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終焉の世界でゾンビを見ないままハーレムを作らされることになったわけで… サイドストーリー  作者: 緑豆空
遠藤近頼の章 日本一のハーレム男

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第193話 小さな国

俺達は華江先生のいる、セントラル総合病院に来て話し合いをしていた。華江先生とあずさ先生、言い出しっぺの俺と菜子様と梨美の他に、優美、栞、夏希、愛菜、翼、麻衣、里奈がいた。


他の面子は各拠点での仕事と、回収作業などで遠征していてここにはいない。


「いいんじゃないかしら?」


華江先生が言う。


「えっ?」


「このままじゃ息が詰まるわよね」


「まあそうですね」


俺と菜子様と梨美が、いろんな人に声がけをして組織的な問題を解消するべく根回しをしてきた。しかし根回しなんて必要なかったような返事だった。


「確かに遠藤君の精子はとても貴重なものだわ。だけど管理体制を極めていくと精神的な重圧も大きいと思っていたのよ」


「でも規律が乱れるのでは?」


「まああまり規律が乱れると、この組織の存在が危うくなるとは思うけど」


「危うくですか?」


俺は華江先生の言っている意味が分からなかった。


「ええ。人間には欲があるわ。遠藤君を独り占めしたい人も出て来るんじゃないかしら」


「俺を独り占めですか?」


「ええ。だって大人の男はいまのところあなた一人で、他の男子は仲間達の子供でしょう?本能的に男性を求めるうちに、独占したいという気持ちが出るのは間違いないと思うわ。他の欲求だってあるかもしれないし、私のように研究だけしていればいいような特殊な人間は少ないわ」


俺は自分の価値なんて精子…すなわち遺伝子だけだと思っていた。だが彼女らにとっては性の対象としての価値があるということだ。


「俺なんかに…」


「しかもゾンビに対して無敵の遺伝子を持つ男よ。そんな価値のある人に気持ちを奪われない訳はないし、今はある程度の決まりがあるからこそ、お互いをが牽制して自制していると思うのよね。確かに私やあずさ、真下さんや吉永さんは文句はないと思うけど、決められた枠の中じゃないと暴走するんじゃないかと危惧しているわ」


言われてみるとすっごく納得する内容だった。正論中の正論だ。


「でしたら、年齢制限の方はどうでしょうか?」


「年配になったら性交渉を止めること?」


「はい」


「まあ高齢での妊娠はリスクが高いからおすすめは出来ないわ。私とあずさ先生が立ち会うにしても、医療器具だけじゃなく人員的な問題もあってね。最善は尽くすけど、出産と産後のデメリットを考えるとあまりお勧めは出来ないかしら」


「では避妊しながら複数では?」


「どうかしら?私は遠慮したいかも…若い女の子たちと一緒に、性交渉をする事は喜ばしい事ではないわね。むしろ苦痛に思うかしら」


「私もね。最近は十代の子も救出しているでしょ?その子達と一緒に性交渉なんてちょっとつらいかな」


あずさ先生も同感のようだった。


「それは…すみません。配慮が足りませんでした」


「いえ。私たちの事を思っての事だから悪いとは言わないわ。でもそこはあまり気にしなくていいんじゃない?これからは若い人主導で進めて良ければ良いと思うし、気にせず進めてくれたらいいわ。揉め事なくルールを変える事が出来ればいいんだけど、特に若ければ若いほど分別を求めるのは難しいわよ」


「はい…」


話せば話すほど、華江先生の話は正論だった。間違いなく俺達がある程度自由に進めて行ったら、若い子らに規律を守らせることができるか不安だった。


「なんか…やっぱり華江先生のおっしゃるとおりね」


菜子様が言う。


「そうだな、俺達幹部が規律を守らせてきたから、今の秩序が守られているのかもしれない」


「でも、いずれ何か問題が起きそうなきがします」


「問題?」


「このままの規則でやって行って、新しい人たちに不満が出た時に幹部たちで抑えられるか不安もあります」


「菜子様の言うとおりだわ」


華江先生も同意した。


「本当に危ういと思う」


優美がポツリと言った。


「どうして?」


「私が正妻なんて言われてるけど、そのせいでちょっとしたやっかみのようなものも感じるわ」


「やっかみか…」


「直接的なものじゃないけど、いつか刺されたら嫌だなとか薄っすら思ってた」


「そんな悩みがあったのか…」


「うん」


「気づいてやれずにゴメン」


「私だけ我儘いえないから、問題ないわよ」


という事はこのままの規律でやって行っても問題は起きるし、変更しても揉め事が起きる可能性があるという事だ。


「あの…」


栞が口を開く。


「なに?」


「とにかく組織を作り直す必要があるんじゃないでしょうか?」


「組織を作り直すか…」


「はい」


「…どうしたもんかね?」


「私が思うに選挙が良いかと思うんです」


「「「「選挙?」」」」


俺、華江先生、菜子様、あずさ先生が声をそろえる。


「はい。民主主義の国ではありますが、今この組織でそんなことを言っている余裕はないと思うんです。すでに日本国は消滅していると思う。ある程度強制的な権限を持った指導者が必要だと思います。強い権限の指導者を、皆で選出する必要があるのではないですか?」


栞が力強く行った。よほど危機感を感じていたらしい。


「…そうね。小さな国を作るような物かしらね」


それを聞いた華江先生がつぶやいた。


「国…」


「こんな世界じゃ、もう法律なんてないようなものよね?ならば私達で法律を作り、それを守っていく必要があるんじゃないかしら?」


「法律ですか…」


俺の不得意分野だ。どうしよう。


「まずは選挙をして代表を決めないとね」


優美が言う。


「正妻だし優美さんになる可能性が高いかもね」


「えっ!あの…辞退したいんですけど」


「…そうよね、やりたくないわよね」


「じゃあ幹部は投票権無しで、新しい人たちが幹部に投票するようにしたらいいんじゃないでしょうか?」


栞が言う。


「なるほど。それなら文句ないんじゃない?やりたくないだろうけど…」


「ちょ、ちょっと待ってください」


菜子様が声をあげる。


「なに?」


「こういってはなんですが、私や里奈さんなどの顔が知れている人が濃厚なんじゃないでしょうか!」


確かに菜子様の言うとおりだ。皇族や元女優なら知っている人が多い為、投票される可能性は高い。


「そう思うわね」


「ですよね!」


「でも、それが一番いいと思うのよね」


華江先生に言われ、菜子様が困った顔をする。


「じゃあ…選ばれた人が、副大臣や担当大臣を決めるってのはどうかしら?」


あずさ先生が言う。


「良いと思います」


困っている菜子様や里奈をよそに翼が言う。


「あと、選出されるのは、なぜか女子だけという前提になってない?」


「えっ?俺もっすか?」


「当然じゃないの」


「は、はあ…」


結局俺達は組織内で選挙を行い、代表者…いってみれば首相を決める事となった。この内容を全員に伝えて公平に選挙をする必要がある。だが俺はなんとなく嫌な予感がするのだった。

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