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デュランに到着

 デュランの地を踏んで、すぐにコリーさんの案内で大きなお城へと連れて行かれました。シャールから持ってきた馬車を船から下ろす作業は見えたのですが、別に用意されていた馬車を使いました。


 荷物をどうするのかと聞いたら、用意されていた馬車は儀典用で一時的に使用するものだとコリーさんに教わりました。

 儀典用? 何かするんですかね。


 乗り込んだ馬車は豪華なのですが、少し華奢な感じです。シャールの街中で見た物や謁見式に向かう時に乗った物は角張った形でした。一方、デュランの馬車は曲線が多い気がします。


 あっ、謁見式で思い出しました。私達を墓場に連れ出して襲ってきた、あの黒いローブの人は何だったのでしょうか。私が存ぜぬ所で、翌日くらいにアデリーナ様がにたりと笑いながら抹殺してしまったのでしょうか。恐ろしいことです。



 馬車の中は向かい合わせのベンチ式となっていました。


「巫女殿、今から聖女様にお会いして頂きます。粗相無き様、お願い致します」


 コリーさんが車中で私にお願いしてきます。


「クリスラさんですね。大丈夫です。仲良しですよ」


「本日はその腕輪の授与式が行われる予定です」


 そうですか……。早く王都に向かいたい気分でもあるのですが。


「ふん、大方のところ、王、アデリーナ、クリスラの間で密約でもあったんだろう。俺なら間違っても、そこの怪力バカなぞにデュランの至宝を与えぬ」


 コッテン村でコリーさんに言われた時は軽く流していたのですが、やはり、この腕輪は大切な物の様です。あと、アントンは相変わらずウザいです。


「アントンよ、あなたもこの腕輪が欲しかったのでしょうか?」


「おい。船の時もそうだったが、呼び捨てとは身分を弁えない発言だな。もう聖女気取りか」


「それは申し訳ありませんでした、アントンよ」


「おい。お前――まあ、よい。内乱を止めた事は評価している。クリスラとの面談が終わったら、さっさっと王都へ向かうことで許してやる」


 くくく、負け惜しみですね。

 料理対決の時と言い、哀れなり、アントン。



「巫女殿、聖女となられた暁には、シャールとデュラン、どちらにお住いになられるのですか?」


 ん? 何を仰るのか、コリーさん。

 この腕輪をしている者が聖女となる様な約束事があるのでしょうか。

 しかし、彼女の問いには考えるまでもなく、答えは決まっているのです。運命と言っても良いでしょう。


「どちらでも無いです。聖竜様の御座す所が私の最終的な居場所となります」


「だ、そうだ。コリーよ、そこの巫女はデュランに来る気はないようだな。これは幸運だ。デュランの未来に影を差す暗雲が自ら去ってくれた」


 アントンの言葉にコリーさんは反応します。


「アントン様。その巫女殿は何にも縛られない自由を持っております。暗雲かどうか、私は判断しませんが、空高くに見える雲の様だと思います。それは戦闘力に物を言わしたものでなく、もっと何か…………曖昧だとは思いますが、私では測りきれない根本的な所で私どもを導いてくれる可能性を感じているのです」


 コリーさんは深く考え過ぎですね。考えすぎていて怖いというか気持ち悪ささえも有りますよ。

 もっと気を楽にした方が良いです。人生適当でも何とかなります。アクションすれば勝手に切り開かれるものなのです。


「こいつが何も考えていないから、そう見えるんだ。森の猪みたいなものだと思え」


 ……アントン! 先の思いを口に出さなくて良かったです。



「マイア様の件もあります。私は巫女殿を好んでおります」


「ふぅ。コリー、マイアの姿を見たと言うが、それが伝説のマイア自身である証拠はないんだぞ」


「だからこそ、クリスラ様にお会いするのです。アントン様、クリスラ様の言葉にはお従い下さいませ」


「あぁ、良いだろう。だが、マイアの件が偽りであった場合、つまり、そこの貧しい娘の嘘であった場合、お前はどうするのだ?」


「……仮定の話は好きでありません。しかし、その場合は、私の命と引き換えに巫女殿を葬ると思います」


 急に物騒な話になりましたよ……。コリーさんと戦うなら、そのスピードを殺すべきか、カウンターを狙っている所を構わずぶちのめすか、悩んでしまいますね。


「うむ。ならば、私もコリーと共に逝こう」


「アントン様……」


 コリーさん、顔が真っ赤になっていますが、今の会話にそんな想いを感じる所が有りましたか。私は甚だ疑問ですよ。

 あなたの変わった性癖を心配致します。やはりコリーさんは頭が弱いのだと痛感しました。



「おい、聞いていたか、ぐうたら巫女。お前を信じてやるんだから、お前も覚悟を決めろ。嘘だったら自殺しろ。自慢の聖竜とやらに喰われて死ね」


 何たる傲慢。

 しかし、ふぅむ、死に方としては最高ですね。私の全身全霊が聖竜様と一体になる。うん、アントンの提案でなければ採用で御座いました。



 馬車が止まり、私達は大きな大きな庭に立っていました。多くの花々が咲き乱れる庭園です。遠くに、これまた優雅な曲線を描いた屋根を持つ塔が三つ見えました。シャールの伯爵のお城は尖った感じなのですが、デュランは曲がったものが好きなんですね。アントンの性格が捻れている原因の一つじゃないでしょうか。

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