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空中戦

2019/8/8 少し書き換えました。

流石に腹の皮を剥いだら不味かったよね(^^;


「メリナ、消えま――いえ、上だっ!」


 実況の人の叫び声が響く中、私は落ちながら頭を下へともっていく。

 視界を広げるためです。頭を上にしていると、どうしても背中側が見えなかったので。


 闘技場の最上部の観客席くらいの高さに転移したのに、3まで数える間もなく地上へ落ちそうです。

 そして、コリーは相変わらずの豪腕を構えて、私を待っています。


 うーん、相打ちになっちゃうかも。両者とも動けなくなったら引分けという名の敗退だと思うのです。


 そう判断した私は再転移。

 さっきよりも高くに出現します。一度見せたので、観客の方々も気付き易いでしょう。


 でも、状況は変わりません。私は何度か降下と転移を繰り返します。

 バサバサと私の長い髪の毛が暴れます。あと、顔に当たる風圧が凄くて、ルッカさんの飛行魔法を思い出しました。あの時の往復2回と今回で3回目だから、慣れているので平気です! とは言え、風避けは必要で氷の壁を顔の前に転移の度に出します。


 結果、ガツンと氷の塊が地上を襲う副次効果も得ております。

 簡単に避ける事が出来るので、大した物では御座いませんが、コリーを挑発するには役に立った様です。



「ここで、コリーも高く跳んだぁ!!」


 落ちてくる私を捕捉すべく、彼女は人間では考えられない程の足のバネを見せました。太い筋肉に血管を浮かばせながら、驚異的な跳躍力で人間五人分は跳ねたのです。


 私は冷静に再転移。十分に距離を稼いだと思いました。

 しかし、コリーは止まらない。また体が紅く輝き、上昇速度が加速したのです。


 クソっ!!


 予想を外され、コリーの体当たりを受けそうになった私はもう一度転移するしか有りません。



「メリナ、これは苦しいか。コリーの動きに翻弄されているっ!」


「うーん、いつまでメリナの魔力が続くかですね。試合開始から魔法を出しまくっていますから、そろそろ限界かもしれませんよ」



 黙れよ、クソが!

 私は物凄い速度で降下しています。風避けの氷も、逆にそれで頭を強く打ってしまいそうなので出しておりません。

 転移前後で私の落下速度は変わりません。なので、落ちる速さが段々と加速しておりまして、私に制御できるスピードではなくなってきました。


 少しずつ私にも焦りが出始めているのですが、そんなタイミングで地上に降りたコリーが全く間を置かずに再度跳ねたのが見えました。



 くー、どうする?

 転移を繰り返しても決定打に欠けると言うか、攻撃に繋がりません。

 何よりこんな速さで落ちたら、間違いなく死にますよ!


 あっ!

 手は有りましたっ!



 コリーの位置を確認。

 私は転移!

 空中なので、コリーが気付いたとしても手は届かないでしょう。

 私が現れたのはコリーの下の空間。頭を上に、つまり、落下の時とは逆さまです。

 その結果、先程までと違い、私は物凄い速さで上昇していく事になります!


 少しだけ離れていたコリーに直ぐに追い付き、私は腹に向けて頭突き!

 コリーの腕が反応して私を妨げようとしましたが、勢いに負けて弾き飛ばされました。


 彼女の体にめり込む様に私は突き刺さり、このままだと皮を破って背骨も折って突き抜けてしまうと危惧しましたが、それは彼女も本能的に察したのかもしれません。

 急速に腹に魔力が集まり、私による衝撃を保護しました。だから、私が血塗れになることはありませんでした。

 その後、お腹に集まった魔力も霧散しました。ダラーンとコリーの手足が私の両サイドに垂れていますが、こちらも元のサイズに戻っていました。



 闘技場が豆粒の様に小さくなった所で、ようやく私達は落下するようになりました。

 そして、私は転移で地上に戻る。

 頭に載せたままのコリーさんを持ち上げて、優しく床の石の上に寝かせます。


 勝ちましたね。余裕でしたよ、うん。



「な、何が起きたのでしょうか! 立っているのはメリナ! シャールからやって来た黒髪の悪魔です!」


 だから、悪魔って言うな。


「信じられないですね。転移魔法の回数を数えていましたが、12回でしたよ。なのに、あの余裕の顔。クリスラ様の紹介でなければ、魔族と疑われてもおかしくないですね」


 これこれ、この転移はあなた方が信じている聖女様の腕輪のお陰なのですよ。そんな言い様はしてはなりませんね。


 ここで、カンカンカンと、私の勝利を告げる鐘が鳴りました。



 うむ。あと一勝で、あの宮殿は私のものになります。喜ばしい事ですね。



 去ろうとした私は、未だコリーさんが起きないことに気付きました。

 死んではない。魔力感知で直ぐに判断できましたが、このまま転がっているのは良くないですね。連れていってあげましょう。


 私はコリーさんを見る。

 うん? 私の頭突きのせいでコリーさんの服に大きな穴が空いていました。お臍を中心にお腹の部分が露となっております。


 !?

 毛がない!

 それどころか、私の頭突きのためにズタズタですよ!


 な、何ですか、これ……。ヤバイです。コリーさんを傷物にしてしまいました……。アントンの野郎が何か言うかもしれませんが、何よりコリーさんに悪いです。


 そ、そうです、回復魔法です! 今ならコリーさんに気付かれずに直せます。早くやりましょう、メリナ!



 良かった。ちゃんと治りました!

 綺麗なお肌となりましたよ。


「メリナ、敗者の傷を治しましたね」


「えぇ、大変に好ましい光景ですね。素晴らしいです」


「そうですねぇ。観客も拍手で応えています!」



 ここで、私に悪い好奇心が湧いたのです。コリーさんは豪の者。それは、一体どれ程の物なのか。

 彼女は昏倒されています。多少の事では起きないと想像されます。チャンスです。見たいのです。


 私は膝を床に付けて、コリーさんのズボンのウエストをくいっと持ち上げる。そして、覗く! もちろん、中をですっ!! 知的好奇心です!



 !!


 蛾じゃない!!


 (たばか)れた!!

 出会ってからずっと謀れていたっ!!


 そもそも色が黒くないっ! 貴様は赤毛だからか!! 色が黒くないから、モジャモジャ感が少ないのかっ!!!


 

 係りの人が両腕を持って私を引き剥がすまで、ずっと見詰めていました。


 見事です、コリー。勝負に勝ったと思わせた上で、私にここまでの敗北感を与えるとは…………。

最終的な落下速度は200km/hrを越えた感じで。

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