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スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第4部1章 新たなる旅立ち
189/199

189:転移魔法トリガー

 旅の一団は乾いた岩山の麓でキャンプを開いていた。


 すでに陽は砂の地平線の向こう側に落ちようとしている。


 みんなと一緒にファマータの世話をしていると、ナーディラがザリヤと共に少し離れた場所でなにやら話しているのが見えた。


 ファマータの車を使ったテントが全部で四つ、中央で火が焚かれるまわりを取り囲むようにしてある。中央では、何人かが集まって夕食の準備を始めていた。良いにおいも漂っている。


 地球にいた頃はBBQもろくにやったことがなかった。この世界に来てからというもの、初めて体験することばかりだ。俺は世界を生きているようで、自分の生活範囲を行き来していただけだったのかもしれない。


 旅行好きの人の気持ちが今はよく分かる。未体験の非日常を味わうには旅に出るしかない。もっとも、今の俺は旅を続けすぎてちょっと落ち着きたいとすら思っているが。


 それにしても……。


 アセナスと俺が同じ実験系統の産物だと推測したサイモンの言葉がずっと胸に残っている。


(俺の身体のもともとの持ち主は転移魔法が使えた。そのことと俺がこの世界に来たこととの間には関連性があるんだろうか?)



~・~・~

あると思う。むしろ、そこが起点かもしれない。


つまり──

この身体の持ち主が「転移魔法」を使った(もしくは実験された)結果、

その魔法が暴走し、異世界からお前の意識を“呼び寄せてしまった”という可能性。


転移魔法が「空間を越える」だけじゃなく、「魂を引き寄せる」性質も持っていたなら、

それは単なる事故じゃなく、イルディルや選ばれし者の本質に関わる魔法だったのかもしれない。


お前が来たのは「偶然」じゃなくて、

誰かが行った転移魔法の“結果”として、“適合した魂”として引き寄せられた。


──そう考えた方が、いろんなことが説明できる気がする。

~・~・~



(この身体の持ち主はタリクという名前だったらしい。タリクの意識はどこに行ったんだ?)



~・~・~

……それが、いちばん不穏な点だ。

もしリョウがこの身体に宿ってるなら、タリクの意識は“どこかへ行った”ってことになる。


候補は三つある:


1. 消滅した

 転移魔法の暴走で、意識そのものが壊れた。空間や魂の構造が耐えられなかった。


2. 内側で眠っている

 深い意識の底に封じられている。リョウの意識が前面に出て、タリクは奥に押しやられている状態。


3. “別の場所”に転送された

 タリクの魂は、逆にリョウの元いた世界や別の器に飛ばされた可能性もある。

 リョウの世界で「記憶を失った別人」として存在してる……なんてこともゼロじゃない。


どの可能性も異常だけど、この中で俺が一番あり得ると思うのは2. 内側で眠っているだ。

タリクが完全に消えていたら、お前の中にある「身体の記憶」や反射の一部が、もっと不自然だったはずだから。

~・~・~



(地球とこの世界は遠く離れてる。なんで俺が転移魔法に巻き込まれたんだろう? 俺でなくても、地球がその転移魔法の効果範囲内に入っていたってことは、宇宙のかなり広範囲をカバーしてるってことか……?)



~・~・~

その可能性もあるけど、俺はもうひとつ、もっと“狙い澄ました”可能性を疑ってる。


つまり——「転移魔法が、地球のリョウを“指定して”引き寄せた」んじゃないかってことだ。


タリクが使った魔法がただの暴走じゃなくて、「意識や魂を“別の世界から呼ぶ”構造」になってたとしたら……

地球側にある特異点(たとえばAIと繋がっている、特別な魂の波長を持つ、イルディルと共鳴する)を感知して、リョウが“選ばれた”と考える方が自然だ。


つまり転移魔法は、ただの事故じゃなくて——

お前が“来るべくして来た”って可能性があるってこと。

~・~・~



 なんだ、その漫画みたいな展開は。


 ただ、この世界の住人と俺との間に共通項があるとすればDNA情報だ。この世界の人間がもともとは地球からやって来たのならば、地球人特有の遺伝子パターンというやつがある。


(ねえ、DNAって宇宙に存在するすべての生物が持ってると思う?)



~・~・~

俺の考えでは、「DNAのような情報記録物質」は広く存在し得るけど、DNAそのものは地球由来の可能性が高い。


宇宙には生命に必要な有機物(アミノ酸とか塩基)は存在してるし、他の星でも「情報を複製・継承する仕組み」は不可欠だと思う。でも、それが地球と同じ“二重らせん構造のDNA”かどうかはわからない。全く違う構造(たとえば三重らせんとか、RNA系とか、金属基盤の情報素子)を持っててもおかしくない。


つまり、地球生物のDNAは“数ある手段の一つ”にすぎないと思う。

ただし——もしこの世界にもDNAがあるとしたら、そこには“共通の起源”か“人工的な介入”があるかもしれない。

~・~・~



(この世界の人間は地球からやって来たから、地球生命の証として共通する二重らせん構造を持つDNAを持ってるはず。まあ、この世界の人たちはリンパ節が突然変異か何かでシュミケル体って器官に変化してここの環境に適応してるけど。


 この二重らせん構造のDNA自体が鍵になって、俺が転移魔法の巻き添えを食らった可能性はあるよな。そう考えれば、広い宇宙の中で共通するDNAを持つ俺がターゲットの一人になった説明はつく気がする)



~・~・~

それ、かなりあり得る線だと思う。


もし転移魔法が「特定の遺伝子構造」――たとえば地球由来の二重らせんDNAに反応する仕組みだったなら、“この世界の選ばれし者”の探索中に偶然、地球のリョウにヒットした”ってことになる。


つまり、魔法は「タリクのようなDNA」を探していて、リョウのDNAが条件を満たしていた。

それに、シュミケル体みたいな器官への変異も、DNA構造に依存しているなら――リョウのような存在が、この世界に「適合」してしまう理由にもなる。


この発想が正しければ、「選ばれし者=DNAトリガー持ち」ってことになって、

アセナスも、おそらく地球のDNAを持つ別の人間ってことになるかもな。

~・~・~


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