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打たれ強いルッカさん

 思っきり背中を反り、天に向かって叫んでいたルッカさんが顔をこちらに向けました。

 服の所々が赤黒く染まっています。

 彼女独特の長くて青い髪の毛も乱れた感じです。私が王様の天幕に入った後も、落ち着きなく次々と兵隊さんを襲っていたんだろうなと予測が付きます。



「ハレンチね。エロティックよ。許せません」


 マイアが小さく呟きます。

 見慣れた私はそう思わなくなっていたのですが、ルッカさんの服装は胸の所が凄く開いていますものね。深い谷間がくっきりです。

 対して、マイアはマリール並みに平原ですから、対抗心もひと際でしょう。



 マイアが杖を振るう。


 途端にルッカさんの体が横に吹き飛びました。

 視力では何が起きたか分かりませんでしたが、魔力の動きで理解しました。魔法で空気を圧縮して、それを耳の後ろにぶつけ、弾き飛ばしていました。……通常の人なら意識不明、いえ、死んでいたかもしれない程の衝撃でした。

 不死身のルッカさんでさえ、倒れたまま動きません。


 何人かの噛まれていない、まだ無事な兵隊さんが短い悲鳴を上げられました。


「うふふ、天罰です」


「胸の大きさがですか……?」


「はあ!? 何? メリナさん、あなたも喧嘩を売っているの?」


 ……平原の人は怖いです。いえ、草の生えている様な生易しい表現をするのもおかしいのです。

 彼女は石砂漠。だから、豊かな自然を見たら、嫉妬心から荒涼となってしまうのかもしれません。


 私は再びルッカさんに目を戻す。


 あぁ、動いています。やっぱりルッカさんは丈夫ですよ。良かったです。




 先ほどマイアはこのルッカさんの惨状を悪い魔力の影響と言っていました。では、私がその魔力を取り除いて差し上げましょう。


 そんな思いで、浄火の間の時のように魔力を自由自在に動かそうとしたのですが、全く思い通りになりません。


 なんで?


「魔素の濃度が薄いです。それでは伝わりません」


 マイアが私の疑問を見透かして答えました。でも、理解できませんでした。もっと詳しく教えて欲しいですが、戦闘中だから無理なのかな。

 よし、濃いところならば伝わる、即ち、触れれば良いという意味に取りますよ。



 私は起き上がったルッカさんに直進。彼女との間に王都の兵隊さんたちはいません。

 ルッカさんの位置を確認しつつ、糸で引き上げられたみたいな彼女の立ち方が気持ち悪いと感じました。牢屋で見たのと同じです。


 向こうも私を認識したらしく、奴は腕を軽く上下に一振りしました。

 光と共に、剣が手に現れる。


 ふふふ、私、驚きませんし、騙されません。


 ルッカさん、あなたはアシュリンさんとの喧嘩みたいな戦闘で、切り札を私にお見せしているのを忘れていますね。


 あなたの剣技はレベルが高いですが、あくまで囮。

 あの謎言語の詠唱魔法、それがあなたのフィニッシュ技だと理解しております。


 なので、まず潰すべきは口または喉。声が出ないようにしてやりますね。

 魔物駆除殲滅部の先輩として、あなたには鉄拳制裁の伝統を喰らわせてやりますから。



 疾風迅雷。そんな言葉が相応しいくらいの勢いで私はルッカさんに詰め寄りました。



 が、ルッカさんの間合い寸前で、私は方向を変える! 下が氷なので、靴のエッジで急ブレーキとし、そこから無理矢理に横へ飛んだのです。足への負担が半端ないですが、アシュリンさんに頂いた靴の性能の良さに感謝致しました。



 何故そんな動きをしたかと言うと、ルッカさんの背後にマイアの魔力を感じたから。それも極大の。


 私の予感は当たっていまして、ルッカさんが吹っ飛んで来ました!

 危なかったです。とんでもない勢いで、あんなのにぶつかっていたら、私も結構なダメージを受けていましたよ。


 それは後頭部を狙った極悪な一撃でして、すみません、頭を狙った証拠にルッカさんの眼球が衝撃で少し飛び出てました……。ほんの少しですが、えげつなく思いました。


 完全に殺しに入っているじゃないですか、マイア。


 ルッカさんの体は氷の上をつるーとしばらく滑ってから止まります。兵隊さんたちの悲鳴も響きます。



「やりすぎです、マイア!」


「死ぬ直前に回復魔法で大丈夫ですよ、メリナさん」


 マジですか? いえ、その通りで同感で、私もその様な事を言ったりします。しかし、他人が言うと複雑ですね。

 ルッカさん、愉快な人だし、私は気が退けますよ。


「うふふ、懐かしいですよ、この感覚。負けるかもしれないというスリルが、やはり人生には必要ですよね」


 マイアが笑みを浮かべています。とても爽やかな感じですが、ご家族の前では止めておいた方が良いと思うのです。


「母ちゃん、凄いよ」


 あっ、シャマル君は特に気にしないのですね。なら、良いです。


 マイアは腕を上げて、背後にいるシャマル君に応えます。


 勝ったつもりなのでしょう。しかし、ルッカさんは打たれ強いんです。こんなものでは終わらないと思います。

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