49話 レイド戦決着
アグスルトを相手にオウカ、湖都、虎徹は最後の力を振り絞って立ち向かう。
オウカは炎巨人の両腕以外を消して残った両腕を使うが、スキルは使えずただアグスルトの体を押さえつけるのが限界。
湖都のテイムするバイコーンもボロボロで闇鎖の魔法で若干だけアグスルトの動きを抑制する。
湖都自身は近づいて鞭を振る。
虎徹は折れた刀の代わりに予備の刀を装備して攻撃する。
スキルは使えず一切攻撃は通らない。
それでもアグスルトの気を引きつけるために刀を振り続ける。
全員がアグスルトがその場から動かないように捨て身になって気を引きつける。
それだけが唯一の希望であるクロツキの頼みだった。
「俺にもう一度チャンスを下さい。倒す案が思いつきました。とにかくあの場所からあいつが移動しないようにして下さい」
それだけを言い残してクロツキはどこかへ消えた。
アグスルトは眼前の3人では自分に危害を加えることはないだろうと考える。
そしていつの間にか消えた自分の脅威となりえる黒い男を探す。
しかし、黒い男は見つからずチクチクと攻撃してくる3人が煩わしい。
かといって潰そうとして先のように攻撃後の隙を突かれたのでは面白くない。
アグスルトは両翼を広げる。
一人の男に破られた翼で自由に飛行することは難しいが飛ぶことができないわけではない。
自分を押さえつける巨大な腕と鎖を振り払い真上へと飛び上がった。
「あー、もう限界」
顕現してい炎巨人の両腕が消える。
「これはかなわんなぁ」
鎖は引きちぎられ鞭や刀では届かない距離に飛ばれた。
「くそっ、あの男はどこに消えたんだ……えっ!?」
アグスルトは上空から地上を眺め黒い男を探す。
しかし、見つからない。見つかるはずがない。まさか、自分の遥か上空にその男がいるなど頭の片隅にもなかった。
3人が目にしたのはクロツキがアグスルトの遥か上空から猛スピードで落下している姿だった。
それは黒い流星のように一筋の線となってアグスルトへと一直線。
後もう少しでぶつかるというところでアグスルトは自分よりも上の異変に気づく。
自分に高速で落下してくる黒い男に対して理解は追いつかない。
しかし、野生の勘ともいえる感覚で体だけは回避行動を取った。
3人は落胆する。
自分たちが抑えれていればクロツキの捨て身の攻撃が当たったかもしれないのに……
アグスルトの移動した距離はそれほど遠くない。
それでも回避には十分な距離だった。
が、一直線に伸びる黒い線はアグスルトを追うように急に角度を変えた。
少し前、3人にアグスルトを抑えてくれと頼んだしたクロツキはその後、ディーに運ばれて遥か上空を飛んでいた。
「ありがとう、ディー」
なかなかの絶景だ。下には目標となるアグスルトがいる。
絶叫系は得意じゃないというのにやるしかないか。
いやでも、心の準備が……
「キュイ」
「えっ!?」
思いがけず落下が始まる。ディーが俺を運んで飛ぶのに限界がきて手を離して影の中に帰った。
空中ダイブが始まった。
思いのほか恐怖は感じない。
装飾品の睨眼髑髏の仮面のおかげか。
持っていた白骨の仮面は状態異常耐性がつく装飾品だった。
そこにヴェルヴァのドロップアイテムで強化したことによりさらに恐怖耐性が強くなり、相手に恐怖を与えやすくなる効果が追加された。
見た目の禍々しさも当然パワーアップしている。
落下しているとアグスルトが空中に飛んだ。
しかし、真上ならば関係がない。
アグスルトはさらに横に回避もしたが俺はそれを見て空中を蹴って軌道修正を行う。
宵闇の脚套『影踏』はMPを使用して空中を蹴ることが可能な防具。
今の俺ではMPが最大でも数回しか使えない。
下でアグスルトの攻撃を回避するのに使ったが落下中にMPポーションを飲んだので大丈夫だ。
ポーションのデメリットである硬直も落下してるだけなので問題ない。
不味いのはぜひ改善してほしい点ではあるが……
余程俺のことを警戒していたようで追尾に対してアグスルトは即座に反応し、首を狙う俺の攻撃に腕を出して防御の姿勢を構えた。
見当違い……
アグスルトは俺の迫る位置とはズレた場所に腕を置いた。
宵闇の外套『疑心』は相手に幻を見せる。
さらに相手が恐怖を感じていれば感じているほどその効果が強くなる。
スキルの虚像の振る舞いも相まってその力はドラゴンにも効いたようだ。
アグスルトの出した腕は虚しく、俺は横をすり抜けることができた。
宵闇の小刀《月蝕》は速度が出ていれば出ているだけ攻撃力が上がる。
これはAGIを反映しているわけではない。
だからこそ高高度からの落下による速度であっても問題なく攻撃力に変換される。
宵闇の小刀『月蝕』がアグスルトの首を綺麗に落とした。
僅か十数センチのナイフで太い首が落とせたのはナイフの先から伸びた黒い斬撃のおかげ。
宵闇の手套『繊魄』は速度を射程に変えることができる。
これだけの速度を出しても5メートル程度しか伸ばせないが俺にとっては十分すぎる効果だ。
全ての装備がアメノマヒトツの職人達による至高の装備品。
しかも、これだけの力を発揮してくれているのに、まだ俺では完全に使いこなすことができていないのだ。
俺は装備に助けられてアグスルトを倒すことができた。
最後まで結果を見ることはかなわないが……
首を落とした俺はその速度を保ったまま地面に激突した。
チャポン……




