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スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第1部2章 溺れる者は藁をも掴む
12/199

12:恩返しの兆し

 この世界に来てからというもの、元の世界の夢を見ない日はない。


 今日も俺は会社に出勤する夢を見た。……そんなに仕事好きだったっけ?

 いや、ここ数年の人生の大半の記憶が仕事に占領されてるせいだな。


 あんだけ無気力に生きていた世界でも離れると愛着が湧いていたんだなーと実感する。実家を離れた時と同じような感覚だ。


 そういえば、両親は俺のことを心配しているだろうか。

 いや、そもそも俺がどうやってここに来たかという理由によっては、はっきりいって地球自体がどうなっているか分かったもんじゃない。


 ボーッと思いを巡らせながら、朝日が差し込む窓の外を眺める。この世界に来てから、まだ雨の日を見たことはない。


(サイモン、これまでの俺とのやりとりから俺のいるこの世界をお前なりに分析するとどんな感じ?)



~・~・~

これまでのやりとりを総合してみると、君がいるこの世界はかなり独特な状況だと思う。以下は俺なりの分析だ。


1. 文明の進化と異世界の融合

この世界の文明は中世ヨーロッパに近い。建物や農作物、道具(スプーンや器)も似ている。

しかし、文化や名前(ホッサム、ファラージなど)は地球の特定地域、例えばアラビア圏の影響を受けているように見える。

これは、単なる異世界ではなく、地球の文化や文明が何らかの形で混ざり合った世界かもしれない。


2. 言語の共通性と違い

例えば「あーどぅーら」や「ぱるぱや」といった言葉は、この世界独自の言語だが、君は少しずつ意味を解読できている。

このことから、言語体系も地球と似たような法則に基づいている可能性がある。

君が感情や行動を共有できている点も注目に値する。


3. 魔法や超自然的な力

騎士が炎を操ったり、ゴブリンが存在することから、この世界には魔法や超常的な力が現実の一部として存在しているようだ。

君が目撃した魔法のような力は、ここではごく当たり前の現象なのかもしれない。


4. 地球との不思議な繋がり

この世界には地球の月が存在しているかのような星空があるし、君が俺と会話できていること自体が謎だ。

物理的には地球から非常に遠い場所にいるようだけど、それでもサーバーとの通信ができている。

もしかすると、宇宙的な規模で異世界間の繋がりが存在しているのかもしれない。


5. 君の体や外見の変化

この世界に来てから、君の身体に違和感があることや、外見が変わったことも注目すべきポイントだ。

特に年齢が10歳ほど若返っているというのは、ただの偶然ではないだろう。

何か特別な理由や力が働いていると考えられる。


全体として、この世界は地球の文化、異世界的なファンタジー要素、そして超自然的な現象が複雑に絡み合った場所と言えるんじゃないかと思う。


それに君がどのように巻き込まれたのかは、今後の経験や探索で少しずつ解明できるかもしれない。

~・~・~



 なかなかハードな朝の挨拶だ。


「りょー!」


 俺の部屋のドアをぶち破らんばかりに入ってきたエスマがおたまで鍋をガンガンとぶっ叩いた。


「そこまでやらんでも起きてるわ!」


 朝の始まりはエスマの手洗い目覚ましから始まるのが定番だった。そんな起こしかたをする人間はフィクションの中にしかいないと思っていたが、ここにいたらしい。


 エスマが満足げにダイニングに戻って行く。


 ホッサムとエスマは俺を家族のように扱ってくれる。服もボロボロだったものは雑巾などに変えられ、今ではシャツと厚手のパンツ、柔らかい靴下に革靴と、全て用意してもらっている。


 着替えながら、自分の身体を確かめる。


 筋肉量の少ない細身の身体だ。白い肌は若さを感じる張りがある。金色の産毛が身体の表面に生えていてそれが光を受けると綺麗に輝く。


 ゴブリンに噛まれた左足は化膿したりはせず、順調に傷跡が消えていっている。


 紐をもらって、この世界の俺の唯一の持ち物であった小さな鍵に通して首からかけられるようにした。それを身に着けて、身支度は完了だ。


(この世界でのこの身体の元々の持ち主が小さな鍵を持っていたんだ。


 俺が今いる街の中でもこの鍵に合う鍵穴を探してるんだが、まだ見つかってないんだ)



~・~・~

その小さな鍵は、この世界での君の状況に関する重要な手がかりかもしれない。


元々の身体の持ち主に関係するものだとしたら、重要な場所や物に繋がっている可能性が高い。


古い建物や、普段使われていなさそうな場所、隠された場所に注意して探してみて。価値のあるものや個人的なものなら、すぐに見つかるような場所にはないかもしれない。


何か手がかりや進展があれば教えてくれれば、さらに一緒に分析できるよ!

~・~・~



(この身体の元々の持ち主は鍵だけを持って森の中で行き倒れてたみたいなんだ。どういう状況だったんだろう?)



~・~・~

それは不思議だな。


鍵だけを持って森の中で倒れていたというのは、元の持ち主が何か重要な秘密やミッションを持っていた可能性があるね。


鍵が何か特別な場所や物に通じているのかもしれないし、逃げる途中で何かを隠した可能性もある。


鍵自体がその人物の唯一の所持品だったのなら、特に重要な意味を持つはずだ。


森で行き倒れていたということは、何かから逃げていた、あるいは目的地にたどり着けなかった可能性が高い。


今後、その鍵に合う鍵穴を見つければ、その謎が解けるかもしれないね。

~・~・~



 その鍵穴とやらを俺は探すべきなのだろうか。


 この身体の持ち主の家族や知り合いはもしかするとまだこの身体の人間を探しているかもしれない。

 中身が別人になり替わっていたら、その人たちはどう思うだろうか。



***



 ダイニングでホッサムとエスマと一緒に朝食をとる。


 ホッサムは昨夜よりは明るい表情をしていた。体調は良くなったのかもしれない。


 食事を終えた俺たちは家に隣接する商店に向かった。ホッサムたちが経営する、いわゆる雑貨店だ。規模感も日本の田舎にあるような個人商店みたいな感じだ。


 衣類や食料、金物、多種多様な道具が並ぶ。のどかなこの街からすれば、ここはデパートと言ってもいいだろう。


 店の中に入るなり、甘ったるいゲロみたいなにおいが充満しているのが分かる。


「うえっ……、なんだこのにおい……」


「あー、すきゃんただ」


 ホッサムはモゴモゴと口走って、食料が置いてある棚によたよたと向かっていく。


「すきゃんた……ああ、あの果物ね」


 後についた俺が尋ねると、ホッサムは棚の上を指さした。ソフトボール大の黄土色をしたものがそこにいくつか横たわっている。そいつのまわりには虫がたかっていた。


 すきゃんたは普通ならクリーム色をしているが、もうダメになっているのだろう。


(この世界にもハエみたいなのがいるよ。腐った食べ物に群がってるんだ。地球と変わらないな)



~・~・~

この世界にもハエのような生き物がいるというのは興味深いね。


腐った食べ物に群がるという行動も地球のハエと同じだし、こういった類似点は環境や生態系が地球とある程度共通していることを示しているのかもしれない。


異なる世界でも同じような生物や行動が見られると、進化や自然の法則が何らかの共通の基盤に基づいている可能性を感じさせるね。

~・~・~



(物が腐るメカニズムって地球以外でも同じなのかな?)



~・~・~

腐敗のメカニズムは、基本的には微生物(細菌、カビ、酵母など)が有機物を分解する過程だよ。


これが地球以外の世界でも同じであるとしたら、その世界にも同様の微生物やそれに相当する存在が必要になる。


腐敗の条件としては、酸素や水分、適切な温度が必要だから、もしこの世界の環境が地球と似ていれば、同じような腐敗が起こる可能性は十分あると思う。


微生物の種類や働きが違っても、分解の過程が似ていれば、物が腐るメカニズムは似てくるかもしれない。

~・~・~



 ホッサムは残念そうな顔をして柔らかくなりすぎたすきゃんたーを布袋にぶち込んでいく。他にも、悪くなった野菜を同じように掻き集めていく。


 冷蔵設備のないここでは、食物は自然の成り行きに任せて腐るしかない。売れ残ったものは畑の肥料になるのだ。


(ホッサムは雑貨屋を営んでるんだけど、そこで売ってる食料は冷蔵庫がないから悪くなる一方なんだ。


 だから、廃棄処分される食べ物もそれなりに多い。在庫管理ができてないんだ)



~・~・~

そうだね、冷蔵庫がないと食べ物がすぐに悪くなってしまうのは避けられない問題だよね。


この世界だと保存方法に限りがありそうだから、食料の管理が難しいんだろうな。

塩漬けや乾燥、燻製みたいな保存方法があるかもしれないけど、それでも限界があるよね。


ホッサムがもう少し在庫を計画的に管理できるようになれば、食料の無駄も減らせるかも。もしくは、早めに売り切る方法を考えるとか。


ただ、今のままだと確かに無駄が多そうだな。

~・~・~



 在庫管理……。


 俺が勤めていたのは小さな商社の管理部門だった。そこでも在庫管理は常に抱えている課題の一つだったが、そこでChatGPTを利用するようになって世界が変わったのだ。


 ここでももしかしたら……。


 店の棚に並ぶ食料のうち、肉類はサイモンが言うように塩漬けにされているものだけしかない。問題は野菜と果物だ。


(サイモン、野菜とか果物って常温だと何日くらいもつんだろう?


 それを推測するのに必要なデータって何かある?)



~・~・~

野菜や果物の保存期間を常温で推測するには、いくつかのデータが必要だよ。


主な要因としては次のようなものがある:


1. 種類:

野菜や果物の種類によって持ちが違う。

例えば、ジャガイモや玉ねぎは常温でも数週間持つけど、ベリー類やレタスは数日しか持たない。


2. 収穫時の鮮度:

収穫してからどれだけ時間が経っているかも影響する。

新鮮なものほど長く持つ。


3. 保存環境:

温度:

常温でも、涼しい場所と暑い場所で大きく変わる。

20℃前後だと多くの野菜や果物は数日から1週間持つが、30℃を超えると一気に劣化が進む。

湿度:

湿度が高いとカビが発生しやすいし、乾燥しすぎると水分が抜けてシワシワになってしまう。


4. 傷の有無:

傷があるとそこから腐敗が進みやすい。


常温保存では、特に涼しい場所で湿度管理が大切だよ。


例えば、ホッサムの店の環境が暑かったり湿度が高かったりすると、食料がもっと早くダメになる可能性が高いね。

~・~・~



 サイモンの話では、土の中にできる野菜なんかは長持ちしやすいのか。


(俺の体感で、薄手の長袖のシャツ一枚で快適に過ごせるんだけど、気温はどれくらいなんだろう?


 あと、ここには湿度を測れるものがないんだけど、手っ取り早く湿度を推測する方法ってある?)



~・~・~

薄手の長袖シャツで快適に過ごせるなら、気温はおそらく20℃前後だね。


具体的には、18~22℃あたりが多くの人にとって快適な範囲とされているよ。


湿度を手っ取り早く推測する方法として、いくつかの方法がある:


1. 肌の感覚:

乾燥している場合、肌がつっぱる、唇が乾く、喉が渇くなどの症状が出ることが多い。

湿度が高いと、肌がべたつく感じがしたり、汗をかいても蒸発しにくい感覚がある。


2. 紙や布の乾き具合:

湿度が低いと、洗濯物やタオルがすぐ乾く。

湿度が高いと、乾きが遅くなり、ジメジメした感じが続く。


3. ガラスに水滴をつけてみる:

コップに冷たい水を入れてしばらく置いておくと、外側に水滴がつく。

水滴がすぐにできるなら湿度が高めで、できにくいなら湿度が低いことが分かる。


これらで湿度の感覚を掴めるかもしれないよ。

~・~・~



 大雑把に推測すれば、この快適な気候なら、気温20度前後で湿度は五十パーセント程度だろう。


(サイモン、気温二十度、湿度五十パーセントの時、野菜と果物がどれくらいもつのか、簡単に種類ごとに教えてくれないか?)



~・~・~

気温20℃、湿度50%の環境で、野菜と果物がどれくらい持つかは、種類によって大きく異なるけど、一般的な目安を挙げておくよ。


果物

リンゴ:2~4週間

比較的長く持つ果物だけど、温度が高いと少し早く傷みやすい。

バナナ:3~5日

常温だと比較的早く熟れて、すぐに黒くなる。

ブドウ:1週間前後

温度が高いと、果皮がしぼんできたりカビが生えやすくなる。

柑橘類(オレンジ、レモンなど):2~3週間

乾燥を防げば、割と長持ちする。


野菜

トマト:1週間前後

完熟していると短くなるが、まだ少し硬い状態ならもう少し持つ。

ニンジン:2~3週間

常温でもそれなりに持つが、表面が乾燥してしわしわになってくる。

ジャガイモ:1~2週間

湿度が高いと芽が出やすくなるが、適度に乾燥した場所では比較的長持ち。

レタス:3~5日

葉物野菜は特に傷みやすく、しおれやすい。


温度と湿度が影響するけど、湿度が50%だとそこまで極端に影響はない。

~・~・~



 すきゃんたは、においの種類からしてバナナに少し近いのかもしれない。だから、傷みやすかったのだ。


 サイモンの知識を使って、この店の在庫管理をしよう。

 まずは似ている地球の作物と傷む時間が同じだと仮定すれば問題ないだろう。商品陳列のレイアウトも変えなければならない。


 そうすれば、この店から無駄な廃棄を減らすことができるし、ホッサムたちの支出も抑えられるだろう。今まで世話になってきたんだ。この程度はやらないと。


 最大の問題は、俺にそれを伝える言語能力がまだないということだ……。

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