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魔鋼猟兵ルビナス  作者: さば・ノーブ
第5章 鋼鉄の魔砲少女(パンツァー・マギカメタル)
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黒髪の少女ミハル

挿絵(By みてみん)

ロゼ「サブキャラになんて・・・負けないモーんだ!(ツーン)」


そんな処を張り合ってどうするんだヒロインよ?!

黒みを帯びた瞳で俺達を観ている不思議な少女。

不思議だと言ったのは、その子が東洋人だと思えたからだ。

フェアリア軍籍に東洋人が居て、どうしてフェアリア語を交わしているのかが不思議だったから。


「私もこのマチハに乗っているんです、兵長」


少女は俺達の襟元に着いた階級章を観て、気安く答えて来る。


「何か、お気になった事でもありましたか?」


少し物怖じした声で少女が訊ね返してくる。


「ああ、いやなに。さっきの戦闘を傍観してたもんで・・・」


どう話しかけて良いのやら。

黒髪の少女が俺達よりずっと幼く見えたから。


「魔鋼騎なんだろ?この3号J型改は。

 乗り組んでいる魔砲使いに話を聞いてみたいと思ったんだ」


まさか、この少女が魔鋼騎乗りで魔砲使いだとは思えずに訊いてしまったんだ。


「あ、あの。

 魔砲使いに何を訊かれるというのでしょうか?」


少し困った顔になって少女が訊き返して来る。


「うん、魔砲であれ程の変化を齎せられた人のことを・・・さ。

 魔鋼騎だとしても、あんな変形をさせられる人って、どんな人なんだろうって思うからさ」


少女が魔砲使いだなんて思えないから、そう聞いてしまったんだ。


「ルビ、ルビ。ちょっと、この子・・・怖い」


後ろに隠れているロゼがツンツン腕を引っ張る。


「なんだよ、こんな女の子だぜ?なにが怖いって言うんだよ?」


振り返るとロゼが怯えて訴えている。

黒髪の少女の姿を怯えているというより、何かの力を懼れているのか?


「だって・・・魔砲使いっていうよりは、もっと別次元の力を感じるんだもん。

 私と同じように宿った者が潜んでいるみたいなのよ」


おや?いつの間にか魔女ロゼが現れているようだ。


「ロゼさんか、それはこの子が魔砲使いだってことかい?」


目の前に居る黒髪の少女が魔砲使いだなんて、とても考えられない。

幼い顔立ちの少女、瞳に現れた青みは確かに魔力を秘めているとも観えるけど。


俺は思い切って少女に訊いてみることにした。


「君、この魔鋼騎の乗員だって言ったよな。

 もしかして魔砲の使い手なのかい、君みたいな子が?」


後ろでびくつくロゼと俺を交互に観ていた少女が頷き、右手を胸に当ててこう言ったんだ。


「私みたいなのが魔砲使いで可笑しいですよね?

 ついこの前まで私も、魔力があるなんて知らなかったんですから。

 私はこのマチハの砲手を務めるシマダ・ミハル一等兵です」


びっくりした・・・というより信じられずに見詰めてしまってから漸く気が付いたんだ。

それは胸元に添えられた腕に填めてあるブレスレットを観たから。


「それって・・・魔法石じゃないのか?!」


あまりに大きく、あまりに蒼く輝いているブレスレットを見て。


「本当っ?!それって魔法石なんでしょ?」


ロゼも驚愕の声を上げる。

二人からの声に少々驚いたのか、ミハルと名乗った少女が小首を傾げて。


「そうみたいです、これは私の宝物・・・いいえ、母の形見でもあるのです」


微笑むというより苦笑いを浮かべて応えてくれた。


「魔法石を受け継いだってことか。君のお母さんは?」


訊いてしまってから、余計な事を訊いたと後悔したよ。

彼女が形見と言ったのに訊いてしまって。


「はい、戦争が始まった日に・・・事故で」


少女が一瞬悲し気に目を伏せたのが、俺の心にも影を落とした。


「すまない、余計な事を訊いてしまって・・・」


「いいえ、もう慣れましたから。みんなが気にしてくれているので」


黒髪のミハルが健気に返してくれたが、俺には同じ傷を負った者だと分るんだ。


「そういえば兵長は?私達に何を訊きたいと仰られるんですか?」


暗い気分になったのを替えるように、ミハルが微笑む。


「あ、そうだった。

 この3号をあんなに変えたのは君の魔法でだよな?

 どうすればあれだけの変化を齎せられるのか・・・聞きたいと思ったんだ」


戦車の原型さえも残さず変えれた訳を知りたいと思ってたから。

魔砲の力だけで、あそこまで替えられるモノなのかと。


「ああ、あれはですね。私独りの魔力じゃないんですよ。

 みんなの力で・・・いいえ、本当の処は少尉の。

 一緒に乗っている小隊長、リーン少尉の力と併せられたからなんです」


ミハル一等兵が自分独りの魔力ではないと教えてくれた。


「二人?!一両の魔鋼騎に二人も魔砲使いが乗っているのか?!」


びっくりだ。

本当にそんなことがあるのかどうか。

魔砲使いは1万人に一人の確率でしか存在しないというのに。


魔鋼騎に二人の魔砲使いが乗り込んでいるなんて・・・勿体ないだろう?


「そんな事があるのか?

 そもそもなぜ二人も同乗出来る?配乗係はなにを寝ぼけていたんだ?」


魔鋼騎には適任の魔砲使い一人を宛がわれる筈だ。

もし、二人が乗ってる車両が撃破されたら一度に二人も魔砲使いを失う事になる。

それは限りある魔砲使いを浪費する事にもなるのだから・・・


「ちょっと、ルビ。それならアタシ達はどうなるのよ?」


目覚めたのか、相棒の方のロゼが言い募りやがる。


「ああ、ロゼ。お目覚めか、魔女の方はどうしたんだ?」


「うん、怖くなったから代わってって。無理やり起こされた」


ぶすっと一言で返した相棒に、俺は冷や汗を掻くだけだった。



ミハル一等兵の言葉を聞いて、閃いた事があった。

それは俺達の3突にも言えるんじゃないかと思ったんだ。


「ミハル一等兵、君の戦車には二人の魔砲使いが乗っていて、二人の魔力で変化させたといったね?

 それであれだけの車体に成れたと・・・」


「はい、そうです。私だけの能力では、あそこまで変えれませんから」


どうやら俺達にも出来るかも知れないぞ。

今迄はロゼ一人に任せっきりだったから、魔鋼機械を使うのを。


「ロゼ、訊いただろ?俺達にも変えれるかもしれないぜ?」


「えっ?!本気で言ってるの?ルビにも魔砲を使えるの?」


ロゼが戸惑いつつも考えてくれているようだ。

二人の力を併せられるのかを。


「そうね・・・一回やってみる?手ごわい相手が出てきたら・・・」


「だよな!やらずに死ねるかっての!」


ミハル一等兵と話せて良かった。

凄いヒントを貰えたのだから。


「兵長?お二人共魔砲使いなのですか?同じ車両に乗られて居られるのですか?」


挿絵(By みてみん)


微笑んだまま訊いて来る黒髪の少女へ、俺達が頷き。


「ああ、こう見えても俺とロゼには古の魂が宿っているんでな。

 異能を先祖から継承してるんだ、魔砲力はどうだか知らないけど」


「へぇ・・・男子が。珍しいですね」


そう答えたミハルの顔に陰が差したのを、俺は見逃さなかった。


「うん?俺に異能があるのが気になるのか?」


「い、いいえ。そんな・・・唯、継承されたって伺ったので・・・」


ほら、やっぱりだ。

言葉にまで戸惑いや憂いを滲ませてるぜ?


「ミハル・・・ちゃんで良いよね?アタシの方が年上だろうから。

 あなた、何を想っているの?ルビに魔力があるのが気になってるの?」


同じように思ったのか、ロゼが口を出して確かめようとする。


「あ、いいえ。男の子にもやっぱり継承されちゃうんだって思ったので・・・」


「俺に魔力があるのが分かったから?それがどうかしたのかい?」


急にミハル一等兵の顔から微笑みが喪われた。

喪われた微笑みの代わりに浮き出ているのは焦燥にも似た陰り。


「何かあるのね?あなたは誰かを想っているように観える。

 あなたの中にあるのは、その人への想い・・・そして心配でしょ?」


女の子同士だからか、ロゼの感じたのは間違いではなかった。


「そう。私には残して来た弟が居るんです。

 たった独りの大事な弟が・・・人質同然の待遇で」


ポツリと溢した少女は項垂れ、歯を食いしばる。


辛いのだろう、悲しいのだろう。

ミハル一等兵は肩を震わせ涙を耐えているみたいだ。


「弟にも魔力があるとしたら。

 戦場に連れ出されはしないかと・・・そう思ったら。

 移民の私達までも、戦争へと駆り出すんですから・・・・」


唇を噛み締めるミハルが辛さを滲ませて教えてくれた。


「そうか、黒髪だから気が付いていたけど。

 ミハル君は移民の子だったのか、お父さんはどうしてるんだい?」


「母と同じ場所に居たので・・・亡くなったようです」


ロゼが俺の腕を牽き停めて来る。

これ以上、この話を続けるなと。

でも、この子には同じような境遇の者が居るんだと教えてやりたくなった。


「そうか。辛いよなミハル君も。

 だけど、家族を戦争で引き裂かれたのは君だけじゃないんだ。

 俺の両親も死んだよ。それに妹も・・・連れ去られたらしいんだ」


「えっ?!兵長も・・・ですか?!」


顔を挙げて俺を観るミハル一等兵が訊き返して来る。


「ああ、開戦の日にな。だから君の事が他人事に思えなくて。

 お節介かとは思うけど、言っておきたいんだよ。

 死んじゃ駄目だって、弟君の為にも・・・ね」


後ろから腕を掴んで停めていたロゼが、そっと手を放してくれた。

話しても良いよ・・・って。ロゼが赦してくれたんだ。


「君の弟は居場所が判ってるんだろ?

 俺の妹はどこに居るのかも分からないんだ。

 今はどうやって取り戻せば良いかも分からない。

 だけど俺は諦めちゃいないし、決めてるんだ。

 このくそったれな戦争が終われば、必ず助けに行くんだと。

 それまではなにがなんでも生き残ってみせるって・・・仲間達と共にだ!」


ロゼの手を掴んで言い切った。

俺は諦めていないし、ロゼと一緒に生き残るんだと。


「ルビ///(ポ)」


俺を見上げて来るロゼの視線を感じてはいたが、敢えて見ずにいた。


「そ・・・そうですよね!兵長の仰る通りです。

 私もみんなと一緒に生き抜くと決めてますから。

 戦争が終わるその時まで・・・きっと諦めませんから!」


やっと・・・ミハル一等兵の顔に微笑みが戻った。


「そうかい。ならいいけど・・・無茶はいけないぞ?」


こっちが年上だろうから、女の子に諭すように言った。


黒髪が年を幼く見せているのだろうか?

見た目も童顔で、大きめの瞳が余計に幼く感じさせているから。


「兵長とお話出来て嬉しかったです。

 なんだか久しぶりにバスクッチ曹長とお話しできたみたいで」


嬉しそうに涙を滲ませた瞳で俺に話して来る魔砲少女ミハルに。


「あら、あなたにも良い人が居たんだ?」


よせば良いのに、ロゼが茶化してきた。


「えへへ、既に売れちゃってしまいましたけど。

 兵長さん達は婚約されておられるんですよね?」


・・・あのなぁ。どうしてそんな発想に辿り着くんだ?!


あ、俺の指輪を観て間違えたのか?!


・・・って。おい、ロゼ?!


「にゃっ?!にゃにを・・・しょんな筈わぁーにゃいでしょー」


にゃ語になってるし。真っ赤になってるし・・・


「あははっ!お似合いですよ、お二人とも!」


微笑んだミハルが手を指し出して来る。


「今日のお礼に。同じ未来を目指す方に・・・はいっ!」


握手を求めるミハルの右手。


「あ、ああ。ミハル一等兵も。頑張るんだぞ!」


蒼き時の指輪を填めた俺の手が握り返した。



 ---パチーーー


俺とミハルの魔力が交わされた・・・青白い光を放って。


「「目覚めの時が近いというのか・・・巫女よ。伝説の巫女よ」」


俺に、一瞬だけ騎士が話した。



気が付けば、黒髪が目の前を過ぎって。


「それじゃあ、いつかまた。ルビ兵長ロゼ兵長、お元気で!」


黒髪に結ばれた紅いリボンを靡かせて、ミハルは仲間達の元へ帰って行く。


「・・・いい子だった・・・」


交した右手をそのままの状態にした俺が呟くと。



 むぎゅっ

 


背中を思いっきり抓られた。


「痛ててっ、何すんだよロゼ?!」


振り向いた俺に頬を膨らませたロゼが、


「ルビなんて知ぃーらぁなぁいぃっ!」


舌を突き出して拗ねやがった。


・・・どっちが幼いのやら・・・ふぅ(溜息)。

コハル  「何て言いますか・・・後書きに出演させて頂きます、シャインニング!の姪っ子です」


ニャンコダマ「・・・・チョイキャラ・・・」


コハル  「おばちゃん・・・駄目だよ、いじけたら」


ニャンコダマ「・・・でもまぁ、フェアリアのお話だから・・・出られただけでも・・・」


コハル  「まさか、最新作ではこんな有様になるなんて・・・プッ!」


ニャンコダマ「・・・・しくしく・・・・」


挿絵(By みてみん)



本文中の少女に纏わる物語は、

https://book1.adouzi.eu.org/n7611dq/

   「魔鋼騎戦記フェアリア」  にて。


後書きに出てきた2人につきましては、

https://book1.adouzi.eu.org/n2116fn/

 「魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!」 にて。


お読みくだされば、少々お判り頂けるかと。

しかしまぁ・・・

https://book1.adouzi.eu.org/s0843e/

  「魔砲少女ミハルシリーズ」も・・・思えば遠くに来たもんだ。


といいますか。今作は原点回帰でしたっけ。

どこかリンクしている始まりの物語。これからも宜しくです!!


ここから本当の次回についてです。


ミハルと言う魔砲少女との出逢いが、ルビ達に何を齎したのか?

2人の魔力を併せられれば、確かに独りで放つよりは強力だが?


そして現れる闇の戦車。

決闘の刻が近付いていた・・・・


次回 闇の魔鋼騎


君は魂の結末を知っているのか?復讐を果し終えた時に居られる場所にその人が居ると思うのか?

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