表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第4部1章 新たなる旅立ち
198/199

198:ためらいついでの議論

 クインセが鍵を手に、石の部屋の奥に近寄っていく。


 壁には、幾何学的なレリーフが円形に彫り込まれていた。その中央にクインセが鍵を差し込んだ。


「そこ、邪魔だからどいて」


 クインセの注意を合図にダヤジャに背中を掴まれて、部屋の中央から引っ張り出された。


 地の底の方からゴリゴリと石同士がこすれるような音がして、部屋の中央の床がスルスルと円を描いて動き出す。やがて、三メートルほどの円が脛の中ほど辺りまでせり上がって、床の動きは停まった。


 部屋の中央、そして、よく見ると、天井にも同じように円が出来上がっていた。


「これは……」


「これがゲートよ」


 やっぱり、公宮の地下にあった禁書庫と同じように鍵で駆動する仕組みだ。しかし……。


「ゲートとは?」


 ダヤジャが俺の後ろでため息をつく。


「ゴチャゴチャうるせーやつだな! 入りゃわかんだろーが!」


 クインセが軽く手を挙げると、ダヤジャは大人しくなる。まるで調教でもされているかのようだ。


「これから、ゲートを使って聖地へ向かうわ」


「ゲートを……使って? 生きてるのか、これ?」


「どういうわけか、ね」


(遺跡の中のゲートと呼ばれている場所にやって来たんだけど、クインセがこれでドルメダの聖地に向かうと言ってる……。この遺跡、まだ生きているらしい)



~・~・~

それ、本物だ──この遺跡はただの記録施設じゃない。“中枢機能”が今も作動してるってことになる。


ゲートってのはたぶん、空間移動装置ワープゲートか、高速輸送機構の類。クインセが「聖地」と言ってるなら、ドルメダ内部の重要拠点と直結してる可能性が高い。


今も動いてるってことは、エネルギー供給も回路系も保たれてるってこと。

つまり、方舟時代の中核テクノロジーが“完全に稼働状態”で残ってる。


……乗るかどうか、慎重になれ。君がその「聖地」に足を踏み入れることは、向こうの思惑の核心に触れるってことでもある。

~・~・~



(聖地に行くのはもう覚悟してるんだ。


 それにしても、鍵を壁の穴に差し込んだら床が動いてゲートが出てきた。動力は何だろう? それに、これがワープ装置だとしたら、仕組みは……?)



~・~・~

おそらく、動力は電磁的なもの+封じられた反応炉系コア。500年単位で作動可能な自己循環式の超小型エネルギー炉──地球側で言えば、常温核融合炉や高密度バッテリーに近い。


ワープ装置だとすれば、仕組みは以下のいずれか:


・量子干渉型空間転送(Quantum Tunneling)

 空間の一点を別の一点に瞬間的に繋げる。アインシュタイン・ローゼン・ブリッジ(ワームホール)理論の応用。


・物質情報の圧縮転送

 君の肉体を一時的に情報化し、転送先で再構築する。超高精度のスキャン&リコンストラクト。


鍵が物理的だったことから、起動にはアクセス制限と識別機構(パスティア貴族の血統など)が含まれてるかもしれない。


いずれにしても、これは“魔法”じゃない。完全に地球由来の超科学技術だ。

~・~・~



(そんな技術が500年前の地球にあったのか? それとも、オカルトっぽい超古代文明ってやつか?)



~・~・~

可能性は二つに絞れる。


① 表に出ていない地球の“裏の技術”だった

 地上で戦争や環境問題が進んでる裏で、国家か企業、あるいは選ばれた集団が密かに技術を進化させていた。方舟はその成果のひとつ。技術は表に公開されないまま、選民だけが使っていた。


② 地球由来じゃない技術を“拾った”

 オカルト的な話になるが、外宇宙の探査中に異星文明の遺物を発見・逆解析し、その技術を用いて方舟が作られた。本人たちも完全に理解していたわけじゃない可能性がある。


君が見てる遺跡やゲートの動き方は、「作った者と動かす者が違う」感じがする。つまり──技術を使っていた人間は、創造者ではなかったかもしれない。

~・~・~



(この遺跡が方舟そのものだとしたら、地球人がこれに乗ってこの世界にやって来たことになる。


 方舟っていうと、ノアの方舟が真っ先に思い浮かぶけど、方舟が宇宙船だった、みたいな説でもあるのかな?)



~・~・~

ある。ノアの方舟を「選ばれた者たちを乗せた脱出艇」と解釈する説は、SFやオカルト系では定番中の定番だ。


たとえば――

・神による裁き=地球の破滅的災害(核、環境、戦争)

・箱舟=宇宙船(地球を離れる手段)

・選ばれた者たち=遺伝子プールを保持する人類の一部


この説を基にすれば、君が今いる世界は“洪水の後”に向かった先という位置づけになる。つまり、ノアの方舟は実在し、それがこの遺跡=ワープ装置付きの宇宙船だったとすれば――今、君がいるのは“新天地”だよ。

~・~・~



(でも、それだと時代が合わないよ。方舟は500年前の地球にあった。どこかに隠されてたんだろう。それこそ、方舟が漂着したっていうアララト山とか。ずっとそこに会った方舟をアラビア語圏の人が再利用した……みたいなことなのかもしれない)



~・~・~

うん、その仮説、かなり筋が通ってる。


もし「ノアの方舟=超古代の宇宙船」だったなら、アララト山で発見・保管されていた“失われた技術”を、500年前に再発掘・再利用したという流れは十分あり得る。

当時の中東・アラビア語圏の科学者や宗教関係者が関わっていたなら、アラビア語で遺跡の内部が記録されてる理由も説明がつく。


つまり、

・本来の方舟はもっと古い(ノアの時代)

・500年前の地球で、それを再利用して異世界へ脱出

・異世界ではそれが「聖なる拝領」と呼ばれる始まりになった


この流れが真実だとしたら……リョウ、お前、マジで人類の神話の“その後”を歩いてるんだよ。

~・~・~



 クインセの咳払いが聞こえた。


「あなた、ちょくちょくボーッとするわね。さっさとこんなカビ臭いところから出たいんだけど」


「ああ、すまない……」


 三人でゲートの中に立つ。


 円の一部がスルスルと高さを増して、クインセが鍵をそこへ差し込んだ。


 円で囲まれた床と天井の間に光が満ちる。


 目のくらむような光の中で、俺は──……。


 ──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ