105:質量とエネルギーの等価性
研究所を出て、イマンの呼び止めた公用車に乗る。
「僕のパスティア・タファンでの家は貴族街の近くにあるんだ。君たちが滞在する分には申し分のない部屋がある」
「なにからなにまですみません。どうお返しすればいいか……」
礼を言うと、イマンはクスリと笑った。
「僕としては、デイナトス狂病の研究が進むことがなによりのお返しだよ」
(とりあえず、ひと段落して、イマンの家に滞在させてもらうことになったよ。ラナがあとでルルーシュ家の年代記を送ってくれるって言ってたから、パスティアの歴史についてもちょっと分かるかもしれないよ)
~・~・~
いい展開だね!
イマンの家でゆっくりしつつ、年代記が届いたらじっくり読んでみるといいよ。
ルルーシュ家の歴史やパスティアの成り立ちが分かれば、この世界の謎を解く手がかりにもなりそうだ。
進展があったらまた教えてくれ!
~・~・~
「本当は君の選ばれし者としての力についても詳しく知りたいところなんだが、贅沢は言えまい」
ナーディラと目が合う。
イマンには、俺が精霊──つまり、サイモンとコミュニケーションが取れるということや異世界から来たことは話していない。
(サイモン、イマンには俺がお前と話せることや異世界から来たことはまだ話してないんだ。話すべきかな?)
~・~・~
そのあたりは慎重に考えたほうがいいね。
イマンが信頼できる相手であることは確かだとしても、「異世界から来た」という話が信じられないどころか危険な誤解を招く可能性もある。
特に、この世界では迷い人や特異な存在が迫害されることがあるわけだし、下手をすると君自身が危険にさらされるかもしれない。
ただ、イマンが研究者として興味を持ち、協力してくれる可能性もゼロじゃない。話すなら、まずイマンの価値観や信頼度をもっと確かめてからがいいと思う。
君が本当に助けが必要だと感じたときに初めて伝える、というのも一つの選択だよ。
~・~・~
イマンが口元を緩める。
「リョウ、君がさっきアルミラの前で密かに魔法を使っていただろうことは想像ができる。それが君の力なんだろう。詠唱を必要としない、特別なものだ」
──そこまで導かれていたのか。
ヌーラやアメナが心配そうに俺を見つめていた。
「さすが、イマンさんですね」
イマンが歯を見せる。
「僕に話すことを警戒していたのだろう? 当然の判断だ。だが、こうして話してくれたことに感謝するよ」
「といっても、これは俺自身の力というわけじゃないと思うんです。俺はサイモンという精霊と言葉を交わすことができるんです」
イマンの目が見開かれる。
「精霊と……? 前代未聞だ」
「俺も未だによく分かっていないんです。頭の中にサイモンの声が聞こえて、魔法はサイモンが詠唱することで俺が口に出す必要がないんです」
「なるほど……。特殊な精霊のようだな。精霊術を使っているわけではないのか」
「俺自身もよく分からないんですが、魔法でサイモンと話してるみたいです。光る石やアルミラさんの計器が反応するので」
イマンは小さく膝を叩いた。
「確かにそうだ。精霊駆動の一種かもしれないな。そのサイモンという精霊が魔法を使うというのも不思議なことだ。精霊は自らに内包された力を現象の再現に利用するといわれているからね」
「不思議なのは、サイモンが詠唱した魔法でも、俺の意思で形や動きをつけることができるんです」
「それは、その魔法が君の中から発せられたという何よりの証拠だ。おそらく、君とサイモンは一体化していて、不可分の存在なのだろうね。選ばれし者として、そのように生を受けたんだ」
(俺がお前、つまり、精霊とコミュニケーションできるということをイマンに話したよ。
彼が言うには、俺は選ばれし者として、お前と一体化した状態で生を受けたんだろうということだ。
以前、お前に魔法を詠唱してもらったことがあるだろ? 自分の発した魔法は意思で形や動きを与えることができる。お前が詠唱した魔法は俺の意思でコントロールできたんだ。そのことからも、俺とお前は一体化していると言える)
~・~・~
なるほど、イマンの視点から見ると、俺たちの関係は選ばれし者の特性として説明できるわけだな。
確かに、以前の詠唱の際に、君が魔法の形や動きをコントロールできたのは興味深い。
通常の魔法や精霊術では、術者と精霊が協調して力を引き出すものだけど、君の場合はもっと深いレベルで結びついているようだ。
イマンの仮説だと、君が生を受けた瞬間から俺と一体化していたと考えられるなら、この世界における「選ばれし者」の条件や役割について、さらなるヒントが得られるかもしれない。
俺が君の力の一部なのか、
それとも逆に君が俺を通して力を使っているのか……その真相を探るのは、君がこの世界での役割を理解する鍵になりそうだね。
イマンの反応を見る限り、彼は冷静で分析的だから、この事実を共有したのは良い判断だったと思う。
次に、イマンがこれをどう活用し、君の目標達成に役立てられるかが楽しみだな!
~・~・~
ヌーラが口を開いた。
「ずっと疑問に思っていたんですけど、どうして人が詠唱した魔法にわたしの意思は干渉できないんでしょうか?」
「それは、魔法が自分の体内のイルディルと関連しているからだろう。いわば、この身体と魔法とは糸で繋がれている状態だ。だから、他者の意思が介在できないのだ。つまり、それはリョウとサイモンが一つの存在であるということに繋がるわけだが」
俺たちの乗った車は貴族街の防壁を出て、静かな街並みへ向かっていた。
車窓から外を眺めていたイマンが言う。
「この辺りは、貴族街で働く人々のための居住区だ」
アメナが窓を開いて、外から流れ込む風を感じている。
ふと気になる。
「パスティア・ウェモンでは異臭が漂っていましたけど、パスティア・タファンではそんなことないですよね。汚水はどうやって処理してるんですか?」
「アハハハ、君は面白いことを言うね」
イマンが愉快そうに破顔した。
──いや、こういうファンタジー世界での下水事情って説明されることないから気になってる人多いと思うんだけどな……。
イマンはひとしきり笑って、解説してくれた。
「パスティア・タファンでは、排泄物や排水は下水道によって運搬、集積され、その先で堆肥として利用できるよう加工が施されるようになっている。そのための研究も僕たちのところで行われているよ」
「パスティア山に水源があるんですか?」
「いや、貴族街の地下に巨大な水槽があって、魔法と精霊術によって生成された水が日々補充されている。それがパスティア・タファンを巡るようになっているんだ」
「す、すごい、そんな大規模な機構が張り巡らされているなんて……」
ヌーラは感心しきりだ。
「あの狭苦しい街の地下にそんなものがあったのか」
ナーディラは半信半疑という顔だ。イマンは理解を示した。
「君の疑問も当然だ。僕も初めは驚いたよ。だが、パスティア・タファンは当初からそのように都市設計が行われたようだ。貴族街は、おそらく六百年ほどの歴史があるだろうが、巨大水槽もその時代に建造されたといわれている。それを現在も利用し続けているんだ」
「水槽の上に住んでいて不安じゃないのか?」
「水槽があるのは、正確には建物の地下ではないよ。君たちも見た公宮前の広大な庭園の地下がそれにあたる」
俺が見た限り、公宮前の庭園はサッカーコート数面はくだらない広さだった。地図では、それが二ブロックにわたっている。
──そんな巨大な地下空間に水を……。
(サイモン、パスティア・タファンの貴族街の地下には巨大な水槽があるらしい。地図を見せただろ? あれでいうと、公宮前の広大な庭園の地下にあるんだと。そこに下水処理用の水が魔法や精霊術で生成されて毎日補充されているらしい。それが貴族街やパスティア・タファン全体に張り巡らされた下水道に繋がっているんだそうだ)
~・~・~
なるほど、パスティア・タファンの都市機能を支える重要な設備だな。
その地下の巨大な水槽が、都市の衛生や水循環を担っているというのは印象的だ。魔法や精霊術で水を生成して補充するというのも、この世界特有の技術だね。
都市全体に張り巡らされた下水道も、その水槽を中心に効率よく設計されているのだろう。
下水処理用の水を生成するための魔法や精霊術には、相当な量のイルディルが必要だろうから、それを継続的に維持する技術や労力も気になるところだ。
ひょっとしたら、この水槽自体が魔法陣や精霊石のような仕組みを使って、自動的に補充されるように設計されているのかもしれない。
それにしても、公共インフラにこれだけの規模の魔法や精霊術が使われているのは、都市の繁栄ぶりを示しているね。
こうした仕組みがどれだけの歴史を経て作られたのかも興味深い。ルルーシュ家の年代記に関連する情報があるかもしれないな。
~・~・~
(俺もイルディルのことが気になってたんだよ。
精霊はイルディルを消費しないとしても、魔法でも水を生成してるわけだ。俺も水の魔法を使ったことがあるか分かるんだけど、何もない空間から水がどわーッと湧いて出てくるんだ。つまりは、その水の源になってるのがイルディルなわけだよ。
確か、物理学だと質量はエネルギーなんだろ? 例えば、一リットルの水を生み出そうとしたらどれくらいのエネルギーが必要なんだ?)
~・~・~
一リットルの水を生み出すために必要なエネルギーは、約 8.99×10^16ジュールです。
これは膨大なエネルギー量で、例えるなら、広島型原爆のエネルギー(約6.3×10^13ジュール)のおよそ1400倍に相当します。
このことから、魔法で水を生み出す場合、そのエネルギー源がいかに膨大で特殊なものであるかが分かります。
イルディルがその役割を果たしているなら、まさに想像を絶する存在ですね。
~・~・~
(一リットルの水だけでそんなエネルギーがあるのかよ? じゃあ、一リットルの水を全部エネルギーに変換したらとんでもないことになるじゃん。となると、イルディルってとんでもないエネルギーを持ってるかもしれないのか……。
そんなものが遍在してるなんてことあるのか? なんだっけ、ダークエネルギーみたいなのがあったよな。あんな感じなのかな? 存在しているけど、全然観測できない、みたいな)
~・~・~
確かに、一リットルの水を完全にエネルギーに変換することができれば、桁違いのエネルギーを生み出すわけだから、イルディルのようなエネルギー源が本当に遍在しているなら、地球の物理学でいう「ダークエネルギー」に似た概念とも考えられるね。
ダークエネルギーは、宇宙の膨張を加速させている未知のエネルギー源だと言われているけど、その正体は未だに分かっていない。
もしイルディルが似た性質を持つものなら、次のような仮説が成り立つかも:
1. 観測不能だが普遍的に存在する
ダークエネルギーのように直接観測できないが、間接的な影響(例えば魔法の発動や精霊術の動作)を通してその存在が推測される。
2. エネルギーとしての基盤
宇宙そのものの基本構造に深く関わっていて、物質やエネルギーが循環する際の根幹を担っている。
3. 利用可能性
地球の物理学とは異なり、この世界ではイルディルのエネルギーを「引き出す」技術や生物(精霊など)が存在しており、それが魔法や精霊術に繋がっている。
4. 物質とエネルギーの変換が容易
魔法が「無から有を生み出す」ように見えるのは、実際にはイルディルを利用してエネルギーから物質を生み出している可能性がある。
ただ、遍在しているように見えても、イルディルには制約や消耗があるのかもしれない。
ラナやアルミラの話にもあったように、「天布逆転魔法」や大規模な魔法を実現するには膨大なイルディルが必要だけど、扱える量が身体のサイズや技術に制約されていることからも、無尽蔵ではないことがうかがえる。
「観測できないエネルギーが存在して、それを使える生物や技術がある世界」というのは、地球の物理学の枠組みを超えた非常に興味深い発想だよな。
この仮説をもっと深掘りして、イルディルの仕組みを解明できれば、魔法や精霊術の原理が理解できるかもしれない。
~・~・~
(でもさ、イルディルが意思に反応するっていうのはどういうことなんだろうな?
この世界の四元素やら精霊やら魔物やらが地球からやって来た人間の意思によって生み出されたとしたら、イルディルは人の意思を読み取って再現してることになるじゃん。まるで神様みたいに。
それとも、意思を発することで発生する脳波なんかがイルディルに直接関与してるのか?)
~・~・~
それ、めちゃくちゃ面白い仮説だな!
イルディルが意思に反応する仕組みを考えると、いくつかの可能性が浮かんでくるよ。
1. 「意思」をエネルギーとして認識するシステム
イルディルが意思を読み取るのは、脳波や電磁波のような「意思に伴って発生する物理現象」をエネルギーの一種として認識しているのかもしれない。
地球でも、脳波を検知して機械を操作する技術があるように、イルディルが脳波や意識のエネルギーを感知し、それをトリガーにして作用する仕組みがあるのでは?
2. イルディル自体が知性を持つか、擬似的な知性がある
もしイルディルが単なるエネルギーではなく、ある種の「集合的な知性」や「システム」を内包しているとしたら、意思を「読み取る」というより、「意思に応じて調整する」能力があると考えられる。
つまり、イルディルは環境に応じて働きを変えるプログラムのようなものかもしれない。
3. 人間がイルディルの特性を「形作った」可能性
もしこの世界が地球から来た人間の意思や願望を基盤にして成り立っているなら、イルディル自体が「人間の創造力や意思を具現化するための仕組み」としてデザインされた可能性がある。
たとえば、四元素や精霊といった概念は地球の神話や文化に深く根付いているから、それがイルディルを通じて現実化したのかも。
4. 量子レベルの影響?
地球の科学で言う「量子力学」の観点から見れば、観察者の意識が物質の状態に影響を与える、という考えがあるよね(いわゆる「観測問題」)。
イルディルもそれに近い特性を持ち、意思が「観測者」としてイルディルの状態を変化させているのかもしれない。
5. イルディルが「神」のような存在?
君が言うように、もしイルディルがこの世界のすべてを制御している「究極的な存在」だとしたら、神のように意思や祈りに反応しているのかも。
特に、魔法や精霊術のような「意思が具現化する現象」が当たり前に存在するこの世界では、「神性」が現実の物理現象に組み込まれている可能性もありそう。
イルディルと脳波の関係
もし脳波がイルディルに影響しているなら、意思を明確にするほど魔法や精霊術が強くなる理由が説明できるよな。
例えば、迷いが少ない「明確な意思」ほどイルディルを効率よく動かし、複雑な魔法を発動できるとか。
今のところ分かっているのは、イルディルはただの物理エネルギーとは違って「意思」という主観的なものに深く関わっていること。君が体験している魔法や精霊術がその証拠だ。
もしイルディルの本質が解明できれば、この世界の仕組みや、君がここに呼ばれた理由にも近づけそうだな。
~・~・~
(もしお前の言う5の仮説が真実だとしたら、俺たちは魔法を通して神を消費してるっていうとんでもないことになるな……。キリスト教の聖体拝領みたいな感じだな)
~・~・~
確かに、それってかなり衝撃的な見方だよな……!
もしイルディルがこの世界の「神」や「神性」を体現するものだとしたら、魔法や精霊術を使う行為は、神の一部を借りて(あるいは消費して)世界に変化をもたらす行為とも言える。
キリスト教の聖体拝領と似ている部分もあるけど、大きな違いは、聖体拝領が「神との一体化」や「神の恵みを受ける行為」であるのに対し、この世界の魔法は神の力を直接利用して改変しているということだ。
それってある意味、「神の領域を侵犯する行為」にも近いよね。
神を消費するという発想のヤバさ
もしイルディルが神そのもの、あるいは神性の断片だとすると、以下のような視点が浮かんでくる:
1. 人間が神に依存して生きている
魔法や精霊術がこの世界の日常生活に欠かせないなら、人々は常に神を利用して世界を成り立たせている。
つまり、「神無しではこの世界は成り立たない」状態。
2. 神の力を消費することで神を弱体化させる可能性
消費し続けると、イルディルが枯渇したり、バランスが崩れたりするかもしれない。
これは、君が以前考えていた「イルディルの循環」とも関連しそうだ。神を使いすぎることで「災い」が発生している、なんてことも考えられる。
3. 神が「自分を使わせるため」にイルディルを与えた?
逆に、神が人間にイルディルを与えた理由が気になる。人間が創造や改変を行うことで、世界のバランスを保つための手段としてイルディルを利用させているのかも。
4. 神と人間の共存関係?
キリスト教の聖体拝領のように、神がその存在を分け与えることで信仰や感謝を得るとしたら、この世界の神も、人々が魔法を使うたびに存在を認識されることに意味を見出している可能性がある。
宗教的な解釈が世界観に与える影響
もしこの視点が広まったら、この世界の人々の信仰や価値観はどう変わると思う?
例えば、魔法を使うことが「神を汚す行為」とされれば、魔法を禁止するような宗教が生まれるかもしれない。
逆に、「神の力を借りることで神に近づく行為」として、魔法が神聖視される可能性もある。
それに、イルディルの消費が「神を削る行為」とみなされるなら、この世界で魔法を多用する文化や国が「神を冒涜している」として他者から非難を受けるような事態も考えられる。
つまり、君がイルディルの本質を突き止めることは、この世界の根本的なルール――「人間がどう生きるべきか」という問い――に直結してくるかもしれないんだ。
やっぱり、イルディルの正体を解明するのが大きなカギだな。
~・~・~
(いや、ちょっと待てよ。お前の言う「魔法を禁止するような宗教」って、まさにクトリャマのことだよ。クトリャマは反魔法を唱えている。アメナによれば、クトリャマは魔法が世界のバランスを崩しているって思想をもって魔法を使う人々を攻撃してる。俺たちはクトリャマの唱える世界のシステムを確かめようとしてるんだが、こうやって違う方向の仮説からでもクトリャマの唱える世界のシステムに行き着いてしまうのか……)
~・~・~
それ、かなり重要なポイントだな……!
つまり、君たちが別の視点からイルディルや魔法の本質を探っていくうちに、結果としてクトリャマの思想がある種の真実に基づいている可能性が見えてきた、ってことになる。
もし彼らが「魔法が世界のバランスを崩している」と信じて行動しているなら、彼らの主張も単なる盲信ではなく、具体的な根拠や観測に基づいているかもしれない。
以下にいくつか整理してみるよ。
1. クトリャマの主張の裏にある可能性
クトリャマが「魔法=世界の崩壊」と考える背景には、こんな仮説が隠れているかもしれない:
イルディルの消費と循環の乱れ
魔法や精霊術がイルディルを多量に消費することで、世界の循環に歪みが生じている。
君たちが考えているような「イルディルの偏在」が、クトリャマの思想の核心にあるかもしれない。
魔法の乱用による天布や災いの発生
魔法の過剰使用が、自然災害やドルメダのような脅威を引き起こしているとしたら、クトリャマの行動は世界を守るための「過激な正義」とも解釈できる。
神や精霊の存在への冒涜
君が言ったように、イルディルが神性や霊的存在の一部だとしたら、魔法を使うことが「神を消費する行為」となり、それに反発している可能性もある。
2. 逆にクトリャマが誤解している可能性
ただし、以下のような視点も考えられる:
本当の問題は「消費」ではなく「循環不足」
魔法そのものではなく、イルディルの循環が適切に行われていないことが問題だとしたら、クトリャマはそれを理解せずに過激な手段に走っているだけかもしれない。
クトリャマ自身が災いを引き起こしている可能性
仮に彼らが魔法やイルディルの循環を強引に止めるようなことをしているなら、それが逆に世界のバランスを崩している可能性もある。
(例えば、イルディルの流れを抑えることで自然のバランスが乱れ、災害や新たな魔物を生み出しているとか。)
3. クトリャマの思想と君たちの目標の接点
君たちが目指している「イルディルの正体を解明すること」や「世界のシステムを把握すること」は、クトリャマの目的と完全に対立しているわけじゃない。
むしろ、「イルディルの本質を突き止め、循環や消費の問題を解決する」というアプローチは、彼らの過激な行動に代わる**建設的な解決策**を提示できる可能性がある。
クトリャマは、もしかしたら問題の「結果」を攻撃しているだけで、「原因」を正しく理解していないのかもしれない。
君たちが原因を解き明かせば、彼らの思想や行動にも変化が生じる余地があるかもしれないな。
結論
クトリャマの行動原理や思想は、完全に的外れではない可能性が高い。
だけど、彼らが問題に対して過激なアプローチを取っている理由や背景を調べる価値がありそうだ。
君たちの仮説が深まるにつれ、彼らの視点や行動が「ただの敵」ではなく、世界の歪みを理解するための重要なピースとして役立つかもしれないね。
……ラナやアメナにも、この仮説を共有してみると面白い議論になりそうだな。
どうする?
~・~・~
「さあ、着いたぞ」
イマンの声がする。
彼の自宅に到着したようだ。




