72話 稀代の大義賊と指揮する暗殺者
四次職『稀代の大義賊』は三次職の義賊の上位職業である。
元々、スキルで盗んだモノを自分以外に分け与えるデバフとバフが特徴の義賊がさらにその効果の適用範囲を広げたのが稀代の大義賊。
圧倒的な身体能力を見せる悪魔のルキを相手に何度かの失敗はあったもののSTRを奪うことに成功したリオンはジャックに盗んだ全てを与えていた。
STRを奪ったのはそうすることで自分たちの生存率を上げるためでさらに、相手の硬い防御を突破するのにも攻撃力が必要だった。
ジャックに全てを与えたのはリオンのスピードではルキに追いつけないからだ。
ジャックならばスピード寄りのステ振りをしていて攻撃を当てることができる。
リオンは前衛として戦闘はしているものの、相手の隙を作るサポートのような役目をこなす。
性格上、サポートは苦手だし、やりたいとも思わないのだがそれ以上に負けるのは許せない。
予想以上のルキの強さに仕方なく最も勝率が高い選択を取った。
後はクロツキがギルドマスターを務める『影の館』が依頼失敗をするなど嫌だなとも思っている。
リオンは悔しさから唇を噛む思いでルキの攻撃を受ける。
肉弾戦による拳と足での攻撃、それと時々尻尾が襲ってくる。
手数が多く捌ききれずにいくらか被弾しながらも下がったSTRのおかげでまだ生きている。
盗賊は戦闘職ではあるものの、その特殊なスキルに力を振っていることからステータスはあまり高くないし戦闘スキルもそれほど強くはない。
しかも、せっかくの特殊なスキルを使って仲間をサポートしているのは皮肉といえる。
悪魔の腕とククリ刀がぶつかり合う中、リオンを器用に避けて無数の斬撃がルキを襲う。
先程までなら大した脅威にもならなかった攻撃が厄介だと思えるほどにはSTRが上昇している。
四次職『指揮する暗殺者』、職業名にある指揮とは指揮者を表している。
ジャックはオーケストラの指揮者の如く手を動かす。
その度に糸は生き物のように動き悪魔に襲いかかる。
チャリックでも糸は使用していたが罠として張り巡らせて相手に動いてもらって傷を負わせるか、自分の移動手段として使っていた。
直接糸を操るということはなかったのだがシュバルツ家での壮絶な訓練の末に操糸術を身につけることができた。
糸が悪魔の体に傷をつけていくがそれでも致命傷には程遠い。
ジャックもリオンも分かっている。
こんなことで目の前の敵を倒すことはできないのだと。
全ては下準備にしか過ぎない。
それの完成が見えてリオンはルキから距離を取ってジャックよりも後ろに移動した。
ルキの周りには四方八方に糸が張り巡らされていた。
「操糸術・鳥籠」
「よくやったジャック、やっちゃってよ!!」
ルキは自らが飲み込んだモノが不完全だったことに憤りを感じ始めていた。
その怒りは目の前の二人に向く。
邪魔さえされなければ完成していたはずで、後少しのところだった。
自らの主人であったラフェグが強大な力を有していたのは生命を吸い取ることができたからだ。
他者の魂を啜り吸収する。
自分にもできればより強大な力が手に入る。
しかし、それは叶わない。
ただただ口に入れるのと力を吸収するのでは全くの別物である。
ある時、ラフェグ復活を目論む馬鹿な男がいた。
その男の蓄えた知識はなかなかのもので復活の手伝いをしながらも、男の蔵書を漁り魂の吸収の方法を探してようやく見つけたのだ。
ライフイーターに生命を吸収させてそのライフイーターの核を抜き取り、集めて圧縮する。
そうしてできたのがアレだったのだ。
しかし、少しばかり生命の量が足りなかった。
今のこの核では穴の開いたコップのように力を使うたびに吸収したものが抜け出ていってるのが分かる。
悪魔としての自分の力に核が耐えきれていない。
また集めなおしになってしまう。
まずは、邪魔をした二人を糧にしてやろう。
「この程度の糸でオレを抑えれるとで思ったのか!! 貴様らは永劫にオレの糧にしてやる」
ルキの口調が変わり力任せに糸を振り払おうして右腕を薙ぎ払う。
先程までも簡単に引きちぎれた糸をどれだけ張っても無意味なのだ。
……!?
ドサリと右腕が地面に落ちる。
「無駄だよ、鳥籠はそう簡単に破られはしない」
「なぜだっ!? 強度が変わった様子は見られない」
右腕が切断された痛みよりも不可解の方が優っている。
「バーカ、バーカ」
リオンの煽りで我を忘れたわけではない。
確かめないといけないと感じたから行動に移したのだ。
どちらにせよこのままでいるのはまずい。
尻尾を勢いよく糸に当てると右腕と同じように地面に落ちる。
あることに気づく。
糸が微妙に振動している。
「ふぅ、なんとか上手く行きましたね」
「思ったよりも強かったな。となるとクロツキの倒したアレはもっとヤバかったってことか」
「アレは無理ですよ。このルキでさえリオンさんのスキルがあってなんとかですから」
「ふーん、まだまだ強くなれるってことだな。で、これはどうする」
リオンは生命を凝縮した核を持っていた。
「砕きましょう。それで解放されるはずです」
リオンは迷うことなく核を砕いた。
殺された生き物の魂や吸い取られた生命が解放されて、緑の亡くなっていた土地に若干の自然が戻った。




