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25、魔王の相棒1

視点がトンチンカンに変わります。

 サリーネとヨシュアは屋根づたいに街を駆け抜け、城壁の目前まで飛来していた魔物の上に飛び乗る。

 この街の騎士団はトンヌラとチンクー、カントの助太刀もあって、飛べない魔物を城門付近で何とか食い止めているが、空から攻撃されれば一溜りもないことを知っているのか、かなり浮足だっていた。


 トンヌラ、チンクー、カントはヨシュアの弟分だけあって、精鋭ばかりの辺境騎士団の中でも実はかなりの腕前を持っている。

 先程、小型だがドラゴン二体を三人で仕留めたことからも並みの強さではない。

 三人は、ともすると逃げようとする騎士団を叱咤激励しながら、打ち寄せる魔物の群れを斬り倒していた。


 そこへヨシュアがサリーネを同行して現れたので三人は唖然とする。


 彼女を三年間も行方を捜して、また逃げられた時のヨシュアの荒れようは酷かった。

 どうしていなくなったのか凍るような瞳で尋問され、原因が自分に纏わりついていた伯爵令嬢だと知ると瞬く間に家そのものを破滅に追い込み、行方を虱潰しに捜し回った。

 元々後ろ暗いことばかりしていた伯爵家だったので断罪するのは簡単だったが、サリーネの行方を捜す方が厄介であった。


 馬車、船、教会、ギルド、はては他国へ出国できそうな国境沿いまで捜しに捜して、漸く見つけたサリーネが娼館に入って行ったのを見て怒りがピークに達したのか、ヨシュアは壊れたカラクリ人形のような笑顔で変装を始めたのだ。


「俺の姿じゃないけど、俺は俺だし……何とか間に合ったからいいけど、サリーはちょっと痛い目見ないとわかんないのかもしれないなぁ……」


 な? と微笑んだヨシュアに、いつもは軽口を言うカントでさえ言葉を失い、主を見送ったのは数時間前の出来事である。


 魔物の襲来もあり、有耶無耶になってしまったようだが、サリーネを溺愛しているヨシュアが、本気で彼女を痛い目に合わせるとは思えない。

 魔物が出たと聞いて街を守るために、執着していたサリーネを置いて飛び出したヨシュアは、なんだかんだで優しいのだ。(まぁ、今度こそ逃がす気はない自信があったのだろうが)

 それなのに何故、こんな魔物だらけの危険な場所へ大切なサリーネを連れてきたのか理解に苦しむ。


 ちなみに魔物が多い辺境領では戦力を分散させて防衛することが基本だったことと、ヨシュアがサリーネを他の人間に見せるのを嫌がったため、今まで三人は実践でヨシュアと共闘したことはなかった。


 ただ模擬訓練の様子や討伐した魔物の数が桁違いだったため、ヨシュアが鬼のように強いことだけは承知している。

 勿論、そんなヨシュアに幼馴染の相棒がいることも。


 けれど、その相棒が女の子と聞いて、きっとその子は戦闘中は隠れているのだろうと、つまりサリーネは後方支援担当だと、勝手に勘違いをしていたのだと思い知ったのは、目の前の光景を見た時だった。

短くてすみません。次話も短いです。うまく区切れなくて…。

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