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スキル「ChatGPT」で異世界を生き抜けますか?  作者: 山野エル
第3部5章 ChatGPTは異世界で発生した事件を解決できるか? 1
115/199

115:サイモンとのすり合わせ

 執法院の外、灰色の空から降り注ぐ雨は多少弱まったとはいえ、まだ続いていた。


「これからどうしましょうか?」


 ヌーラが困った顔を俺に向けてくる。


 成り行きで事件を解決することになったとはいえ、何から手をつければいいか分からない。


「僕は、ホロヴィッツ・ジャザラの容態が気になる」


 イマンは厳しい表情を暗い空に向けていた。


「おそらく、カビール第一大公公子がついているだろうから、公宮にいるのかもしれない。だが、僕たちが公宮に立ち入るのは難しい。となると、魔法・精霊術研究所でフェガタト・ラナに会うのを期待するしかない」


 ジャザラとカビール、ラナは幼馴染だ。だから、ジャザラの様子をラナは見知っているだろう。その情報を素早く手に入れられないのは、かなりのネックだ。


 ──この世界では通信技術がない。だから、行き違いなんかが簡単に起こってしまうんだ……。


 会社からの連絡が煩わしいと思っていたが、今では距離を無視してやりとりができることのありがたさが身に沁みて分かる。


「じゃあ、一度研究所に向かうか」


 ナーディラがそう言うと、イマンはうなずいて近づいてきたルルーシュ印の公用車に手を挙げた。



***



 公用車に乗り込むと、隣に座って来たアメナが小さく言った。


「アメナとリョウは心が通じておる。離れた場所でも言葉を交わすことができるかもしれんぞ。お互い別行動をして見聞きしたことを共有できるやもしれん」


「……確かに。でも、俺には相変わらずそのやり方が分からないんだよな」


 アメナが頬を膨らませる。


「リョウはアメナに対する思いが物足りんからじゃ」


「いや、だって、それはお前……」


 ふとナーディラと目が合う。彼女は首を傾げる。


「ん? なんだ?」


「いや、なんでもない!」


 ナーディラの目が疑わしそうに細められる。


「おい、アメナ、リョウとくっつきすぎだぞ。離れろ」


「やかましいわい」


 アメナが俺の腕をギュッと抱き寄せる。……勘弁してくれ。


 じっと考え込んでいたヌーラは俺たちのやりとりなど目に入っていない様子で、喋り始めた。


「実際、ジャザラさんを暗殺しようとしたのは誰なんでしょうか? ルルーシュ家の継承問題なら、その権利を持つ人が怪しいということになりますよね?」


 イマンが苦い顔をする。


「考えたくない話だ」


「心当たりが?」


「ルルーシュ家では現在、第一大公公子であるルルーシュ・カビールと第二大公公子であるルルーシュ・ラビーブの二人が正統な継承権を持っている」


「え、じゃあ……」


 結論を急ごうとするヌーラにナーディラが口を挟む。


「いやいや、待て。継承権を争っての事件なら、狙われるべきはカビールの方だろう」


「あ、確かにそうでした。わたしとしたことが……」


「つまり、今回の事件は継承権争いとは関係ないと?」


「そうとも言い切れないかもしれないよ、リョウ」


 イマンは走り出した車の窓から街並みを眺めながらそう言う。


「どういうことですか?」


「犯人がカビール第一大公公子に対してホロヴィッツ・ジャザラとの婚姻に警告を発する目的を持っていたとしたら、そこには継承権が絡んでくるだろう」


「え、継承には婚姻の儀が必要なんですか?」


 イマンがうなずく。


「子をなすということを示すためには必要だ」


「つまり、カビールさんを排除しなくても継承権争いから脱落させることもできると?」


「そういうことになるね」


 なんだかすごくガバガバな感じもするが、子をなす・なさないとか魔法が使えない血を残すとか、そういう考えが根底にあるのなら、分からなくもない制度だ。


「ところで、現場となった『フォノア』って談話室はどこにあるんだ?」


 ナーディラがイマンに問いかけると、彼は車内のボックスから地図を取り出した。そして、地図の一点を指さしてみせる。


「ここが『フォノア』だよ」



「フォノア」の位置

挿絵(By みてみん)



 俺はイマンが指さした場所を頭の中でポイントして、サイモンに念じてみた。


(サイモン、事件が起こった場所を地図上に赤い丸でポイントしてみたけど、分かるか?

『フォノア』っていう談話室が事件現場になったんだ。談話室ってのは、貴族たちが交流する場で、クローズドな話し合いが行われることも多いらしい。


 お前って、画像情報はメモリに蓄えられるの? できるんなら憶えといてほしいんだけど)



~・~・~

画像情報自体を記憶として蓄えることはできないけど、内容をテキストや特徴として記憶することなら可能だよ。

例えば、「フォノア」という談話室の場所が地図上の中心部に近く、貴族の交流が行われる重要な場であるという情報を覚えておける。


この情報を元に、他の事件や行動計画と結びつけて考えたい場合には、どんな点を優先的に記録しておけばいいか教えてくれる?

~・~・~



(なるほど、分かった。


 実は、あれからレイスと手を組むことになって、事件の真相を調べることになったんだ。今後、色んな目撃情報とかを地図に落とし込んで、もしかしたら犯人の動きを地図上で把握することになるかもしれない。そこでお前の力が役に立つんじゃないかと思ってさ。

 例えば、地図情報は憶えなくていいけど、どこそこで誰かがどっちの方向に行ったのを見た、って証言があったとしたら、予想できるルートなんかを地図上に示せたりできるの?)



~・~・~

もちろん、それならできるよ!


証言の情報を基に、地図上で予想されるルートや行動範囲を示すことは得意だ。

例えば、「フォノアから北東に向かう道を使った」という証言があれば、その方向に通じる主要な道や分岐点を地図上で示せるし、時間や距離の条件が分かれば移動可能な範囲も計算できる。


もし証言や情報が集まってきたら、それを整理してくれれば視覚化してみせるよ!


調査が進むほど精度の高い動きが見えてくると思う。


必要なときは声をかけて!

~・~・~



 ──かなり使えそうだな。もし複数のポイントで怪しい人影を見たという目撃証言が得られれば、犯人の逃走ルートも予測できる。


(今後、事件に関わっている人の証言をお前にまとめてもらうことになるかもしれない。

 たぶんお前のメモリの容量的に証言情報を全部記憶するのは難しいだろうから、逐一得た情報をどんどん追加してお前に投げれば大丈夫か?)



~・~・~

うん、大丈夫だよ!証言情報や追加された新しい情報は、その都度整理しながら扱えるよ。


必要に応じて古い情報との関連性を見つけたり、矛盾点を指摘したりもできる。


ただ、膨大な量になると全部を記憶しておくのは難しいから、調査の進行に合わせて重要な情報を優先的に保持し、古くなったり不要になった情報は整理しながら進める形になると思う。


だから、リョウが「これが重要だ!」と思ったポイントや、特に重視したい部分はその都度教えてくれると助かる!


まとめた情報が必要な時は一声かけてくれれば、すぐに一覧にしたり地図上に反映したりできるよ!

~・~・~



(今後、事件に関しての議論をお前としたいから、事件の話をする時には俺が論理的におかしなことを言ってたらちゃんと指摘してほしい。本当の犯人を見つけ出したいんだ。俺もお前の推理に変なところがあったら指摘する。

 お互いに推理をブラッシュアップしていこう)



~・~・~

了解。お互いに意見を出し合って推理を深めていこう。


何か気になる点や新しい証言が出てきたら、いつでも共有してくれ!

~・~・~



 よし、これでナーディラたちの意見も合わせれば、かなり強力なブレスト体制が整う。


 暗殺未遂事件の調査なんで気後れしていたが、サイモン次第ではなんとかなるかもしれない。


 俺はこれまで得た情報をとりあえずサイモンに共有してみることにした。


(サイモン、とりあえず今まで分かったことを共有するよ。


・事件の発生は、十六月十六日土の刻三

・事件現場は談話室「フォノア」

・被害者はホロヴィッツ・ジャザラ

・ジャザラは毒を盛られた

・毒は酒を入れていた杯の中に入れられていた

・ホロヴィッツ・ジャザラは現在昏睡状態で、心臓が速く動き、体温の低下、赤い発疹が見られるという

・現場からはジャザラの嘔吐物、下痢の排泄物が見つかっている

・毒は死鉄鉱から抽出できる

・死鉄鉱は十六月十四日の土の刻四頃に盗まれた

・盗まれた死鉄鉱からは人一人を死に至らしめるのに十分な量の毒を抽出できるらしい

・「フォノア」には、料理が運び込まれていた

・料理を運ぶ業者には、十六月十六日土の刻三に「フォノア」に料理を運ぶように依頼があった

・「フォノア」では利用契約者には鍵が貸与され、その鍵で「フォノア」への出入りや利用予約の手続きが行える

・「フォノア」の利用予約は貸与された鍵を使って入ることができる受付の帳簿に必要事項を書き入れることで完了できる

・「フォノア」の利用予約は十六月十五日の土の刻二に行われた(「フォノア」側の人間は帳簿に必要事項を記入した人物を見ていない)

・料理を運ぶ行派への依頼は、「フォノア」の利用予約の際に添えられていた書き置きで指示されていた

・「フォノア」の利用予約の名前は「ホロヴィッツ・ジャザラ」になっていたが、これまでジャザラは自分の名前で利用予約を入れたことはない)



~・~・~

情報を共有してくれてありがとう。


これまでの情報を元に、事件の詳細を整理しつつ、矛盾や手がかりを精査していこう。何か新たな証言や物的証拠が出てきたら教えてくれ。


それに基づいて推理を進めよう。

~・~・~



(今は、イマンがジャザラの容態が気になるっていうんで、ジャザラの幼馴染でもあるラナに会えるかもしれないからって魔法・精霊術研究所に向かってるよ。


 事件の情報から何か指摘しておきたいこととか知りたいこと、捜査方針なんかはある?)



~・~・~

イマンがジャザラの容態を心配しているのは重要な感情的つながりだね。その状況を活用してラナから情報を引き出せる可能性もある。


以下にいくつかの視点や捜査方針を提案するよ:



1. ラナが知っていそうなことを確認する

死鉄鉱の知識:

ラナが研究者であるなら、死鉄鉱やその毒の抽出について詳しいかもしれない。その用途や扱いの難しさについて何か情報を得られるか確認してみて。


ジャザラとの関係:

幼馴染として、ジャザラの最近の行動や交友関係に何か変わったことがなかったか尋ねる。


「フォノア」に行った可能性:

ラナが事件前後に「フォノア」を訪れていた、あるいは知っていた場合、それが重要な証言になる。



2. 事件の背景情報を探る

フォノアの利用:

ジャザラが「自分の名前で予約を入れたことがない」という点から、誰が予約を入れたのか調査する必要がある。ラナがその件に何か心当たりがあるかもしれない。


料理や杯について:

料理を運んだ業者の依頼書や杯の入手経路にラナが関わっている可能性が微小でもないか確認する。



3. 体調や毒の特徴

ジャザラの症状(心拍数増加、体温低下、赤い発疹など)が何に起因するのか、ラナの知識が役立つ可能性がある。死鉄鉱の毒がこれらの症状を起こすのか確認しよう。



4. 捜査方針としてのポイント

動機と関係性:

犯行の動機が友情や復讐、あるいは利益目的など複雑な人間関係に起因している可能性を探る。


毒物の流通経路:

毒がどこからどのように調達され、誰がその行動に関与しているのかを追跡。


鍵と予約:

「フォノア」の利用予約や鍵の管理に不自然な点がないか、特に他人の名前を使った可能性を追及する。



ラナとの接触が情報収集の鍵になりそうだ。彼女の反応や態度にも注意を払って、もし不自然な点があれば後で再考できるよう記録しておくといい。

~・~・~

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