表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/421

お酒が好きです……

 不貞寝していたマリールも起こして、私たちは食事を取る。


「また何かしたの?」


「んー、アデリーナ様と先輩に向けて魔法の炎を出した件じゃないかな」


 今日の朝御飯はいつもよりモリモリです。

 この後にアデリーナ様のお叱りを受ける気がするけど、それよりもお腹が空いていますし、聖竜様とお会いできた喜びで幸せだからです。


 マリールとの会話も重苦しくありません。


「……また、やらかしてると思ったけど、半端ないわね。王家の人よ?」


「アデリーナ様は笑って許して下さると思うのです」


「死刑になっても知らないから」


 マリール、あなた、ご自分の態度を覚えてないのかしら。拳骨を頂いていたでしょうに。


「そういえば、アデリーナ様のお酒、また頂きたいなぁ」


「全然懲りてないね。図太すぎるわ、あなた」


 マリールはそう言うと、コップに入ったオレンジジュースを一気に飲み干した。


 そのタイミングで、シェラも食べ終わってハンカチで口元を拭う。それから、キッと私を見る。


「いいですか、メリナさん? 今日は早くお戻りになりなさいね。心配させ続けないで下さい。約束ですよ」


「……はい」


 うーん、普段は大人しい人が強く言うと怖いのよね。お母さんみたい。




 アデリーナ様の部屋をノックすると、返事もなく扉が開いて、立っていた部屋の主が手招きで入れと示してきた。



 で、やっばり怒られました。



「メリナさん!! どこに行っていたのですか!? 私たちは探し続けたのですよ!」


「……すみませんでした」


「昨日の冒険者の方々は、まだあなたを探しているのです! 使いの者を向かわせましたから、昼には帰ってくるでしょうが、彼らに何かあったら責任を取れるのですか!!」


 滅茶苦茶お怒りです。


「そもそもですよ! あなたは酒乱です!! それを御自覚なさいっ!!」


「私、お酒が好きです……」



「はぁ!? あぁん!? 何なら、ノノン村のメリナに酒を提供した者は処刑って法律を作りましょうか!?」


「……お許しください」


 どんな法律ですか。それ、私と関わるのが怖くて、お酒以外も売ってくれる人がいなくなるじゃないですか。



「あなた、どうやって、ここまで戻って来たの!? 森の奥へ入ったはずなのに、どうして馬車よりも早く帰ってきているの!!? 私たちを煙に巻いて、自分だけベッドで安眠って、おかしいでしょ!!」


 ひー。本当に怖いです。

 普段から怒る人がマジギレすると、より一層怖いです。


「早く言いなさい! メリナっ!!! 何をしたの!?」


 ダンッてローテーブルをアデリーナ様が叩きました。


「……せ、聖竜様とお会いしていました……」


「酔っ払いの戯言を聞きたいんじゃありません!! どうやって戻って来たのか聞いているのです!」


「本当なんです。本当の話です。アデリーナ様。聖竜様にお会いして、聖竜様が戻して下さったのです……」


 アデリーナ様の目は完全に疑っている感じです。



「そうですか、メリナは聖竜様にお会いされたのですね! あなたの事だから、聖竜様であっても魔法をぶつけているんじゃないでしょうかね!」


 当たりです、アデリーナ様! 流石、王家の方です! どうして分かったのですか。


「……聖竜様はお強くて、胴体が燃え尽きて無くなったのに復活されました」


「だ、か、ら! 世迷い言を言うな、つーってんの!!!」


 言葉使い、言葉使いが乱れておられますよ、アデリーナ様。


「分かっていないでしょ、メリナ!! あなたが突然森に消えて、ニラさんがどれだけ心配なされたのか、お分かりですかっ!!」


 それは痛恨です。本当にすみません。



 アデリーナ様は一枚の紙をテーブルに載せる。


「反省文です。これを書きなさい。提出期限は明日までね。書けなかったら、アシュリンさんから鉄拳制裁です」


 それ、私は迎え撃ってもよいですか。


「今、あなた、暴力で返そうと思ったでしょ!! そういう所がダメなのです!」


 ひー、全部お見通しですね。



「大体ですよ! これは私情も入りますが、護衛のあなたが、私に炎嵐(ファイヤストーム)を掛けるとか、どういう了見ですか!? アシュリンが腕を引っ張らなければ、焼け死んでいました!」


 そんな事してないもん……。……炎の雲だもん。


「メリナさん、反省の色がないなら、私にも考えがあります。『狂犬メリナ』、私はこの呼び名で、あなたの事を神殿中に言い触らしますよ」



 私は床に頭を擦り付けて、深く謝罪をしました。



「宜しい。最初から、その態度を見せなさい」


 はい!

 だから、勘弁して下さい。


「では、次の話です。本題です」


 えっ、まだあるのですか?



「あなた、どうやって帰って来ましたの?」


 それ、さっき訊いてた! また繰り返すの!?


 私はもう一度、聖竜様の話をする。それをアデリーナ様は鼻で笑った。



「転移魔法。そうでしょ?」


「聖竜様の、という形容が必要ですが……」


「まぁ、そういう事にしておきます。そんなレアな魔法を使えるなんて知られたら、神殿の巫女どころじゃないですからね。分かりますよ」


 分かってないですよ、アデリーナ様ぁ。


「軍でも商人でも引手数多ですものね」


 ペロリとアデリーナ様が舌舐りをする。そして、低く小さい声で言う。


「今すぐとは言わないから、いずれ私には教えなさいな。じゃないと……殺す」


「……はい」


 『いいえ』で答えたら、この場で死刑を宣告されそうだわ。

 ……これ、転移魔法を覚えないといけない流れよね。でも、そんな事、出来るのかしら。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公が何ができるのかとその理由が知りたくて続きが読みたくなります。 巫女なのに聖竜様を敬う心がないどころか割と貶すような発言が多いことに違和感があったので、アシュリンさんやアデリーナさ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ