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森に入る

 さぁ出発となる前に、森に持って入るために荷物を何とかしないといけない。馬に荷物を積んでいくのだけど、結構な重労働ね。

 樽については馬に付ける道具まで有ったから簡単だったけど、箱を縛るのがなかなか難しい。馬もじっとしている訳じゃないから縛る前に箱が動いて不安定になっちゃう。


 私が悪戦苦闘していたら、丁度、三人組の冒険者が通り掛かった。アデリーナ様が助けを求めると、きれいに整えて馬に箱を括り付けるのを手伝ってくれた。


 何でも村の出身で、手慣れているらしい。私も村出身だけど、この手の仕事はしたことがなかったよ。主にお父さんの担当だったはずです。


 序でに置いていく馬車の警備もして貰うことにした。もちろん、アデリーナ様が依頼金を渡して、その他にも今日中に帰って来れないかもしれないので、食料もお渡しした。

 アデリーナ様の格好が巫女服なので、話は簡単に通せたわ。やっぱり素晴らしいわね、巫女さんへの信頼感は。


 冒険者の方々も十分過ぎる報酬額にホクホクしていたわ。彼らの依頼に関しては、また後日に行なうって。まだ冒険者に成りたてかな。グレッグと同じように若いわ。


 ちょっと気になるのは、一人だけいる女の子。格好は私よりも見窄らしい。いえ、村人なら普通のレベルなんだけど、正直臭いがきついわ。お住まいにお体を拭く所とか洗濯物を干す所が無いのかしら。


 ここは私がお礼をできるところね。人間に掛けて大丈夫かは、ほんのちょっぴり心配だけどきっと成功するわよ。靴と同じように脱臭してみましょう。

 ん? 大丈夫かな。『臭いの元が人間です』って精霊さんが考えたら、消え去っちゃうかもしれない。んー、そんな凄い魔法とは思ってないけど、万が一を考えて『服の』って付ければいいかな。体の臭いは、自分で何とかするわね。



「ちょっといいですか?」


 私は女の子に声を掛ける。髪の毛とかはちゃんと整えているから、やっぱり臭いは服の問題かな。


「は、はい」


 突然ご指名されて少しばかり不安な表情が隠せてないけど、ご安心を。にっこり笑っておこう。


『私は願う。精霊さん、精霊さん。目の前の女の子の服と靴の臭いの源を消し去って下さいな。臭いだけね。女の子は消しちゃダメよ』


 と願ってみた。

 女の子が光に包まれる。


 おぉ、臭いが取れたわ! 成功ね!

 服も多少は汚れが抜けているわ。何かの汁とかが付いていたのかしら。


 女の子も大変喜ばれています。


 何でも服が一着しかなくて気になっていたけど、食と住でお金は無くなってしまっていたとのこと。

 私の両手を握って跳び跳ねる程に、小躍りして頂きました。私も満足です。もう洗濯も苦ではありません。


「メリナさん、無詠唱なんですね」


「はい。皆様とは違って、詠唱は出来ません」


 アデリーナ様に返答する。


「ふふ、先程の水魔法と言い、私は良い人材を発掘できたようですね」


 別にアデリーナ様に神殿へ推薦してもらった訳じゃないんですけどね。しかし、私は流れに逆らわない。


「えぇ、本当にありがとうございました」


 私の返しに少し戸惑う、アデリーナ様。きっと自分の推薦でないことを思い出されたのね。他の誰かと勘違いされていたのかしら。


「メリナさんからそんな風に仰って頂けるとは思っていませんでした。無理強いしてしまったかもと心配していたのですが、安心しました。これからも宜しくと言う事ですよね。殊勝な事です」


 よく分からないわね。お偉い人なりの何かの言い回しでしょうね。

 もういいわ。気にしないでおきましょう。早くオロ部長との待ち合わせ場所に向かった方がいいわね。


 私たちは馬を連れて森へ入る。

 賢い馬で縄を持たなくとも私たちの後方から付いてくる。調教がしっかりされているのね。


 私が先頭でその次がアデリーナ様。その後を更に馬が二頭の順で森を進む。

 森と言っても、入口付近は冒険者が毎日幾人も通ることで小道が出来上がっているので、歩きやすい。


 たまに他の人と擦れ違わないといけない時があるけど、アデリーナ様の黒い巫女服を見たら、必ず道を譲ってくれた。


「この先は魔物が出るかもしれません。良かったんですか、アデリーナ様」


「メリナさんが守って頂けるのでしょう?」


 えぇ、そのつもりですが、私の手に余る事態になればどうすれば良いのかしら。昨日のグレッグの命みたいに捨て置く判断なんて、王家の方には出来ないわよ。


「はい、お約束します。しかし、守りきれない状況が発生しましたら、御自分の身は出来るだけ自分でお守り下さいね。大丈夫です。血が出ても止血魔法をお掛けします」


「……私が傷を負う前提って、護衛としてはびっくりするくらい雑なお願いですね」


 護衛で御座いますか。王家の方は我が儘ですね。当然の様にそんな事を仰るなんて。


 でも、アデリーナ様は森に慣れていらっしゃる。道から遠い薄暗い所とか、素人なら何かいないか不安げになるのに、全く歩くスピードが遅くならない。これなら、アシュリンさんの捜索にも足手まといにはならないわね。


 私たちはオロ部長の指示した落ち合い場所に着いた。とても太い幹をした木の下で、部長が来るのを待つ。


 あと、同じところにグレッグがいた。

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