表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/421

聖竜様との邂逅

 とても良い気持ちで、思わず私は一人で森を散歩しました。

 途中、アデリーナ様とかアシュリンさんが何かを言って来たのですが、煩いので炎の雲を壁の代わりに出して撒きました。


 でも、水が飲みたくなって、あの聖竜様の泉の水が欲しくなったのです。

 聖竜様の水。とても高貴でふ。いえ、です。


 あぁ、でも、水よりも聖竜様に会いたいなぁ。しばらく会ってないなぁ。お願い、早く会わせて。



 って、思っていたら、ここは何処なんでしょう!?



 すっごく暗いです。あと、獣臭いです。ん、でも、どこかで臭ったことあるな。昔の靴の臭いに近いかな? 本当に碌でもない臭気です。安全を確保したら、すぐに脱臭魔法をお掛けしましょう。


 木が見えないので、さっきまで歩いていた森ではありません。

 何せ床があります。暗くて見えづらいですが、石詰めの立派なものです。綺麗に切り揃えてあるので、相当にお金が掛かったものでしょう。


 変な遺跡に踏み入れてしまったのでしょうか。さっきまでは森だったはず。

 お酒って怖いです。

 あれ? 頭は痛くない。量が少なかったのかな。さっきまでの高揚感も消えている。



 私が一歩踏み出すと、灯りが付いた。

 変な棒の先にランプがあるのね。魔法式のランプだ。


 でも、周辺しか明るくならなくて、意味がありません。


 進むと、また別の棒に灯りが付く。で、さっきまで灯っていたランプが消える。なるほど、私の周辺だけが明るくなるのね。


 これ、まずいわ。

 魔物がいるなら、完全に狙い打ちにされるじゃない。隠れられないわ。

 


 光を出してみましょう。とりあえず、視界を確保しないと。


『私は願う。天井に光が灯って。熱くないヤツ。光だけ。ここをしばらく照らしてね』


 魔法は発動して、煌々と全体を照らす。

 天井高い!

 で、前方も横も壁だ。

 大きな扉もあるけど、見たことがないくらい豪華なヤツだ。


 これ、部屋なのかしら。

 魔物は一切いない。というか、生き物の気配がしない。


 念のために後ろも確認する。




 !!!!!



 いらっしゃった!!!

 白い竜、聖竜様、スードワット様が目の前に鎮座なされているっ!!

 どうしてっ!?



 私は足の力が抜けて、座り込む。



『お前は何者だ!?』


 聖竜様が喋られた。昔と同じ、お腹に響く重低音で。


「わ、私です。メリナです。お、覚えておられませんか、スードワット様っ!!」


 ちょっと涙も出ちゃうよ。感動とは、この事だったのね。

 スードワット様は即答でした。



『知らぬ』


 久々の再会だというのに、冷たいのですね。グサッと来ました。


 しばし沈黙。

 心臓の鼓動も落ち着いて私は立ち上がる。


 先にスードワット様からお言葉を貰う。


『人間の娘よ。転移魔法が暴走でもしたのであろう。地上に戻してやろうぞ』


「お待ち下さい。私ですって、……白い竜さん」


 昔はこう呼んでいた。思い出してくれるかな。


『……懐かしい呼び名だ』


 スードワット様は静かに、そして、どこか遠くを見るように仰る。


「思い出しませんか? 手を使わずに石を割れって言われて、頭で割ろうとした私を?」


 当然割れる訳がなく流血騒ぎでした。

 スードワット様が回復魔法を慌てて掛けてくれたのです。


『おぉ、おお!! あのメリナか!?』


 やった。思い出してくれたのかな。


『そうか。あの幼子がな。人間の成長は早い』


 そう、そうです!

 覚えていらっしゃいましたか!?

 とても嬉しいです!!


「改めまして、聖竜様。何故か分かりませんが、またお会いでき大変嬉しいです」


 私もやっと聖竜様をゆっくりと眺める。

 大きい。小山ほどあると思う。

 そして、純白の体。とてもお綺麗です。

 背中に生えた羽根もご立派で、こんな部屋におられるのが勿体無いです。自由に空を飛ぶべきだと、僭越ながら思うのです。


『どうだ? 息災か、メリナ』


 慈愛に満ちた声が私の体を揺さぶる。


「はい。今は聖竜様の神殿で巫女見習いをしております」


『……我はメリナを巫女に呼んだのか?』


 えっ。


「……呼ばれてはないですよね?」


 薄々感じておりました。私はフ何とかさんにスカウトされたのであって、聖竜様のお声は無かったのです。


『ガハハハ、まぁ、良い! お主であれば、我の声も聞こえようぞ』


 宜しいのですか。ここ数年、全くお会いできなかったし、声なんて一切聞いていませんが。



「聖竜様、巫女とは何なのでしょうか?」


 私が魔物駆除殲滅部であることは、まずは伏せます。すみません、聖竜様。


『我の手足、そして、口となる人間だ。我はここから離れられない』


「喜んで手足となります。何をすれば宜しいのですか?」


『……この地を守って欲しい。危機が迫れば、我は巫女に伝える。巫女はそれを他の人間に伝える。それが務めだ』


 危機って何でしょう。そんな事あるのかな。


「分かりました。聖竜様のお声を皆に伝えます。ですが、具体的にはどういった危機が有るのでしょうか? 他国との戦争でしょうか?」


『メリナよ。これは非情に聞こえるやも知れない』


 一旦、聖竜様はお言葉を区切る。私はそのまま次のお言葉を待つ。


『人間同士の諍いに我は関与しない。人間に仇なす者が出現した際に、告げようぞ』


 私は無言で頷く。


『そして、もう一つ』


 聖竜様は厳かに私の目を見ながら続ける。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ