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健やかな成長が

 さて、お皿に盛ったアデリーナ草の舌を持って、猫さんの所に向かいましょう。

 ケイトさんが不在で、本当に毒じゃないのかという確証は得られなかったのですが、ニラさん達もお腹を壊す事はなかったので、それで良しとしました。


 私は王都の兵隊さんたちが待機している場所に急ぎます。そこに、猫さんを抱いたアデリーナ様がいると思いますので。



 はい、予想通りおられました。村を囲む柵の外です。鎧を脱いだむさ苦しい男の人達がいっぱいいます。あっ、たまに、女の子もいるのかな。

 アデリーナ様はカッヘルさんとお話中でした。


「何回もお伝えしますが、ラナイ村に戻られた方が宜しいのではないですか? 無条件での解放ですよ」


「……村を屠りに行ったのに、おもてなしを受けましたなど、報告できん。全員が死罪となる可能性だってあるのだ」


 どうやら言いやっているようです。


「私には関係のない事です。ならば、村を襲えば良かったので御座います」


「……あんな化け物に襲い掛かる? 戦闘にもならん。暴れる河に突撃するようなものだ」


「何を見たのですか?」


「…………人には及ばぬ物だ。夜営の見張りもしてもらったが、牛のような大きさの狼の群れを殴り飛ばして撃退していた」


 ただの野犬でしょう。大袈裟です。


「何より、あの雷魔法。戦場でも見たことのない未知の物だ。あんなものを見せられたら……降伏するしかあるまい……」


 ちょっとカッヘルさんは手が震えていました。お母さんの魔法を見たんですよね。あれ、本当にヤバいですものね。


「私があなたの立場なら、一週間ほど素直に待機して、私たちを状況に慣れさせ油断させたところで夜討ちをお掛け致します。そして、村を滅ぼしたという実績を王都に報告します。それをしないという保証は何か御座いますか?」


 さすが黒薔薇アデリーナ。相手の嫌がる所を突いて行きますね。


「……ない。ただ、武装は全て解除する」


 アデリーナ様は黙っておられます。まだ足りないという意思表示でしょう。



 怖いですねぇ、猫さん。さぁ、その冷酷な王家の人の元から跳び跳ねて、こちらに来なさいな。あなたの健やかな成長が阻害されてしまいますよ。



「人質を出そう。それで、どうか」


「不要です。むしろ、罠ではないかと思うくらいです」


 お偉い人は面倒くさいですね。

 どうせ返り討ちに出来るのですから、適当にうんうん言っておけば良いのですよ。



 ではでは、私はここに来た目的を果たせて頂きましょう。

 アデリーナ様に抱かれたままの猫さんに、調理した肉を持って行きました。

 メリナザセカンドという名前はお気に召されなかったようでしたから、猫さんとお呼びしましょう。決して、ふーみゃんとは口にしないです。認めません!



 目の前に肉を持って行きましたが、少し警戒している様子ですね……。でも、小さな前足でちょんちょんとしています。


 うふふふ。

 可愛いなぁ。

 大丈夫ですよ。それは毒では有りません。



 あっ! 食い付いた!!


 食べてる! もぐもぐ食べてるよ!!



「あっ! メリナさん、何をされているのですか!? あぁ! 変なものを食べさせて! 死刑です! あなた、死刑です!」


 どれだけ猫好きなんですか。


「エルバ部長も美味しいと言っていた代物ですよ。ご安心下さい」 


「だとしても、それ、塩が多いでしょ!? ふーみゃんは薄味じゃないとダメなんです!」


 細かいですね、アデリーナ様は。

 人間でもこってりした食べ物が好きじゃないですか。猫も一緒ですよ、きっと。

 病気になったら、私が魔法で治しますから。



「あぁ、ふーみゃん、いけませんよ。ばっちい、ばっちいしましょうね」


 あっ、猫さんから肉片を奪い取りやがりました。猫さんが、可愛い猫さんが哀愁漂う目をされました!



「カッヘル殿、もう宜しいですか? 私はふーみゃんの体調が悪くならないか観察する必要があります。去ってください。時間の無駄です」


「わ、分かった! 王都側の軍団の動きを伝える。その情報でどうだ!?」


「それを提示するまでの時間は差し上げましょう。それではごきげんよう」


 アデリーナ様は猫さんの背中を擦りながら去っていかれました。もちろん、私も付いて行きます。



「お腹痛くないかな、ふーみゃん」


 アデリーナ様はとても心配そうに猫さんに声を掛けますね。いつもの私に対するものとは大違いです。


「ルッカさんに噛みついてもらって、全部、僕にすればいいじゃないですか?」


 私は先程の兵隊さん達の処遇について提案致しました。


「……ああいうバカを屈伏させるのが楽しいのよ。ねぇ、ふーみゃん」


 そんな事で、ふーみゃん、いや、猫さんに同意を求めないで下さい!

 ふー、クソ、呼んでしまいそうだ。猫さんは純粋無垢なのですよ。



 折角のお肉でしたが、アデリーナ様は猫さんに上げようとしないので、私はアシュリンさんと二人で頂きました。

 アシュリンさんも認めるくらいの美味でした。でも、あの人は何でも美味しいと言って食べそうなので、余り参考にはなりそうにないですね。


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