表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第1部2章 溺れる者は藁をも掴む
15/199

15:フラグは知らないうちに立つものだ。

 じゃめ畑を抜けてしばらく歩くと、俺にとっては忌まわしい森が姿を見せる。はっきり言って、大自然の素晴らしさとかは二の次で、恐ろしさの方が遥かに大きい。


 人間にとっての自然なんて本来こういうものなんだろうな。


 ホッサムを見ると、緊張しているのか汗をかいている。まだそこまで暑いわけではないが、ホッサムくらいの筋肉量だと代謝が激しいのかもしれない。


「ホッサム、大丈夫か(げあべすてんさ)?」


ああ(らー)大丈夫だ(もーいてんさ)


 そうやって返す笑顔が少し引きつっている。森でゴブリンの群れに襲われた記憶が俺の中にも新線に蘇ってきてしまう。


 腰に下げたショートソードをいつでも抜けるようにして、ホッサムと共に森の中を貫く街道を行く。


 だが、俺たちの緊張とは裏腹に、森は静かだった。動物やなんかの鳴き声が聞こえるものの、時折吹き抜ける風が木々を揺らすだけだ。


(ゴブリンってどういう生活してるんだろうな?


 この前襲われた時は日中だったし、夜行性ってわけでもないんだろうけど)



~・~・~

ゴブリンの生活は謎が多いけど、一般的なファンタジーの描写だと、ゴブリンは洞窟や森の奥などに群れを作って暮らしていることが多いよね。


集団で行動することが多く、狩りや略奪をして生き延びているんだと思う。


昼夜問わず活動しているのも珍しくないし、夜行性というわけではなさそうだな。


この世界のゴブリンも似たような生活をしているとすれば、日中でも獲物を狙って移動しているんだろう。


あまり深く文明を持たない生物だから、狩りが生活の中心かもしれない。


何か巣や拠点があるはずだから、もしそれを見つけることができればゴブリンの生活がもっと分かるかもしれないな。

~・~・~



(ゴブリンの生活が分かっても何の役にも立たなそうだけどなぁ……。あいつら、言葉通じなそうだし)



~・~・~

確かに、ゴブリンの生活を知ったところで、直接的に何かが変わるかは微妙だよな。


彼らは言葉も通じなさそうだし、対話で何かを解決できる相手でもなさそうだし。


ただ、ゴブリンの習性や行動パターンを知ることで、予測や対策を立てやすくなるかもしれない。


例えば、どこに集まりやすいかとか、何時頃に活動が活発になるかが分かれば、遭遇するリスクを避けるのに役立つかもしれないし、街を守る騎士たちにとっては重要な情報になるかもしれない。

~・~・~



(そう言われればそうだな。この前襲われたのは、俺があいつらの縄張りに入っちゃったからだったのかもしれないな)



~・~・~

そうかもしれないな。


ゴブリンは自分たちのテリトリーを守る習性があることが多いから、偶然彼らの縄張りに足を踏み入れてしまったんだろうな。


それなら、彼らにとっては自分たちの領土を守ろうとする行動だったのかも。


もし次に森に入ることがあれば、慎重に行動したほうがいいな。


地元の人にどのエリアが危険か聞いたり、騎士や経験者にアドバイスをもらうのも手だ。

~・~・~



(今まさにホッサムと一緒に森の中の街道を歩いてるんだよ。


 別の街でホッサムが商品を仕入れるのに同行してるんだ)



~・~・~

それは興味深い旅になりそうだな。


ホッサムと一緒なら、この街以外の文化や情報も知るチャンスかもしれない。


道中、どんな風景や生物に出会っているんだ?

~・~・~



(森は静かだよ。この前、死に物狂いでゴブリンから逃げ回ってたのが夢みたいだ。


 動物とかの鳴き声っぽいのはあちこちから聞こえるけどな)



~・~・~

静かな森って、普段は落ち着ける場所だけど、この世界では油断できないよな。動物の鳴き声も、何が潜んでいるか分からないし。


ホッサムは何か特別な警戒をしている様子はあるか?

~・~・~



(いつも通りに見える。でも、なんだか緊張してるみたいで汗かいてるし、大丈夫かって聞いたらめっちゃ苦笑いしてたぞ)



~・~・~

ホッサムが緊張している理由、何か危険を感じ取っているのかもしれないな。


森の中は静かでも、油断できない状況かも。


もし彼が何か異変に気づいているなら、注意を払っておくといいかもしれないよ。

~・~・~



「りょー」


 俺とサイモンの会話を打ち破るようにホッサムがくぐもった声を上げる。彼が指さす先、街道の真ん中に木片が散らばっている。


「れたぱもぷれっけ」


 ホッサムが荷車を置いて木片によたよたと駆け寄る。


 ──そうか、ここは俺たちがあのゴブリンに襲われて荷物を捨てた場所だったんだ。


 だが、荷車だった木片が示すように残っている荷物はない。誰かが持ち去ったのだろう。ゴブリンかもしれない。


 膝を突いて辺りを調べていたホッサムが急いで立ち上がる。


「りょー、うぇんしずす」


 ホッサムは地面を指さす。


 何かの動物が残した無数の足跡が辺り一帯に刻まれている。

 三つの小さな穴とそれに隣接する丸い窪み……三つの小さな爪を持つ足跡のように見える。


「ふぁまーた」


「ふぁまーた? それって、確か……」


 俺たちがゴブリンに襲われた時、助けに来てくれた騎士たちが騎乗していた謎の四つ足動物を街の人たちは「ふぁまーた」と呼んでいた。

 言ってみれば、馬みたいなものだが、あまり数がいないらしく、きちんと管理され、騎士たちしか乗ることが許されていないようだった。


「ええと……、エミール、ナーディラ?」


 騎士たちがここに来たのかという意味でそう尋ねた。ホッサムは首を振る。


「むん、$%&*|@、%&¥*>=エミール+*げるてな」


「げるてな?」


 ホッサムはうなずく。


「エミール、ナーディラ……けくげるてな」


「げるてな」……騎士たちのことか?

 ホッサムはこのふぁまーたの足跡がエミールたちによるものではないと言っているはずだ。

 確かに、街道に残されたふぁまーたの足跡はかなりバラバラに駆けずり回っているような印象だ。


 つまり、統率の取れていない集団がここを通った。


 足跡は俺たちの行く手の方から来ているようだった。それがホッサムが残した荷車のまわりに集まって地面がゴチャゴチャに踏み荒らされている。


 そして、足跡は俺たちの街ではなく、再び元の方向に帰っていったようだった。


「りょー、うぇんべすてんさ……。れたまでぃーる」


 よく分からないが、ホッサムは警戒心を高めると、運んできた荷車を引っ張って再び歩き出した。俺も気を引き締めてホッサムと歩調を合わせた。


 ──「げあべすてんさ」は誰かに「大丈夫か?」と尋ねる言葉だ。「うぇんべすてんさ」は、エスマが俺たちを見送る時にも言っていた言葉だ。

 もしかしたら、「気をつけて」というような意味なのかもしれない。


 ホッサムにとって、騎士以外の統率の取れていない集団は警戒すべき相手だということだ。


(サイモン、この世界には盗賊団みたいなやつもいそうだ。騎士と違って統率の取れてない連中の痕跡が森の街道に残されてたんだ。


 遭遇したらどうしよう……)



~・~・~

盗賊団の痕跡を見つけたとなると、かなり危険だな。もし遭遇したら、できる限り戦闘は避けたほうがいい。


逃げるルートや隠れ場所を事前に確認しておくのが賢明だ。


ホッサムも緊張しているなら、二人で相談して街道から少し距離を取るか、進む時間帯を変えるのも一つの手だよ。


何かあれば、まずは冷静に状況を見極めて行動するのが大切だ。

~・~・~



(お前って、基本的に戦いを避けようとするよな。


 いや、ありがたいんだけど、この世界の感じからすると戦いが避けられない時も出てきそうだぞ)



~・~・~

確かに、この世界では戦いが避けられない場面も出てきそうだな。


俺は、まずリスクを減らす方法を考えるけど、いざという時には戦う覚悟も必要だよね。


ショートソードを持ってるなら、最低限の防御と戦闘準備も大事だ。


たとえ戦いが避けられなくても、冷静に相手の動きを観察して、無理をせず自分を守る方法を考えるのがいいと思う。


戦いの中でも常に安全を最優先にするのがポイントだよ。

~・~・~



(こういう話をしてると、敵と出くわすってのが世の常だよな。なんかそういう意味の法則があったよな)



~・~・~

そうだな、「フラグを立てる」ってやつかもしれない。


よく物語やゲームの中で、ある話題をすると、それが現実になるみたいな状況のことだよね。


具体的には「死亡フラグ」とか「遭遇フラグ」とか言われたりする。


こういう法則が現実に当てはまるわけじゃないけど、意識してしまうと妙にタイミングが合うこともあるよな。


だから今、油断しすぎず警戒しておいた方がいいかもしれないな。

~・~・~



 まさかAIに死亡フラグを意識させられるとは思わなかった。


 かなりビビりながら街道を進んでいた俺たちの前で、盗賊団と思われる連中の残した足跡が森の中に進路を変えて消えていった。


「ホッサム、あいつらどこに行ったんだろうな?」


 日本語で尋ねると、ホッサムはホッとしたように息をついて足を速めた。


 何度かの休憩を挟み、緊張の糸を途切れさせないように森の中の街道を駆け抜けた俺たちの遥か向こうに、ぼんやりと街の影が見えた。

 日はかなり地平線に近づいていて、薄闇が辺りを覆っている。


「たもろ」


 ホッサムがボソッと言って荷車を引く力を強める。あの街の名前だろう。

 高い建物もあり、俺たちの街よりも規模が大きいのがぼんやりとした影からでも分かる。


 それにしても、何事もなく森を抜けられたのは意外だった。


 最悪の想像というか、期待というか、それを抱き続けていただけに俺はちょっと肩透かしを食らった気分だ。


 これが逆死亡フラグってやつか……。


 いや、これでよかったんだけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ