う。かけられるアズタリが違うから当然のことだが」


 ──つまり、外の檻の中の人たちは最低グレードってわけか。


「病にかかったのは、どの等級の人たちなんですか?」


「外にいる連中だよ」


(同じ症状にかかっている人たちは不衛生な環境にいた可能性が高い)



~・~・~

なるほど、不衛生な環境が関係している可能性があるとしたら、感染症や特定の病原体の影響も考えられるね。


その場合、以下の点が考察の材料になりそうだ:


1. 感染経路:

もし病原体が原因なら、汚れた水や食べ物、空気中のウイルスや細菌などが考えられる。

ホッサムとその他の症状が出た人たちが同じような環境で何かを摂取した可能性はないか?


2. 免疫力や耐性:

君とホッサムの体質の違いが耐性に影響を与えているかもしれない。

例えば、異世界から来た君の体がこの世界の病原体に対して免疫を持っているかもしれない。


3. 環境の特定要因:

農作業をしていた人や、子どもたち、生まれたばかりの赤ちゃんが影響を受けているとすれば、彼らが共通して接触している環境や物質(例えば、使っている農薬や食べている食物)も要因になり得る。


4. 生活環境の違い:

ホッサムが以前いた環境と、君が接触した環境の違いも考えてみるといいかもしれない。

例えば、特定の街や集落で流行している病気で、その街を離れたことで影響を受けずに済んだ可能性もある。


もし症状にかかった人たちが住んでいた場所や生活習慣について詳しく知ることができれば、さらに原因を絞り込めるかもしれない。

~・~・~



(う~ん、まだ原因は特定できないか?)



~・~・~

そうだな、現段階ではまだ原因を特定するには情報が足りないな。


でも、いくつかの方向からもう少し掘り下げてみると手がかりが見つかるかもしれない。


考えられるアプローチをいくつか挙げてみるよ:


1. 共通の接触源を調べる:

症状が現れた人たちがどのような生活環境にいたのか、食べていたもの、飲んでいた水源など、共通点を探ることが大事だね。

例えば、みんなが同じ井戸の水を飲んでいたとか、ある地域の作物を食べていたとか。


2. 魔法や呪いの可能性:

この世界では魔法が実際に存在するから、呪いや魔法による影響も否定できない。

特に、ホッサムや他の被害者がいつ・どこで何か特別な体験をしたのかを詳しく調べてみると、何か見えてくるかも。

呪いに関する伝承や儀式の話を知っている人がいれば、彼らの話を聞いてみるのも一手だ。


3. 症状の詳細な調査:

具体的にどのような症状が発生したのか、病状の進行具合やそれに伴う外見の変化などをもう少し詳しく調べると、手がかりが得られる可能性もある。

特に、症状がどのように進行していくのか、改善したケースはあるのかがわかると、感染や毒物の特定に役立つ。


4. 自分とホッサムの違いを探る:

君とホッサムの間で何が違ったのかを掘り下げるのも良いね。

例えば、食生活の違い、使っている道具の違い、過ごした場所の違いなど。

君が異世界から来たという点が、影響を受けない理由になっているのかもしれない。


今はまだピースが足りないけれど、これらの方法で情報を集めていけば、もう少し原因に迫れるかもしれないね。


何か新しい情報が見つかれば、それに基づいてもっと具体的に考察できると思うよ。

~・~・~



 よく考えたら、こいつ同じようなことを言葉代えて繰り返してるだけじゃねーか!!


 俺はひとりため息をついた。


「リョウ、大丈夫か? 着いたぞ」


 ナディーラが指を指す方に、ファマータとそれが引く車が待っていた。


「すぐにでも出発はできる。旅程に必要な食料も準備させてあるぞ」


 アレムが胸を張ってそう言った。


 ザラの街への旅路が始まるのだ。

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