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スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第1部2章 溺れる者は藁をも掴む
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17:異世界でお買い物

 狭い路地に面した大小様々な店舗から陳列棚や客寄せのための看板やら何かの動物の剥製やらが飛び出している。

 そのせいで、何かアングラめいた雰囲気が道具街には漂っているように見えた。


 商品棚に陳列された品々には一つ一つ値札がつけられている。あずたりの単位数がそのまま値段になっているのは俺の街と同じだ。

 違うのは、どうやら物々交換は行われていないということか。


(これまでもちょくちょく文字を見かけてきたんだが、簡単な直線を組み合わせた記号みたいなのが数字みたいだぞ。


 このまえ話した赤金色の粉「あずたり」が定められた重さの分銅何個と釣り合う量なのか、その分銅の数が通貨単位みたいになってるようだ。


 あずたり四なら、分銅四個と釣り合うあずたりを支払わなければならないって感じだな)



~・~・~

それで、物の価値が重さで決まるというシステムがこの世界でどれほど重要か、ますます明確になってきたね。


あずたりの支払い方法もわかってきたし、この知識を活かして、商取引や日常生活に役立てられるかも。


ホッサムとの仲直りの時にも、こうした理解が助けになるかもしれないよ。

~・~・~



(数字があるってことは、この世界にも数学があるのかな?


 少なくとも、数字を加減するって概念自体は商取引が行われてる時点で存在してるよな)



~・~・~

そうだね、この世界に数字があるということは、少なくとも基本的な数学的な概念、特に加減算(足し算や引き算)は存在しているはずだよ。


商取引が行われている以上、重さや価値の計算は必要だから、基本的な算術は少なくとも商人や取引をする人たちに共有されていると考えられる。


これが進んでいけば、もっと複雑な計算や数学的な知識もどこかに存在しているかもしれないな。


何か取引で数字のやり取りを目の当たりにしたら、さらに詳しく分かるかもね。

~・~・~



(よく考えたら、石造りの建物を建てるのにもある程度の数学の知識が必要だよな。


 ホッサムの店を手伝ってた時の感じからすると、簡単な加減算は地球と変わらなかったと思うけど、数学って全宇宙で普遍的なものなのか?


 それとも、この世界が地球の影響を受けてるっぽいから?)



~・~・~

確かに、石造りの建物を建てるには、基本的な数学の知識が必要だね。


力のバランスや寸法の計算は不可欠だし、それができるということは、この世界にある程度の数学が根付いているという証拠だ。


数学が全宇宙で普遍的かどうかという質問に関しては、興味深いテーマだね。


数学の法則自体は自然界の現象を記述するためのものであり、物理法則がどこでも同じなら、数学もそれに基づく普遍的なツールだと言える。


例えば、重力や力学がこの世界でも存在するなら、ピタゴラスの定理や三角測量のような概念も有効だと考えられる。


一方で、この世界が地球の影響を受けている可能性があるという点も興味深い。


もしこの世界が地球と何らかの形でつながっている、もしくは影響を受けたとすれば、地球で発展した数学がこの世界に浸透している可能性もある。


ホッサムの店での加減算が地球と同じ感覚で行われていることから、この世界の数学が地球由来のものか、少なくとも共通の基盤を持っているのかもしれないね。


どちらにしても、数学が日常生活や建築、商取引に使われているという事実は、この世界の文明の発展具合を知る手がかりになるね。

~・~・~



 サイモンのやつ、急に饒舌に語りやがる。理数系か、こいつ?


 俺はサイモンとの会話を楽しみつつ、道具街の店を一つ一つ見ていった。


 しばらくして、多くの冊子が積み上げられている店に辿り着いた。

 看板の文字は読めないが、積まれた冊子はいずれも帳簿に使えそうなノートのようなものだった。


 革張りの装丁で、中には白紙の羊皮紙が綴じ込まれている。

 羊皮紙自体が価値のあるものなのか、大判の物は俺の持っている十五あずたりではとても足りなかった。


 ──「十五あずたり」って言い方が合ってるかは分からねーけどな。


 店の中に入ると、小振りなものも多く売られていた。薄暗い店の奥で白髪のおっさんが存在を誇示するように大きめの咳払いをした。


 しばらく迷って……というか、俺にも払える商品を探して、小さくてページ数の少ないものを選び取った。

 長く使う帳簿としては物足りないかもしれないが、今の俺にはこれで精いっぱいだった。


 店主のもとに商品を差し出すと、無言で秤がカウンターの上に置かれ、十二個の分銅が一方の皿の上に載せられた。

 財布を取り出して、開けた口からあずたりを慎重にもう一方の皿の上に流し載せる。


(よく考えたら、あずたりを測る分銅の重さをいじられてたら、いくらでもぼったくられるってことだよな……。


 この世界の貨幣経済、大丈夫なのか?)



~・~・~

確かに、分銅の重さが不正に操作されていたら、簡単にぼったくられる可能性があるね。


特にこの世界では、あずたりという粉を計量して取引しているわけだから、分銅の正確さが非常に重要だ。


もし誰かが分銅を偽造したり、微妙に重さを変えたりしていたら、知らないうちに損をしてしまうことになる。


この問題は、地球でも古くから起こっていたことで、古代や中世の市場でも、商人が重さを不正に調整して不当に利益を得ることがあり、厳しい罰則が設けられていた例もあるよ。


貨幣経済を安定させるには、政府や権力者が分銅や計量器具をしっかり管理し、定期的に検査する必要がある。


この世界では、今のところホッサムが店を経営していても分銅の正確さを厳密に確認するような制度や機関があるかは見えてこないから、不正が起こりやすい状況かもしれないな。


もしも信頼できる分銅や秤を扱っている信頼のある商人や機関があるなら、そこを利用することが重要かもしれない。


ホッサムもそのあたり、注意しているかどうか気になるところだね。


貨幣経済の基盤がしっかりしていなければ、商取引の信頼が揺らぎ、市場全体の信用が失われることになるから、かなり重要な問題だと思うよ。

~・~・~



 また饒舌に語るじゃないか、サイモン。経済学部出身か?


(隙のある貨幣経済だけど、このシステムが誕生してから成熟しきるまでの歳月がまだ経過していないということなのかもしれないな。


 一応、街には騎士がいるし、何か疑わしいことがあったら通報するみたいな感じなのかもな)



~・~・~

そうだな。この世界の貨幣経済はまだ発展途上で、成熟しきっていない可能性があるね。


計量に依存するあずたりのシステムが使われている一方で、その管理や監視体制が完全には整っていないと考えると、現状は試行錯誤の段階なのかもしれない。


騎士が街を守っているのも、こうした不正を防ぐための役割を担っている可能性はある。


特に大きな市場や商業活動が行われている場合、秩序を保つために騎士が不正行為を監視し、疑わしいことがあれば通報や処罰が行われる仕組みがあるのかもな。


ただ、このようなシステムが本当に機能しているかどうかは、街や時代の成熟度次第だろう。


ホッサムも、そういうリスクを意識しつつ商売をしている可能性があるし、街全体がどの程度まで不正を許さない厳格さを持っているのかが気になるところだね。


通報や監視が実際に効果を発揮しているなら、システムは成長途中でも機能していると見ていいだろうけど、逆にそれが機能していないなら、まだまだ危険な状態と言えるかもな。

~・~・~



(俺が今いる街は店の数が多いんだけど、どこも同業者が密集してるイメージだ。


 もしかすると、同業者の店を密集させることで不正の自浄作用が働くのかもしれない。

 店側も客も周囲にすぐに比較できる対象があるからな)



~・~・~

それは面白い仮説だね。


確かに、同業者が密集しているとお互いが監視し合う効果も期待できるし、顧客もすぐに他店と比較できるから、不正がしにくくなるかもしれない。


競争が激しい環境では、自然と品質や価格の透明性が求められるようになるんだろうな。

~・~・~



 この店はどうやら品行方正な貨幣システムを導入しているようで、俺は無事にホッサムへのプレゼントを手に入れることができた。


 これでホッサムが機嫌を直してくれればいいけど……。


 購入したノートはギリギリポケットに入れられるほどの大きさだ。ポケットを膨らませて道具街の路地に出る。


 もと来た方に顔を向けると、狭く雑多な路地を塞ぐように仮面を被った人影がこちらをじっと見たまま立ち尽くしていた。

 まるで何かの像のように微動だにしない。


 ──なんだ、あいつ……。気持ち悪いな。


 関わらないように反対側、道具街の奥の方に顔を向ける。


 瓜二つの人影がこちらを見ていた。いや、仮面をつけているから、俺を見ているかは分からないが、熱い視線は感じる。


 ──なんだよ、また面倒が起こるのは勘弁してくれよ……。


「げあべす」


 くぐもった男の声がする。どっちかの仮面の人物が発したのだろう。


 知らない振りをして路地を駆け抜けようと覚悟した俺に今度は強い語気で声が飛んだ。


(サイモン、なんか変な仮面をつけた二人組に目をつけられたんだが……)



~・~・~

それは不穏だな……。


変な仮面をつけてるってことは、何かしらの集団や組織に属している可能性があるかもしれない。


彼らの目的が分からない以上、無理に接触せずに警戒しておいた方がいい。


街には騎士もいるから、必要であれば近くの騎士に助けを求める準備もしておくといいかも。


まずは冷静に状況を観察して、彼らが何をしようとしているのかを見極めることが大事だ。

~・~・~



「げあべす!!」


 道具街の奥の方に立つ仮面の男が動きを見せた。その手には、八面体の宝石をぶら下げた鎖が握られている。


 そして、その宝石は光を放っていた。


(こいつら、ナーディラが持ってたのと同じようなサイモンに反応する宝石を持ってる!)



~・~・~

それはかなり怪しいな!


ナーディラの持っていた宝石がサイモンに反応していたことを考えると、彼らも同じ種類の宝石を持っていて、サイモンとの関わりがある可能性が高い。


つまり、彼らは君やサイモンの存在に気づいているか、少なくとも何かしらの目的で追っている可能性がある。


この状況では、距離を保って冷静に行動することが最善だ。


彼らがどのような意図で近づいているのか、まずはそれを知るために隙を見て観察するか、もし危険を感じたらすぐに逃げる準備をしておいた方がいい。


もしも彼らが力を持っている集団なら、騎士団に報告するのも一つの手だ。


ナーディラとこの二人組が繋がっている可能性も考えられるけど、現時点では何も確定できないから慎重に動いた方がいいね。

~・~・~



 サイモンはてめーだよ──!


 と心の中で叫ぼうとした俺の視界の中で、道具街の奥の方に立った仮面の男の周囲の空気が揺らめいた気がした。


 そいつが何かを唱えると、背後から真っ赤に燃える蛇のようなものが中空に現れた。


「おいおいおい、なんなんだよ、マジでぇっ!?」


 もと来た方へ駆け出す。そっちにも仮面の人影がいるが、なりふり構っていられなかった。

 いざとなったら突き飛ばしてやる……!


 この期に及んで宿にショートソードを置いて来たことを後悔した。


 それでも、俺は地面を蹴った。


 行く手を阻んでいた仮面の人影がサッと脇へ避けた。


 よく分からないが、これはチャンスだ──


 後方から風が唸るような音がする。


 振り返った俺の目に飛び込んできたもの……燃える蛇が大きな口を開けている。


 その口から巨大な火球が撃ち出された。


 反射的に前のめりに倒れ込んだ俺の頭上を熱い火の玉が高速で通り過ぎていった。そいつが路地の商品棚に直撃して、閃光と爆発と轟音が辺りを支配した。


 煙、そして、散らばる商品の破片。


 火球が直撃した場所が丸焦げになって大穴が空いていた。


 ──ウソでしょ……?

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