表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/421

殲滅対象

 振り返ったら、大柄な男が立っていた。アシュリンさん並みに背が高い。服と呼ぶべきなのか、皮鎧と呼ぶべきなのか、肩の所に着いたフサフサの毛皮は何の為だろう。余計に獣っぽさというか粗野な感じが強調されているわね。



 グレッグが対応する。


「どうした? 騎士見習いのグレッグ・スプーク・バンディールと知って声を掛けたのか?」


 自己紹介? 何故に今。


「いや、知らんな。お前ら二人か?」


「そ、それがどうし――」


「えぇ、二人です。今からシャールに戻るところです」


 グレッグの声が震え気味で、よく聞こえないかもしれないと思って、私が代わりに答える。早く帰って夕食を食べたいのよ、私。


「お前、黙ってろよ!」


 なっ、グレッグにお叱りを受けた。

 えぇ、分かりました。もう黙っていますよ。



「何を採ってきたんだ? お前ら、冒険者だろ」


 グレッグは騎士見習いって言ったばかりなのに、冒険者って断言された。私も彼も格好がそれっぽいというか、村人そのものみたいな服装だもんね。

 ぐいっと一歩前に出てきて、それにグレッグは怯んだ様子。


「か、関係ないだろ、お、お前らには」



 二人が話している間に、毛皮の人の仲間たちがぞろぞろと集まって来る。みんな、背が高いし、筋肉もそれなりにあるなぁ。


「いや、それが関係あるんだ。悪いな」


 私には全く関係ないよね。角兎の角も私は要らないし。


 私たちを引き留めた人じゃない人がこちらに歩きながら言う。


「こんな時間まで森で遊んでいるなんて、親の躾がなってないな。俺達が教えてやるぜ」


 ん?

 あぁ、うちの親が何ですって!?

 殴って、その失言を後悔させてやりたいけど、グレッグの手前、大人しくしてあげるわよ。良かったわね!



「そう言うことだ。坊主、お前は服を脱いで、荷物も置いてさっさっと失せろ」


 グレッグが歯を強く噛む音が聞こえた。


「嬢ちゃんは、裸にならなくていいぞ」


 そら、そうよ。私は関係ないわよ。



「俺達が脱がせてやるからな、ギャハハハ」


 下卑た笑いね。口臭がこっちまで漂って来そうよ。黙れよ。いえ、お黙り下さいませませ? ませが多いな。


「上玉じゃねーか。今晩は寝れないなっ」


「あぁ、俺の上に乗せてやるぜ。馬みたいに尻尾を付けてやってもいいぜ」


「ギャッハハハ、お前、前そんな事言って、女のケツに木の棒を刺してたよな!」


「痛がってるのを黙らせるのがメンドーだったな! 挿したお前が殴り殺すとか、どうなんだよ。ギャハハハ」


「だから、俺は穂付きの草にしておけって言ったんだぜ。勿体ない事をしやがってさ」


「こいつは殺すなよ。3日は楽しめるからな。本人が死にたいって言うかもしれんが」


 とても最悪な気分です。

 真実でなくて脅迫のためかもしれないけど、お前らが死ねとか思っちゃいます。



「見ろよ、こいつの靴。上等な奴を履いてるぜ。こりゃ、俺が貰うからな」


 私のブーツの事か。お前に履けるサイズとは思えないんだけど。

 うん、許さない。誰か知らないけど哀れな女の子の分と、私のブーツを狙った罪の分、お前は他の奴よりも余分に特に痛め付けるから。




「……メリナっ! 逃げろ!」


 えっ、私が逃げるの?

 ちょっと意外なグレッグの命令に、私は彼の顔を確認する。


「いいから逃げろ!」


「いやいや、もう無理だろ」


 男の一人が私の腕を掴まえようとする。

 それをさらりと避ける私。

 更にグレッグが短剣を抜いて、私の前に立つ。肩にしていた皮袋は投げ捨てた。



「おい、坊主っ! 死にたいのかっ!!」


 最初に声を掛けて来た男が威圧する。

 さぁ、グレッグ、やりなさい。今は隙だらけよ。その短剣で刺してやりなさい。



 なのに、彼は動かない。むしろ、足が震えているように見える。それでも、私を守るためか、もう一歩進む。

 騎士としては震えたらダメよ。対人戦なんて慣れたものでしょうに。

 でも、それでも、その前に出た心意気は大事ね。私も女の子扱いされていて、悪い気にはならないわ。

 それに、前に出たことで囲まれることを避けられたわ。二人だけでも、前衛と後衛になれた。これは戦術的に大きいわ。私からの奇襲が嵌まりやすい。



「仕方ねーな。おい、やるぞ」


 男たちが一斉に抜刀した。


「最初から、そうしておけよ。他の冒険者が来たらヤバかったぞ。女は余り傷付けるなよ」


 剣まで汚い。大事な商売道具なんだから洗うくらいしなさいな。



「メリナ、逃げてくれ。頼むっ」


 グレッグは勘違いしてるわね。私が逃げるんじゃなくて、余計な殺生を避けたいって言うなら、こいつらを逃がすべきよ。


「男は殺せ」


 脅しじゃなくて本気でしょうね。



「先に動きますよ」


 私は短く、小さくグレッグに言う。

 反応が無かったので、聞こえなかったのかもしれない。

 

 いいわ、痛め付けましょう。

 聖竜スードワット様もお許し下さいますよ、何せ魔物みたいなものですから。

 女の子のお尻に棒を突き刺して殺すなんて人間じゃないわよ。私の部署的には駆除殲滅対象よ、きっと。だから、遠慮なく行きますよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ