第129話 拳銃の確保を
婦人警官たちの死体を見て皆がげんなりしていた。
私もさすがにきつかった。
「あそこで助けを待っていたんでしょうか?」
「そうね。婦警のユニフォームだけだったから、男の警官がゾンビになってしまって出るに出られなくなってしまったんじゃないかしら。」
「かわいそう。」
「ほんと。」
全員で止めたマイクロバスの中で落ち込んでいた。
「このあたりもゾンビだらけだったのでしょうね。」
「おそらく臭いからすればそうだったんだと思う。」
「でも我々がさらに広範囲に捜索などしても自分たちが危険になってしまいますしね。」
遠藤さんが言う。
マイクロバスから眺める警察署は特に何も無いように佇んでいるが、その中にはまだゾンビにもなっていない死体があるのかもしれない。
そう考えると私たちは再度踏み込むことに二の足を踏んでいた。
「今回は妊娠している人も子供も連れてきていないので、俺から離れるわけにはいかないと思います。」
「そうね。」
「ならば警察署以外の武器を調達できるところを探しませんか?例えば交番とか銃砲店とか。」
「まずは交番に行って見るのがいいかもしれないわ。」
あずさ先生の言うとおりだった。そもそも銃砲店がどこにあるのかすら分からない。
「わかりました。では交番を探しましょう。」
そして近隣の交番を探し出した。
「ありました。」
「入ってみましょう。」
「ええ。」
皆で車を降りて交番に入る。
交番はそれほど広くないので探すのにそれほど時間はかからなそうだった。
私達はすみずみまで交番内を探す。
「拳銃はありませんね。」
「もともと交番には置いてないものなのかしら?」
「もしかしたらそうなんじゃないですか?」
「一応念のため他の交番にもいって見ましょう。」
あずさ先生のひと言で次の交番を探す。
マイクロバスを運転して街中を探しているとまた交番が見つかった。
「ありました。」
「じゃあ探してみましょう。」
そしてまたみんなで降りて交番を探し始める。
結局同じ。交番には拳銃は置いてなかったのだ。
「拳銃ないわね。」
「無いですね。」
「やっぱり警察署にあるんでしょうか?」
「交番に無いとすればそうなんじゃないの。」
「そうですよね。」
その後も数か所の交番を回ってみるものの拳銃は見つからなかった。
「やはりそうですね。拳銃は交番には無いみたいです。」
「ゾンビになった警官なら持ってるかもしれないですよね?」
みなみ先輩が言う。
「そうね。でもどこに行ったのかも分からないし、探すのは至難の業だわ。」
「確かに‥‥」
拳銃を見つけるのはそう簡単にいかなそうだった。警察署内でどこに保管庫があるのか分からない以上探しようがない。
「えっと、発電機を持ってきて警察署に電気を入れるのはどうでしょう。」
「巨大な発電機が居るかもしれないわ。」
「それなら入手可能じゃないですか?」
「ならばかえって未華さんに聞いてみましょうか。」
「そうしましょう。」
ただし未華さんは既に妊娠しているため無理をさせるわけにはいかない。
「とりあえず施設管理をしていた未華さんに聞いてみて、俺達で出来る事をやってみましょう。」
「わかったわ。」
「それなら一度本屋によって、銃砲店が乗ってる本とか無いか探してみませんか?」
私が言う。
「それもそうね。では本屋に寄っていきましょう。」
私達のマイクロバスはいつもの本屋ではなく、都心部にある巨大ブックセンターに向かった。
「さて、ブックセンターにつきましたけど入れるんでしょうか?」
私が聞くと遠藤さんが答える。
「電動カッターとか大量にあるから問題ないよ。破壊して入ればいい。」
「そうですね。」
そしてみんなでマイクロバスを降りてブックセンターに行く。
既に出入り口を探す事はしなかった。電動カッターを持ってきたバッテリーに繋いで玄関に穴を空ける。
「でははいりましょう。」
皆でブックセンターに入っていく。
「暗いですね。」
「すでに非常灯も光ってないわね。」
「完全に電力は死んでいるようです。」
「ふう…しかたないわ。出ましょう。」
「そうですね。」
こんな暗い中で懐中電灯の光を頼りに目当ての本を探せるわけがなかった。
「今日は不発ですね。」
「本当。とにかく一度帰って未華さんに警察署の電源を回復できるか聞いてみましょう。」
「ただ未華さんが動かなければいけないようなら断念すべきですね。」
「ええ。そうね私達で出来なければまた違う方法を考えないといけないわ。」
マイクロバスは一路拠点のホテルに向かう。
ホテルにつくと皆が待っていた。
「どうでした?」
翼さんが聞いて来た。
「それが、警察署は暗くて中を動きまわる事が出来なかったわ。」
「そうですか。」
「他に武器を入手できる方法が無いか考える必要がありそう。」
あずさ先生が言うがネットはもちろん使えない。
「ネットの無い世界って本当に不便ですよね。」
「本当ね。」
「実は本屋さんで地図か、銃砲店の本が無いか探しに行ったんだけどブックセンターは真っ暗で無理だったわ。」
「うわー、電気が通って無いと本当に不便だ。」
翼さんが言うとおりだった。
「あの、銃は無理でもボウガンとかどうですかね?」
遠藤さんが言う。
「あ!ありかもしれませんね!」
「そうか、未華さんから聞いて警察署に電気を通そうとしたけど、銃以外の武器を探すのもよさそうね。」
あずさ先生が言う。
「あとはもしかすると鴨や野生動物を捕まえられるかもしれない。」
「確かにそうですね。」
「ボウガンならたぶんアキバにあるかも。」
愛奈さんが言う。
「知ってるんですか?」
「バイク便やってる時配達で言ったことがあるわ。」
「おお!それは凄い!」
「その時はボウガンなんて興味ないからあまり確認できなかったけど、たぶんいろいろと置いてあったような気がする。」
「それならいいかもしれないね。今日はもう日が暮れるから日を改めて行って見よう。」
遠藤さんが言う。
「じゃあ決行は明日という事で良いかしら。」
「大丈夫です。」
「はーい。」
私達はボウガンに目標を変えた。
拳銃より弱いかもしれないが拠点を守るのには使える可能性がある。
明日また同じメンバーでアキバに行く事になった。




