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五人の男

 早速、私は今履いているブーツにも脱臭魔法を掛ける。これで、今日の臭いは取れたよね。

 あとは、アシュリンさんを待つだけよ。




 帰ってこない。アシュリンさん、なかなか帰ってこないよ。

 もうそろそろシャールの街に戻り始めないと、途中で日が暮れてしまうよ。

 というか、もう遅いかな。街に着くまでに夕暮れを迎えそう。

 森に入っていた冒険者の人々が本日の収穫物を持って続々と目の前を去って行ってから、しばらく経つ。結構の数がいるのね。



 シェラに惚れているグレッグさんは、まだ傍に居るんだけど。ちょっと邪魔ね。


 アシュリンさんは『日が暮れそうなら帰れ』って言っていたなあ。んー、従うべきなんでしょうね。今から森に入ってもどこまで進んだのかも分からない訳なんだから。



 私が道の方へ体を向けると、グレッグも付いてきた。


「帰るのか? 待ち人はいいのか?」


「はい。そういう指示でしたし、十分にお強い方ですし」


「なら、俺がお前を護衛してやろう。何、角兎の礼だ。気にするな。今からなら、暗くなるぞ」


 いや、別に一人で帰れるんだけど。

 まっいっか。



「お前、どこの出身だ?」


 唐突にグレッグに訊かれた。道中、暇だもんね。


「ノノン村です。シャールから見ると東南の方向ですね」


 話し掛けられて無視するほど、私は非道じゃない。適当に相手しながらシャールへの道を辿る。


「そっか。東南というと土が豊かな地域か。小麦の収穫が他よりも多いらしいな」


 そうなの? 私は村しか知らないから何とも言えない。


「ノノンは森に近い開拓村の一つなので、余り豊かでは無かったかもしれませんよ」


「まぁな、お前がしきりに嗅いでいた靴はボロボロだったしな」


 なっ! 失礼の上に失礼を重ねて来たわね。

 シェラとの仲を取り持とうかと思ったけど、ヤメだわ。


「騎士とは思えないセリフですね。女性へ向けた言葉とは思えません」


「俺とお前の仲じゃないか。許せよ」


 馴れ馴れしいわね。気が多いのかしら。尚更、シェラには近付けさせないわよ。



 私が黙っていると、グレッグは話題を変える。私が気分を害したと少しくらいは感付いたのかな。


「ところでさ、お前、魔法を使えるんだろ? お前の精霊は何だよ?」


 何でしょうね。調べ方さえ分からないわ。


「秘密です」


 誤魔化そう。知らないっていうのが気恥ずかしいので。


「そうか。まぁ、今日出会ったばかりの奴に手の内を見せたくないってことだな。分かったよ」


 意味が分からないけど、独りで納得してもらって良かったわ。



 道を進んで行くと木陰で休んでいる冒険者の一団が見えた。装備は余り整っている感じでなくて、どちらかというと汚れている。それに、皆、肩とか胴とかに何かの獣の毛皮を使っていて、男らし過ぎる一団ね。

 その部分的だけど、フサフサしているのに可愛くないって、もう生きている価値を疑うわ。って思ってしまうくらい、見ただけで外見も雰囲気も悪そうと分かる連中だ。


 休憩してるのね。何か賭博的な札遊びをしたり、寝っ転がったり、思い思いにしてるわね。



「あんま、あっち見んなよ」


 まだ明るいこんな時間にぐうたらしている連中を私が珍しくて見ていると、グレッグが小さい声で注意してきた。

 でもね、野宿の準備もせずに大の大人が暇を弄ばしていたら、お顔を見たくなるじゃない。


「ジロジロ見るなって」


「あなただって、私の臭い消しの魔法の練習を見ていたじゃないですか。その上に声まで掛けてきたり」


 私の反論に対してグレッグは更に小声で言ってくる。


「お前な、森に入る前で女の子が一人座っていたら気になるだろ。それに、使い古した靴が、その前にポツンと置いてあるわけだしな。哀れな事情があるのかと思うだろ」


「あの方々も哀れな事情があるやもしれません」


 ほら、小さな家で男五人には狭くてムサすぎるとか、博打をしないと体が痒くなる呪いに掛かっているとか。ボリボリ背中を掻いたりしてるし。

 おっ、言ってから気付いた。今のセリフ、何か巫女さんっぽい。


「ねーよ。あいつらはどう見ても冒険者だよ。それも質の悪いな」



 質が悪いには同意ね。

 近付くにつれ、酒だとか汗だとかの臭いが鼻に付く。覚えたての脱臭魔法を掛けて上げようかしら。


「そもそもな、こんな時間に街から遠い場所で休憩しているのなんか不自然だろ。普通の冒険者なら依頼物をギルドに届けて報酬を受ける時間だ。怪しすぎる」


 そんな事を言っていたグレッグも傍を通り抜ける間際では黙ったわね。

 堂々としていればいいのよ。

 私の村にも、たまに冒険者が来ていたけど、皆、いかつい格好でも良い人ばかりだったよ。先入観は為にならないわよ。

 この人達だって、ちょっとファッションセンスがずれた可哀想な集団に違いないわ。



「おい、ちょっと待てよ」


 通り過ぎた直後に後ろから野太い声がした。グレッグが驚いて、ちょっと体が跳ねたのが面白い。

『あまつに』って方言なんでしょうか。

私の周りは普通に使っていたのですが(^^;

調べたら『あまつさえ』からの誤用かなぁ


ご意見、本当にありがとうございました。

当該箇所は『その上に』に修正させて頂きました。

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